聖女の代わりがいくらでもいるなら、私がやめても構いませんよね?

木山楽斗

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 私は、レイグスに言われて、自分がするべきことを理解した。
 だから、私はその顔を隠していたフードを一気に取る。

「アルメア……?」
「聖女様?」
「ど、どうして、ここに!?」

 露わになった私の顔を見て、町の人々は驚いていた。
 こうなるとわかっていたから、私は顔を隠していたのだ。
 聖女であった私は、この町のほとんどの人が顔を知っている。この町にいきなり現れたら、こうなるのは必然だったのだ。

「通してもらえますか? 中の様子を確認したいので……」
「は、はい……」
「聖女様が来たんだ。あいつも幸運だぜ!」

 だが、今はそれでよかった。
 聖女だと認識されていることで、私は他者から信頼を得ることができる。だから、何も言わずに道を開けてくれるのだ。これが普通の人だったら、ここまで話は早くなかっただろう。
 それに、聖女には人々に希望を与える力がある。私が来たから、怪我人は助かる。そのように考えさせられる程に、聖女の権威というものは偉大なのだ。

「最も、私はもう聖女ではないけど……」

 診療所の中を歩きながら、私はゆっくりと呟いていた。
 もう私は聖女ではない。その地位を利用したことに、罪悪感は少しある。
 しかし、今重要なのは、怪我人を助けることだ。それ以外のことなど、些細なことである。

「あ、あなたは……」
「通してもらえますか? 先生に助力したいのです」
「え、ええ……もちろんです」

 中にいた看護師さんも、私のことを信頼してくれていた。
 話が早いというのは、とてもいいことだ。通常なら入れない所まで、簡単に入ることができる。

「こちらの部屋です。どうか、よろしくお願いします」
「ええ、任せて……」

 看護師さんの案内で、私は怪我人がいる部屋に入っていく。この中に、怪我人と先生がいるのだ。
 私は、一度深呼吸する。ひどい怪我人というものは、今まで何回か見てきた。その衝撃に備えるため、心を落ち着かせなければならなかったのだ。

「先生、失礼します」
「む……お前は、アルメアか?」
「ええ、アルメアです。細かいことは、後で話しましょう。今は、私の治癒魔法をそちらの方にかける。それで構いませんね?」
「ああ、よろしく頼む」

 部屋の中には、先生と看護師さん達と怪我人がいた。先生は、すぐに私の言葉を理解してくれた。こういう判断が早いのは、本当に助かる。
 怪我人の状態は、かなり悪い。体中に傷があり、腹部には抉られたような傷がある。
 これを治療するのは、かなり難しいことだ。だが、その難しいことを可能にするのが聖女の役割なのだ。
 こうして、私は怪我人の治療を手伝うのだった。
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