75 / 80
第60話 思いを告げて
しおりを挟む
私は、お兄様の元に訪れていた。
それは、私の思いを伝えるためである。
「それで、俺になんの用だ?」
「あ、はい……」
しかし、私はここにきて少し躊躇ってしまっていた。
本当に、お兄様へ告白することは正しいのだろうか。
そうすれば、私の心に後悔は残らない。だが、この思いを告げることで、私とお兄様のこれからの関係に亀裂が入る可能性もある。
先程思いついてすぐ行動したが、もう少し考えるべきだったかもしれない。最も、すぐに行動しなければ、ここまで至れなかっただろう。考え続けて、結局行動に移らないという落ちが、容易に考えられる。
「ルリア、どうした?」
「あ、いえ……」
黙ってしまった私を、お兄様は心配してくれた。
このように、お兄様に心配をかけるのはよくないことだ。
早く、どうするか決断しなければならない。
「お兄様、実は私、お兄様に言いたいことがあるのです」
「ほう?」
そのため、私は決断した。ここは、お兄様に思いを告げようと。
後で、告白しないで後悔するより、今告白する方が絶対にいいはずだ。
ここで、お兄様にはっきりと振られて、新たな明日を歩む。それが、私にとって一番いい選択なのだ。
「私は……お兄様をお慕いしています」
「何?」
「きょ、兄妹としてではなく、異性として、です」
「……」
私の言葉に、お兄様は目を丸くしていた。
このようなお兄様の表情を見るのは、初めてかもしれない。
それだけ、私の発言がお兄様を驚かせてしまったのだ。
「うぐっ……」
「お、お兄様? 大丈夫ですか?」
そこで、お兄様はよくわからない声をあげた。
私のあまりにもおかしな発言に、お兄様はかなり動揺しているらしい。
「だ、大丈夫だ。す、少し動揺したに過ぎない。それより、お前の言葉に返答しなければならないだろう」
「あ、はい……」
お兄様は、動揺しながらも私の言葉に返答しようとしてくれていた。
本当に、このようなお兄様は珍しい。
「俺は、回りくどいことは言わん。故に、結論からお前に伝えることになる」
「はい……」
「残念だが、俺はお前の思いに応えることはできない」
私に告げられたのは、そのようなことだった。
これは、わかっていたことだ。お兄様が、私の思いを受け入れることはない。それは、当然のことである。
だが、思っていたよりも衝撃は大きかった。予測していても、本人に言われるのはとても辛いものである。
「なぜなら、俺はお前の兄だからだ」
「はい……」
「俺は、お前を大切に思っている。だが、それは妹としてだ。その思いに応えることは、できない」
さらに、お兄様は言葉を続けてきた。
それは、私の思いに応えられない理由だ。
しかし、その言葉を聞いて、私は少しだけ疑問に思った。
先程から、お兄様は兄としての立場を説いている。だが、一人の人としての答えはどうなのだろうか。
「兄でなければ……」
「うん?」
「兄でなければ、結果は違ったのですか?」
そのことが気になり、私は思わず聞いてしまった。
その言葉に、お兄様は少し表情を変える。目を瞑って、何かを考えているような表情だ。
一瞬そうして目と閉じてから、お兄様はその目を開く。その目は、優しい目をしていた。
「その仮定はあり得ない。俺とお前は、兄と妹という関係だったからこそ、この関係になったのだ。兄と妹であったからこそ、俺とお前は……」
「はい……」
お兄様の言葉を、私は遮った。
それ以上は、聞く必要がないと思ったのだ。
お兄様の心は、なんとなく理解できた。だから、その言葉は聞かない方がいいと思ったのである。
「それでは、私は失礼します」
「ああ……」
私は、お兄様の元から逃げるように去っていく。
これ以上、ここにいる訳にはいかなった。
お兄様に、私の涙を見せる訳にはいかないのだ。
それは、私の思いを伝えるためである。
「それで、俺になんの用だ?」
「あ、はい……」
しかし、私はここにきて少し躊躇ってしまっていた。
本当に、お兄様へ告白することは正しいのだろうか。
そうすれば、私の心に後悔は残らない。だが、この思いを告げることで、私とお兄様のこれからの関係に亀裂が入る可能性もある。
