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6.冷徹なる救い
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「……血の匂いで、魔物がここに来るかもしれない」
「え?」
同僚二人の命を冷酷にも奪った騎士は、とても平坦な声で言葉を発していた。
その言葉の意味を理解するまでには、時間が必要だった。ただ思考が追いつくと、彼の言うことが真っ当であると、結論付けざるを得ない。
「だから、この場を離れるべきだと言いたいのですか?」
「話が早くて助かる。足元に気をつけろ」
「……」
冷酷なる騎士は、確かゼルパルドと呼ばれていたはずだ。
そのゼルパルドは、極めて紳士的に私に手を伸ばしている。しかし先程の出来事を見て、すぐにその手を取ることはできない。
一体彼は、何者なのだろうか。猟奇的な思考をする人とかなのだろうか。それなら私もこのまま、切り裂かれるのかもしれない。
「ああ、そうだ。あなたの魔封じを解いておかなければならないな……これを受け取れ」
「これは……」
私が色々と考えていると、ゼルパルドは一枚の紙を渡してきた。
その紙には、魔封じを解除するための魔法陣が描かれている。これさえあれば、私は再び魔法を使えるようになる。
それによって、彼が猟奇的な思考を持つ者であるという線が少し薄くなった。魔法が使えるようになったら、私の方が優位になるからだ。
「あの、あなたは一体何者なのですか?」
「その話は少し長くなる。歩きながらでも、構わないか」
「それは……」
「端的に言っておこう。俺はラディオン王国の人間だ。つまりはスパイだな」
「スパイ……」
ゼルパルドが出した単語は、ある意味において私が安心できる単語であった。
もしも彼がスパイであるというなら、この行動が理解できない訳でもない。本当の同僚でないならば、命を奪うことだってあるだろう。
「わかりました。とりあえずついて行きます。言っておきますが、今の私ならあなたをどうにでもできますからね?」
「怖いことを言ってくれるな。もちろん、それは承知している」
魔封じを解除してから、私はゼルパルドさんの手を取った。
彼が何かしらの任務でエパイル王国に潜り込んでいたスパイであるという話は、とりあえず信じることにする。
道中の話で納得できなければ、その時はその時だ。然るべき対応をさせてもらおう。
「……既に魔物が近づいてきているな。まあ、この場合は都合がいいといえるか」
「……あの二人の死は、恐らく任務途中の不慮の事故ということになりますかね」
「ああ、まあ、まず捜索もされないだろう。俺も含めて、木っ端の団員の命を気に掛ける騎士団ではない。だが、魔物が死肉を食らい、衣服などを持って行ってくれるなら好都合だ」
「悲惨な最期ですね。まあ、同情する気持ちはまったく湧いてきませんが」
私とゼルパルドさんは、すぐにその場から離れ始めた。
すると、辺りに隠れていたのか、魔物が二人の騎士団の亡骸に群がってきていた。
ゼルパルドさんは、それを一瞥もしない。二人の騎士は、それなりに親し気に彼に話しかけていたような気がする。
しかしどうやら、彼にとって、あの二人は取るに足らない存在だったようだ。
それから私は、ゼルパルドさんから色々と事情を聞くことになった。
そして私は知ったのである。隣国のラディオン王国が噂を聞きつけて、私を欲しているということを。
「え?」
同僚二人の命を冷酷にも奪った騎士は、とても平坦な声で言葉を発していた。
その言葉の意味を理解するまでには、時間が必要だった。ただ思考が追いつくと、彼の言うことが真っ当であると、結論付けざるを得ない。
「だから、この場を離れるべきだと言いたいのですか?」
「話が早くて助かる。足元に気をつけろ」
「……」
冷酷なる騎士は、確かゼルパルドと呼ばれていたはずだ。
そのゼルパルドは、極めて紳士的に私に手を伸ばしている。しかし先程の出来事を見て、すぐにその手を取ることはできない。
一体彼は、何者なのだろうか。猟奇的な思考をする人とかなのだろうか。それなら私もこのまま、切り裂かれるのかもしれない。
「ああ、そうだ。あなたの魔封じを解いておかなければならないな……これを受け取れ」
「これは……」
私が色々と考えていると、ゼルパルドは一枚の紙を渡してきた。
その紙には、魔封じを解除するための魔法陣が描かれている。これさえあれば、私は再び魔法を使えるようになる。
それによって、彼が猟奇的な思考を持つ者であるという線が少し薄くなった。魔法が使えるようになったら、私の方が優位になるからだ。
「あの、あなたは一体何者なのですか?」
「その話は少し長くなる。歩きながらでも、構わないか」
「それは……」
「端的に言っておこう。俺はラディオン王国の人間だ。つまりはスパイだな」
「スパイ……」
ゼルパルドが出した単語は、ある意味において私が安心できる単語であった。
もしも彼がスパイであるというなら、この行動が理解できない訳でもない。本当の同僚でないならば、命を奪うことだってあるだろう。
「わかりました。とりあえずついて行きます。言っておきますが、今の私ならあなたをどうにでもできますからね?」
「怖いことを言ってくれるな。もちろん、それは承知している」
魔封じを解除してから、私はゼルパルドさんの手を取った。
彼が何かしらの任務でエパイル王国に潜り込んでいたスパイであるという話は、とりあえず信じることにする。
道中の話で納得できなければ、その時はその時だ。然るべき対応をさせてもらおう。
「……既に魔物が近づいてきているな。まあ、この場合は都合がいいといえるか」
「……あの二人の死は、恐らく任務途中の不慮の事故ということになりますかね」
「ああ、まあ、まず捜索もされないだろう。俺も含めて、木っ端の団員の命を気に掛ける騎士団ではない。だが、魔物が死肉を食らい、衣服などを持って行ってくれるなら好都合だ」
「悲惨な最期ですね。まあ、同情する気持ちはまったく湧いてきませんが」
私とゼルパルドさんは、すぐにその場から離れ始めた。
すると、辺りに隠れていたのか、魔物が二人の騎士団の亡骸に群がってきていた。
ゼルパルドさんは、それを一瞥もしない。二人の騎士は、それなりに親し気に彼に話しかけていたような気がする。
しかしどうやら、彼にとって、あの二人は取るに足らない存在だったようだ。
それから私は、ゼルパルドさんから色々と事情を聞くことになった。
そして私は知ったのである。隣国のラディオン王国が噂を聞きつけて、私を欲しているということを。
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