公爵令嬢になった私は、魔法学園の学園長である義兄に溺愛されているようです。

木山楽斗

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第49話 威厳を持って

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 私は、プリネさんを追って下の階に来ていた。
 上の階は、レティが行ってくれているので、私はこちらを探すのだ。

「あれ……?」

 下の階に下りてきてすぐ、私はプリネさんらしき人を見つけた。
 またも、周りを気にしながら、歩いているようだ。やはり、プリネさんは何かを気にしながら歩いているらしい。
 そして、こちらの階に来たということは、プリネさんは家庭科部に向かった訳ではないということである。薄々そう思っていたが、今日も家庭科部にはいかないらしい。

「追わないと……」

 幸いこちらに気づいてはいないようなので、私はゆっくりとプリネさんの後をつけた。
 その道筋から、恐らく校舎裏に向かっているような気がする。
 校舎裏というのは、あまりいいイメージがない。人気のない場所というのは、一人で行くには少し怖い所だろう。
 そんな場所に、プリネさんが向かっている。そのことが、私を緊張させてきた。何かがある。そんな気がするのだ。

「あっ……」

 そこで、私は身を隠していた。なぜなら、あの貴族達が現れたからだ。
 彼女達は、プリネさんの後ろから、同じように歩いて行く。
 やはり、いいことは起こりそうにない。ここは、どうすればいいのだろうか。
 考えられることは、いくつかある。

 一つは、このまま彼女達を追って、その現場を押さえること。
 そうすれば、彼女達も迂闊なことはできなくなる。ただ、一人で彼女達に立ち向かえるのかは、少し不安だ。

 もう一つは、ここで引き返し、レティと合流すること。
 その方が、彼女達に対する効果は高い。だが、それには時間がかかってしまう。

「行くしかないよね……」

 結局、私は前者を選択することにした。
 レティを呼びに行っている内に、彼女達がここを移動しないとも限らない。
 ここは、現場を押さえるこが先決だ。レティなら、きっと上の階を見終わった後、こちらに来てくれるだろう。そのため、この選択で問題ないはずである。

 私は、意を決し裏庭に足を進めていく。
 すると、声が聞こえ始めた。何か言い争うような声だ。いや、一方的に言っているだけという方が正しい。

「あなた、自分が何をしたかわかっているの?」
「あの部活は、公爵令嬢が集まる神聖な部活なのよ。そんな所に、あなたのような平民が加わろうなんて、許されることではないのよ?」

 それは、プリネさんを責める言葉だった。
 やはり、彼女達はプリネさんを攻撃していたのである。彼女が、公爵令嬢が二人も入っている部活の見学をしたため、攻めているのだ。

 恐らく、昨日も似たようなことを言ったのだろう。プリネさんが、あの時間に教室から出てきたことを考えると、私達が部活をしていた間、責められていたはずだ。
 その長い時間を考えると、胸が痛くなる。自分よりも地位が高い者達に、集団で攻められ続けた。その体験が、プリネさんをどれだけ傷つけたのだろか。
 私は、一度呼吸を整える。彼女達の前に出ていかなければならない。それには、公爵令嬢としての威厳がいる。
 気高く力強くならなければ、彼女達に押し負けてしまう。それだけは、避けなければならない。

「あなた達! 何をしているのですか!?」

 私は大きな声を出しながら、彼女達の前に出た。
 すると、そこにいる人々の視線が私に集中する。

「あ、あなたは……」
「ルリア・フォリシス様……」

 私の登場で、数名の貴族達の表情が変わった。
 やはり、堂々と出てきてよかった。そのおかげで、私が公爵令嬢であり、彼女達よりも上であるということを示せている。
 これでなければ、効果がない。彼女達にわからせなければならないのだ。自分達がしていることが、どういうことかを。

「平民の方を、寄ってたかっていじめる。あなた達には、貴族としての誇りというものがないのですか?」
「うっ……」
「このことは許されないことです。私は、公爵家の人間として、あなた達に然るべき措置を行います」

 私の言葉で、ほとんどの貴族達は参ったような表情になった。
 私の地位は、彼女達よりも上だ。よって、この宣告はかなり効果がある。

 こうして、私は彼女達の前に立つのだった。
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