先程思いついてすぐ行動したが、もう少し考えるべきだったかもしれない。最も、すぐに行動しなければ、ここまで至れなかっただろう。考え続けて、結局行動に移らないという落ちが、容易に考えられる。
「ルリア、どうした?」
「あ、いえ……」
黙ってしまった私を、お兄様は心配してくれた。
このように、お兄様に心配をかけるのはよくないことだ。
早く、どうするか決断しなければならない。
「お兄様、実は私、お兄様に言いたいことがあるのです」
「ほう?」
そのため、私は決断した。ここは、お兄様に思いを告げようと。
後で、告白しないで後悔するより、今告白する方が絶対にいいはずだ。
ここで、お兄様にはっきりと振られて、新たな明日を歩む。それが、私にとって一番いい選択なのだ。
「私は……お兄様をお慕いしています」
「何?」
「きょ、兄妹としてではなく、異性として、です」
「……」
私の言葉に、お兄様は目を丸くしていた。
このようなお兄様の表情を見るのは、初めてかもしれない。
それだけ、私の発言がお兄様を驚かせてしまったのだ。
「うぐっ……」
「お、お兄様? 大丈夫ですか?」
そこで、お兄様はよくわからない声をあげた。
私のあまりにもおかしな発言に、お兄様はかなり動揺しているらしい。
「だ、大丈夫だ。す、少し動揺したに過ぎない。それより、お前の言葉に返答しなければならないだろう」
「あ、はい……」
お兄様は、動揺しながらも私の言葉に返答しようとしてくれていた。
本当に、このようなお兄様は珍しい。
「俺は、回りくどいことは言わん。故に、結論からお前に伝えることになる」
「はい……」
「残念だが、俺はお前の思いに応えることはできない」
私に告げられたのは、そのようなことだった。
これは、わかっていたことだ。お兄様が、私の思いを受け入れることはない。それは、当然のことである。
だが、思っていたよりも衝撃は大きかった。予測していても、本人に言われるのはとても辛いものである。
「なぜなら、俺はお前の兄だからだ」
「はい……」
「俺は、お前を大切に思っている。だが、それは妹としてだ。その思いに応えることは、できない」
さらに、お兄様は言葉を続けてきた。
それは、私の思いに応えられない理由だ。
しかし、その言葉を聞いて、私は少しだけ疑問に思った。
先程から、お兄様は兄としての立場を説いている。だが、一人の人としての答えはどうなのだろうか。
「兄でなければ……」
「うん?」
「兄でなければ、結果は違ったのですか?」
そのことが気になり、私は思わず聞いてしまった。
その言葉に、お兄様は少し表情を変える。目を瞑って、何かを考えているような表情だ。
一瞬そうして目と閉じてから、お兄様はその目を開く。その目は、優しい目をしていた。
「その仮定はあり得ない。俺とお前は、兄と妹という関係だったからこそ、この関係になったのだ。兄と妹であったからこそ、俺とお前は……」
「はい……」
お兄様の言葉を、私は遮った。
それ以上は、聞く必要がないと思ったのだ。
お兄様の心は、なんとなく理解できた。だから、その言葉は聞かない方がいいと思ったのである。
「それでは、私は失礼します」
「ああ……」
私は、お兄様の元から逃げるように去っていく。
これ以上、ここにいる訳にはいかなった。
お兄様に、私の涙を見せる訳にはいかないのだ。
1
あなたにおすすめの小説
【完結】追放された私、宮廷楽師になったら最強騎士に溺愛されました
er
恋愛
両親を亡くし、叔父に引き取られたクレアは、義妹ペトラに全てを奪われ虐げられていた。
宮廷楽師選考会への出場も拒まれ、老商人との結婚を強要される。
絶望の中、クレアは母から受け継いだ「音花の恵み」——音楽を物質化する力——を使い、家を飛び出す。
近衛騎士団隊長アーロンに助けられ、彼の助けもあり選考会に参加。首席合格を果たし、叔父と義妹を見返す。クレアは王室専属楽師として、アーロンと共に新たな人生を歩み始める。
ブラック企業に勤めていた私、深夜帰宅途中にトラックにはねられ異世界転生、転生先がホワイト貴族すぎて困惑しております
さくら
恋愛
ブラック企業で心身をすり減らしていた私。
深夜残業の帰り道、トラックにはねられて目覚めた先は――まさかの異世界。
しかも転生先は「ホワイト貴族の領地」!?
