聖女の代わりがいくらでもいるなら、私がやめても構いませんよね?

木山楽斗

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 私達は、事件の首謀者であるデグスの説得を行っていた。
 彼の決意は、とても固い。仲間であるカルリアの言葉も、かつての上司である私の言葉も、彼には届かなかった。
 だが、ヘルゼン様ならその言葉を届けられるかもしれない。彼の王族への不信は、第二王子の言葉なら晴れるかもしれないのだ。

「私達王族が、ビクトンの愚行に気づかなかった。そんな私達を今更信用することが難しいというあなたの言葉は、最もだと思います」
「……そんな私に、今更何か言おうというのですか?」
「ええ、それしか方法がありませんからね……」

 ヘルゼン様の表情は、真剣なものだった。
 先程までの暗い表情から、既に変わっている。きっと、デグスを止める決意を固めたのだろう。

「まずは、王族を代表して、あなたに謝罪しておきましょう。私の弟の愚行、及びそれを止めることができなかったこと。非常に、申し訳ありませんでした」
「……あなたからの謝罪だけで、我々の心が変わる訳ではありません」
「もちろん、わかっています。ただ、あなたには私の思いを知ってもらいたいのです。この目を見て、判断を下してください」
「む……」

 ヘルゼン様は、デグスの目をしっかりと見つめていた。
 その眼光に、デグスは少し怯んでいる。流石に、王族からの視線は厳しいものであるらしい。
 しかし、それでもデグスは目を離さない。それも、彼の固い覚悟が為すものだろう。

「理解していると思いますが、あなた達の天下は長く続きません。国中にいる貴族が総力を上げれば、あなた達は終わります。その破滅の道を歩む前に、あなた達には踏み止まって欲しいのです」
「それは、先程聖女様に述べたとおりです」
「……あなた達が手を引いてくれるなら、今回の件は不問に致しましょう」
「何?」

 ヘルゼン様は、デグス相手に交渉を始めていた。
 その交渉を信じられるかどうか、今回重要なのはそこだろう。

「ビクトンの愚行に気づけなかった私達に、あなた達を裁く権利はありません。だから、無罪放免といたしましょう。さらに、ビクトンにも裁きを下します。それなら、あなたも納得できるのではありませんか?」
「それは……」
「ここで手を止めなければ、貴族達が動くでしょう。そうなると、多くの犠牲が出ることは明白です。それに、その後は私達王族の力がどうなるかもわかりません。今なら、まだ踏み止まれる。そういうことです」
「む……」

 ヘルゼン様は、すごいことを言っていた。
 これだけのことをして、無罪放免。そんなことは、本来ならあり得ないことである。
 だが、それだけビクトンの行いを悔やんでいるということなのだろう。その決意は、私には伝わっている。後は、彼に伝わっているかどうかだ。
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