聖女の代わりがいくらでもいるなら、私がやめても構いませんよね?

木山楽斗

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 私達は、カルリアに案内されて、王城まで来ていた。
 彼女のおかげで、魔術師達に襲われることもなかった。思っていたよりも、安全に目的地に辿り着けたのだ。

 私達が辿り着いたのは、王城のある一室だった。
 そこは、ビクトンが執務室として使っていた場所である。

 その奥には、二人の人間がいた。
 一人は、私の部下だったデグスという男だ。私にとって、カルリアと同じくらい信頼できる彼が、今回の事件の首謀者だったようである。

 もう一人は、ビクトンだ。
 彼は、縄で縛りつけられている。口には猿轡をつけており、その表情は苦しそうだ。

「……カルリア、どういうつもりだ?」
「デグス、もうやめましょう」

 私達の来訪に、デグスは少し驚いていた。
 味方であったはずのカルリアがこちらにいるのも、彼の驚きを大きくしているのだろう。
 そんなデグスに対して、カルリアは堂々としている。彼女の決意は、かなり固いようだ。

「ここにいるヘルゼン様が、ビクトンの悪事を暴くと約束してくれたわ。それが、私達の望みでしょう? これ以上、こんなことをする必要はないのよ」
「……王族など信用できるものか。我々が追い詰められている中、王族はのうのうと生きていたのだぞ? そんな奴らに、今更この国が変えられると思うか?」

 カルリアの説得に、デグスは応じなかった。
 彼は、既に王族に対する信頼を失ってしまっているようだ。
 その気持ちが、わからない訳ではない。王族も、ビクトンに協力していなかった権力者達も、魔術師関連の違和感に気づかなかった。
 彼等が気づいてくれていれば。そう思ってしまう気持ちは、私にもある。だが、それでも、デグスが今やっていることに未来があるとは思えない。

「デグス、もうこんなことはやめて。あなた達は、破滅に向かっている。それがわからないあなたではないよね?」
「聖女様、例え破滅に向かっているとしても、我らが悲願を果たすためなら、それでもいいのです。我々は、それを覚悟しているのです」

 私の呼びかけにも、デグスは応えてくれなかった。
 彼の決意は、相当固いようだ。それは、当然だろう。こんなことをするのに、半端な覚悟であるはずはない。
 だが、どうにかして彼を止めなければならないだろう。そうしなければ、彼や彼とともに戦った魔術師達に待っているのは、暗い未来だけである。

「あなたの気持ちは、わかりました」
「む……」

 そんな中、ヘルゼン様が口を開いた。
 その表情は、とても暗い。実際に、ビクトンの被害を受けた人を見て、色々と思っているのだろう。
 彼の言葉なら、届くかもしれない。その真摯な思いが伝われば、デグスもこの行いを止めるのではないだろうか。
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