毎日が定時退社、三食昼寝つき、村人たちは優しく、領主様はとんでもなくイケメンで……。
「働きすぎて倒れる世界」しか知らなかった私には、甘すぎる環境にただただ困惑するばかり。
けれど、領主レオンハルトはまっすぐに告げる。
「あなたを守りたい。隣に立ってほしい」
血筋も財産もない庶民の私が、彼に選ばれるなんてあり得ない――そう思っていたのに。
やがて王都の舞踏会、王や王妃との対面、数々の試練を経て、私たちは互いの覚悟を誓う。
社畜人生から一転、異世界で見つけたのは「愛されて生きる喜び」。
――これは、ブラックからホワイトへ、過労死寸前OLが掴む異世界恋愛譚。
キズモノ転生令嬢は趣味を活かして幸せともふもふを手に入れる
藤 ゆみ子
恋愛
セレーナ・カーソンは前世、心臓が弱く手術と入退院を繰り返していた。
将来は好きな人と結婚して幸せな家庭を築きたい。そんな夢を持っていたが、胸元に大きな手術痕のある自分には無理だと諦めていた。
入院中、暇潰しのために始めた刺繍が唯一の楽しみだったが、その後十八歳で亡くなってしまう。
セレーナが八歳で前世の記憶を思い出したのは、前世と同じように胸元に大きな傷ができたときだった。
家族から虐げられ、キズモノになり、全てを諦めかけていたが、十八歳を過ぎた時家を出ることを決意する。
得意な裁縫を活かし、仕事をみつけるが、そこは秘密を抱えたもふもふたちの住みかだった。
虐げられていた黒魔術師は辺境伯に溺愛される
朝露ココア
恋愛
リナルディ伯爵令嬢のクラーラ。
クラーラは白魔術の名門に生まれながらも、黒魔術を得意としていた。
そのため実家では冷遇され、いつも両親や姉から蔑まれる日々を送っている。
父の強引な婚約の取り付けにより、彼女はとある辺境伯のもとに嫁ぐことになる。
縁談相手のハルトリー辺境伯は社交界でも評判がよくない人物。
しかし、逃げ場のないクラーラは黙って縁談を受け入れるしかなかった。
実際に会った辺境伯は臆病ながらも誠実な人物で。
クラーラと日々を過ごす中で、彼は次第に成長し……そして彼にまつわる『呪い』も明らかになっていく。
「二度と君を手放すつもりはない。俺を幸せにしてくれた君を……これから先、俺が幸せにする」
銀狼の花嫁~動物の言葉がわかる獣医ですが、追放先の森で銀狼さんを介抱したら森の聖女と呼ばれるようになりました~
川上とむ
恋愛
森に囲まれた村で獣医として働くコルネリアは動物の言葉がわかる一方、その能力を気味悪がられていた。
そんなある日、コルネリアは村の習わしによって森の主である銀狼の花嫁に選ばれてしまう。
それは村からの追放を意味しており、彼女は絶望する。
村に助けてくれる者はおらず、銀狼の元へと送り込まれてしまう。
ところが出会った銀狼は怪我をしており、それを見たコルネリアは彼の傷の手当をする。
すると銀狼は彼女に一目惚れしたらしく、その場で結婚を申し込んでくる。
村に戻ることもできないコルネリアはそれを承諾。晴れて本当の銀狼の花嫁となる。
そのまま森で暮らすことになった彼女だが、動物と会話ができるという能力を活かし、第二の人生を謳歌していく。
せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません
嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。
人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。
転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。
せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。
少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。
転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて何故か執着されました
古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
皆様の応援のおかげでHOT女性向けランキング第7位獲得しました。
前世病弱だったニーナは転生したら周りから地味でダサいとバカにされる令嬢(もっとも平民)になっていた。「王女様とか公爵令嬢に転生したかった」と祖母に愚痴ったら叱られた。そんなニーナが祖母が死んで冒険者崩れに襲われた時に助けてくれたのが、ウィルと呼ばれる貴公子だった。
恋に落ちたニーナだが、平民の自分が二度と会うことはないだろうと思ったのも、束の間。魔法が使えることがバレて、晴れて貴族がいっぱいいる王立学園に入ることに!
しかし、そこにはウィルはいなかったけれど、何故か生徒会長ら高位貴族に絡まれて学園生活を送ることに……
見た目は地味ダサ、でも、行動力はピカ一の地味ダサ令嬢の巻き起こす波乱万丈学園恋愛物語の始まりです!?
小説家になろうでも公開しています。
第9回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作品
前世で孵した竜の卵~幼竜が竜王になって迎えに来ました~
高遠すばる
恋愛
エリナには前世の記憶がある。
先代竜王の「仮の伴侶」であり、人間貴族であった「エリスティナ」の記憶。
先代竜王に真の番が現れてからは虐げられる日々、その末に追放され、非業の死を遂げたエリスティナ。
普通の平民に生まれ変わったエリスティナ、改めエリナは強く心に決めている。
「もう二度と、竜種とかかわらないで生きていこう!」
たったひとつ、心残りは前世で捨てられていた卵から孵ったはちみつ色の髪をした竜種の雛のこと。クリスと名付け、かわいがっていたその少年のことだけが忘れられない。
そんなある日、エリナのもとへ、今代竜王の遣いがやってくる。
はちみつ色の髪をした竜王曰く。
「あなたが、僕の運命の番だからです。エリナ。愛しいひと」
番なんてもうこりごり、そんなエリナとエリナを一身に愛する竜王のラブロマンス・ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる