溺愛されている妹がお父様の子ではないと密告したら立場が逆転しました。ただお父様の溺愛なんて私には必要ありません。

木山楽斗

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30.屋敷に戻って

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「随分と長い間、出かけていたものだな?」
「ええ、手紙にも書いた通り、少し旅行してきたのです。この所色々とあって、疲れましたからね。これはお土産です」
「おお、それはありがたい」

 私は、ヴェリオン伯爵家の屋敷に戻って来ていた。
 しばらく屋敷を離れていたことは、旅行であるとお父様には伝えてある。
 それを疑っているという感じはなさそうだ。お父様は鈍感なので、私の適当な嘘を信じ込んでいるのだろう。

「いや、愉快愉快、そうだ。ペルリナとロメリアのことだがな。どうやら丸く収まりそうだ」
「丸く収まる?」
「ここから出て行った後、偶然山賊に襲われたらしくてな。どうやら二人とも、死んだらしい。ははっ、愉快なものだ。我々を騙していたろくでなしどもには相応しい末路だといえるだろう」

 クレンド様の指示によって、警察からお父様には虚偽の連絡が行われている。
 そちらもお父様は、信じ切っているらしい。ここまで単純な人だとは、正直驚きである。

「お義母様……いいえ、もうペルリナさんですか。彼女はお父様に何かを言いかけていましたが、あれは一体何だったのですか?」
「うん? ああ、それについてはまったく持ってお前が気にする必要がないことだ。これ以上、あの親子のことでお前が心配する必要などはない」
「そうですか」
「ふん、無様に死に絶えたのだろうな。笑えてくる。まさか、山賊なんぞにやられるとはなぁ」

 試しに揺さぶりをかけてみたが、お父様は豪快に笑うだけだった。
 いくら自分を騙していた親子とはいえ、その死を嘲笑うお父様は、最低の人間であるといえるだろう。
 少なくとも、私はその笑みを軽蔑する。やはりこの人とは、一生分かり合うことができないだろう。元々分かり合う気なんてなかったが、改めてそう思った。

「ああ、あの二人が私達のことを騙していたことは、公表するなよ。せっかく死んだんだ。その死を利用させてもらうことにしよう。悲惨な死を遂げた伯爵夫人と令嬢として、世間の同情を誘えるだろうしな。そう意味では、あの二人は初めて役に立ったといえる」
「なるほど……ああ、そうだ。お父様、私とクレンド様の婚約のことですが」
「ああ、それについてはエヴォート侯爵から快く了承してもらえた。お前は本当に良い仕事をする」
「それなら良かったです」

 私とクレンド様の婚約が成立した。その報告を聞いて、私は安心する。
 これで後は、計画を実行に移すだけだ。そろそろお父様には、今までしてきたことへの報いを受けてもらうことにしよう。
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