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12.気まずい雰囲気

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「……驚きました。まさか、あの場で口づけをするとは」
「え、ええ、まあ、あの時は必死でしたから……」

 客室に通された私は、急な熱に襲われていた。
 レオニア様と口づけをする。あの時は、それを迷うことなく実行することができた。
 だが後から冷静になってみると、急激に恥ずかしくなってきた。私は、なんと大胆なことをしてしまったのだろうかと。

「しかし、ありがたかったです。あれで反対派を黙らせられましたからね」
「まあ、あれもアピールだと言われる可能性もありましたが、上手くいってくれてよかったです」
「流石に、他国の令嬢があのような行動をして非難することはできませんよ。あなたは覚悟を見せた。それを否定するということは、彼らにとっても誇りを捨てるに等しいことです」
「なるほど……」

 反対派の獣人達にも、それなりにプライドのようなものがあるようだ。だからこそ、あの場は引かざるを得なかったということなのだろう。
 それは私にとっては、幸いなことだった。これならなんとか、彼らを抑えることができそうだ。
 私の覚悟が問題であるというなら、私はそれを成し遂げる。恥ずかしいこともあるが、それでも私はその決意を固めていた。

「まあ、そういうことならファーストキスを捧げた価値もあったということでしょうが……」
「む……そうだったのですか?」
「え? それはまあ、そうですよ?」
「なるほど……」

 レオニア様は、私の言葉に少し照れていた。
 そんな風に照れられてしまうと、こちらも照れてしまう。なんとなく、気まずい雰囲気だ。

「……まあ、父上も含めて、私の家族は皆味方です。ですから、ご安心ください。あなたのことは、我々が守ります」
「……それはなんというか、先程仰った言葉より弱いような気がしてしまいますね」
「え?」

 空気を変えるためか、レオニア様は話を少し変えてくれた。
 しかし私は思わず、それに反論してしまっていた。なんというか、彼の言葉が弱々しく思えてしまったのだ。
 先程言っていた自分が必ず守るという言葉の方が、私にはありがたく思えた。もちろん、あれは演技であったのだろうが、それでもなんだか今の言葉は嫌である。

「……確かに、今の言葉は一人の男としては情けない言葉でしたね」
「あ、いえ、その……」
「父上の前で言ったことは、本心です。私は、あなたを守りたいと思っています。その誓いを、今一度ここでしましょう」
「……ありがとうございます」

 レオニア様は、すぐに真剣な顔で態度を改めてくれた。
 その言葉を聞いて、私は安堵していた。なんというか、やはりこっちの方がいい。
 そんなことを思いながら、私は彼と話を続けるのだった。
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