浮気して婚約破棄したあなたが、私の新しい婚約者にとやかく言う権利があるとお思いですか?

木山楽斗

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1.婚約破棄を告げられて

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 婚約者であるラカール・ウォンデン伯爵令息が浮気しているということは、なんとなく察していたことだった。
 彼という人間は、はっきりと言ってわかりやすい人間である。浮気ということを隠せる程に狡猾ではない。といっても、婚約者がいる身で平然と他の女性と関係を持っているため、お世辞にも性格が良いとは言えないのだが。

「……申し訳ないが、君との婚約は破棄させてもらいたい」
「え?」

 そんなラカール様から婚約破棄を告げられたのは、突然のことだった。
 婚約者としていつものようにウォンデン伯爵家の屋敷を訪ねた私に対して、彼は淡々としながらも核心的な一言を告げてきたのである。

「ラカール様、今なんと仰ったのですか? 私の聞き間違いだと思うのですけれど、婚約破棄などと言いましたか?」
「ああ、言ったとも」

 私が慎重に問いかけてみても、ラカール様の答えというものは変わらなかった。
 彼は私と、婚約破棄しようとしている。それも、かなり意思は固いようだ。それが今の問答でわかった。
 その理由については、予想できないという訳でもない。ラカール様の浮気の疑惑、それを私は思い出していた。

「……私達の婚約は、ウォンデン伯爵家とアガート伯爵家との間で取り決められた婚約ですよ。それをあなたの意思一つで、無下にするというのですか?」
「仕方ないことなんだ」
「……もしかして、浮気相手と結ばれたいなんてふざけたことを考えているのではありませんよね?」
「む……」

 私の言葉に、ラカール様は目を丸くしていた。
 どうやら浮気が私に見抜かれていたことを、彼はまったく気付いていなかったらしい。
 私はそれとなく圧をかけてきたつもりだが、効果はなかったようだ。なんとなくわかっていたことではあるが、彼は結構鈍感な所がある。

「知っていたのか?」
「ええ、知っていましたとも」
「何故言わなかったんだ?」
「ラカール様が真っ当な貴族であるならば、関係を断ち切るものだと思っていたからです」
「それは……」

 ラカール様は、ばつが悪そうな表情をしていた。
 一応、自分がやったことが貴族として不適切であるということはわかっているようだ。
 それなのに、ずっと関係を持ち続けたというのは、非常に愚かなことである。考え直す機会など、いくらでもあっただろうに。

「まさか本気になるなんて、思ってもいませんでしたが……」
「別に本気になった訳では……」
「他に理由があって、婚約破棄しようというのですか?」
「……子供ができたんだ」
「はい?」

 質問に対する返答に、私は思わず変な声を出してしまった。
 彼は今、なんと言っただろうか。子供ができた。その言葉に、私の額からは汗が流れ始めていた。
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