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5.追放という罰

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 国外追放、それが私に下された罰だった。
 通称帰らずの森、国と国の間にある広大な森に、私は解き放たれることになったのだ。
 道しるべもなくそこに足を踏み入れるということは、普通ならば死を意味するものだった。

 もっとも、私なら助かること自体は難しくない。
 今は魔法を封じられているが、解放されさえすれば、それもなんとかできる。魔法を解放する儀式のための魔法陣さえ描ければ、問題はない。

そんな風に思いながら、私は馬車に乗っていた。

「気味が悪いな。こんな所に来なければならないないなんて、とんだ貧乏くじだ」
「まったくだぜ。おい、ゼルパルド、お前もそう思うだろう」
「……」
「ちっ! 相変わらず無口な奴だぜ。少しはコミュニケーションというものを取ろうとは思わないのかよ」

 私を運んでいる騎士団の団員達は、そんな軽口を叩いていた。
 それを聞き流しながら、私は考えていた。これからのことを。
 罪人である私は、きっとどこの国からも受け入れられないだろう。例え帰らずの森から出られても、どこにも行く場所なんてない。

 それならば、復讐を果たすべきだろうか。
 両親を死に追いやったバルダン、それから私を嵌めたアレイシア。あの二人を葬って、本当に罪人になるのもいいかもしれない。

「さてと、もうこの辺でいいよなぁ」
「ああ、でもよ。このままこいつを野放しにするのは、ちょっともったいなくないか?」
「あん? ……まあ、確かに良い女ではあるか」

 そんなことを考えていると、騎士団員達の下世話な声が聞こえてきた。
 これは少々、まずい状況かもしれない。今の私に、屈強な騎士団達に対抗することなんて不可能だ。

「ほら、お前、さっさと下りろよ。馬車の中は狭いからな」
「まあ、どうせお先なんて真っ暗なんだ。諦めて従った方が身のためだぜ」

 二人の騎士達は、にやにやと表情を歪めながらそう言ってきた。
 流石は、あのバルダンがトップを務める騎士団の団員だ。なんとも下劣である。
 しかし今はその下劣に、従うしかない。助かるためには、それ以外に方法がない。

「おっ、やっとその気になったか。聞き訳がいいのは――」
「……うん? ロブレウス?」

 意を決して立ち上がった私の目の前で、何かがポトリと地面に落ちた。

「ゼルパルド? お前、何して――」

 それが先程まで下世話な会話をしていた騎士の一人の首だったと気付いたのは、もう一人の騎士の体が剣によって貫かれた後だった。
 その剣が引き抜かれた瞬間、騎士は声にならない声を上げながらその場に倒れた。流れ出ている血の量からして、恐らくもう助からないだろう。

「あ、あなた、一体何をっ……」

 その惨状を目の当たりにした私は、動揺しながらも目の前にいる騎士を見た。
 その騎士は、特に表情も変えずに剣を鞘に納めている。その冷静さが、なんというか私はとても怖かった。
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