公爵令嬢になった私は、魔法学園の学園長である義兄に溺愛されているようです。

木山楽斗

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第5話 特別な役割

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 私は、レティとともに中庭でお茶をしていた。

「はあ、お兄様の説教、長いんですから……」
「あはは……」

 レティは、入学試験の合格通知を貰ったから、余計なことを言ってしまったため、お兄様に説教を受けたのだ。
 その愚痴を聞くのが、今回のお茶会の目的ともいえる。

「でも、少しだけいいことがありました」
「いいこと?」
「ええ、お兄様に取引を持ち掛けられましてね……」

 そこで、レティは怪しい笑みを浮かべた。
 レティのこのような表情は珍しくないが、言っている内容は興味深い。
 お兄様との取引とは、なんだろう。とても気になる。

「実は、学園長権限で、お姉様と一緒のクラスにしてもらえることになったんです」
「ええ!? そ、そんなのいいの……?」

 レティから告げられたのは、驚くべきことだった。
 学園長権限で、同じクラスにするなど、職権乱用なのではないのだろうか。
 あのお兄様が、理由もなくそんなことをするとは思えない。

「ただ、交換条件を求められましてね……」
「こ、交換条件……?」
「ええ、お姉様に近づく男達を、振り払うように言われたんです」
「え、ええ!?」

 レティは、さらに驚くべきことを言ってきた。
 お兄様が、私に男の人を近づかせないようにしている。それは、一体どういう意味なのだろうか。
 もしかして、お兄様が私のことを特別に思ってくれているということかもしれない。
 そんな考えが浮かび上がると、私の心は激しく揺さぶられてしまう。

「ふあはっはっはっ! 言ってやりました! 秘密と言われましたけど! なんだか、勝った気がする!」
「ほう……」
「え……?」

 高笑いをあがるレティの後ろから、ある声が聞こえてきた。
 色々と考えていた私も、そちらに視線を向ける。

「この俺に、勝ったと言ったか?」
「い、いえ、わ、私が、お、お兄様に勝てるはずがありませんよお」
「ほう……?」

 すぐに態度を変えたレティだったが、お兄様の表情は変わっていない。
 恐らく、最初から聞いていたのだろう。ここは中庭なので、どこかから聞いていたとしてもおかしくはない。

「まあいい。契約すら守れない妹に、かける言葉はない」
「あ、う……非常に、申し訳ありませんでした……」

 お兄様は、レティに対して、冷たくそう言った。
 これには、流石のレティも参ったみたいだ。少し、しおらしくなっている。
 怒られるより、冷たくされる方がレティには効く。色々言っているが、レティもお兄様を慕っているのだ。

「……そう思うなら、二度とやらないことだ」
「は、はい……」

 そんなレティに、お兄様が優しい言葉をかけた。
 お兄様の方も、普段は厳しいが、それはレティのことを思っているからだ。そのため、本当に突き放すことはないのである。

「あ、お兄様。それで、先程レティが言っていたことは本当なのですか?」
「ああ、全て本当のことだ」
「お、お兄様が、学園長権限で、私とレティを同じクラスにするのですか? それは、職権乱用なのでは……?」

 話がまとまりそうだったので、私は質問をしてみた。
 すると、お兄様は特に躊躇いもなく答えてくれる。

「いや、そうではない。そこの愚か者が何を言ったかは知らないが、これは正当な理由によるものだ」
「正当な理由……ですか?」
「レティは、特別入学することになる。この制度を利用する者は、通常より下の年齢だ。そのため、クラス等に馴染めないことが危惧される。故に、特別措置として、同学年から一人を補助委員としてつけることになる。レティにはわかりやすく、お前を推薦しようと思っていただけに過ぎない」

 どうやら、特別入学の生徒には、補助委員をつける決まりになっているらしい。
 レティの姉である私は、その補助委員として最適である。その辺りを見越して、お兄様は私達を同じクラスにすることに決めたのだ。
 私は、今まで自分が考えたことを恥じる。やはり、お兄様が職権乱用などするはずはないのだ。疑った自分が、情けない。

「そ、そうなのですね……疑って、申し訳ありません」
「それは構わない。お前に話す前に、考えを進めた俺側にも問題はある。それより、レティのことを頼めるか?」
「はい。任せてください」

 こうして、私はレティの補助委員となることが決まった。
 元々、レティが学園生活に馴染めるように、何かをしてあげたいと思っていたため、これは願ってもないことだ。

「それと、レティに近づく男子生徒にも、注意しろ」
「え?」
「フォリシス家の人間と、婚約等を結ぼうとする者は多いはずだ。そのような者には、常に注意する必要がある」
「あ、そ、そうですね……」

 そこで、私は理解する。
 お兄様は、これを先程レティに言ったのだ。
 つまり、私を特別に思っていてくれたのではなく、フォリシス家の当主としての判断だったのである。
 そんなお兄様は、立派だと思う。ただ、少し残念な気持ちにもなる。

「最も、この俺個人の感情として、妹達に近づく不届き者が許せないということもあるがな……」
「お兄様……」

 そう思っていた私に、お兄様はそんな言葉をかけてくれた。
 私は、再び自分を恥じなければならない。優しいお兄様が、私達のことを思ってくれていない訳がないのだ。

 こうして、私はレティの補助委員につくことになるのだった。
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