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7.部屋に帰って

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「……」
「アルネシア、どうかしたのか?」
「あ、いえ……」

 部屋に戻った私は、カークスお兄様に驚いたような顔を向けられた。
 それは恐らく、私の表情が原因であるだろう。多分、私は色々と疲れているような表情をしているはずだ。
 とりあえず、私は変身を解く。お兄様の姿は、お兄様にとっては快くないものだといつも聞いていたからだ。

「アルネシア、どうかしたのかい? 外で何かあったのか?」
「……お兄様、お手を。私が見たものを送ります」
「う、うむ……」

 私は、お兄様の手を取り自分が見たものを魔法で送る。
 言葉にするよりも、今はこの方が早い。そう思ったからだ。

「……なるほど、理解した。どうやら、厄介なことになっているようだね」
「ええ、色々な意味で厄介なことになっていきます」

 私が送った光景で、カークスお兄様は全てを理解してくれたようである。
 こういう時に話が早いのは助かる。流石は、お兄様だ。

「まずは、一つ一つ整理していくとしようか。ディレン君は、新人潰しというものにあっているみたいだね」
「はい、多分そうだと思います。まだそれ程過激なことはしていないようですけど、どうなるかはわかりません」
「才能ある若い人材を潰して何になるというのかはわからないが、まあそれに関しては僕が牽制しておくとしよう。問題はもう一つの方だ」

 お兄様は、顎の下に手を当てながら部屋の中を歩いた。
 恐らく、それなりに動揺しているのだろう。

「ディレン君が君を見て後退った。それは普通あり得ないことだおる?」
「そうですね……あり得ないと思います。でも、何かしらの魔法を使ったなら私もわかりますから、彼は何もしていません」
「何もしていない……ふむ、ならばあれはどういうことなのだろうか」

 ディレンさんは、私の目を見て後退った。
 あの反応は、少々気になる。まさか私の正体を見抜いた訳ではないと思うが。

「彼の魔力をやんわりと感じ取ってみましたが、特段すごいという訳ではありませんでした。あ、いえ、もちろん優れた才能はありますが……」
「まあ、君基準で考えると、特段凄い魔力を持つ者はいないだろうさ。ふむ、ということは彼は普通の範疇をあくまで外れていないということか」
「ええ、そういうことになりますね……だから、私に対して魔法を隠すということはできないと思います。だから、あの反応はいわば本能のようなものかと……」
「本能か……」

 私は、お兄様の言葉にゆっくりと頷いた。
 別に、彼は特段優れた魔法使いであるとは思えない。少なくとも、私に匹敵する力は持っていない。
 だが、本能で後退ったというのはあり得る。私には基本的に動物が近寄ってこない。それと同じように、彼は強大な力を持つ私から距離を取ったのかもしれない。

「まあ、そちらも警戒しておくべきだな。とはいえ、そちらに関しては何か対処ができるという訳ではない」
「……すみません。私が外に出たせいで」
「気にすることはない。僕は共犯者だ。その罪は兄である僕も背負うとも。そもそも、こんな所にいつまでも籠らせておくということに無理があるのさ」
「……ありがとうございます」

 カークスお兄様は、笑顔を浮かべてくれた。
 しかし、これからは外出は避けるべきだろう。今度のようなことが、また会ったら取り返しのつかないことになるかもしれない。
 私もお父様のことを言えた義理ではない。本気で隠れるつもりなら、そうするべきなのだろう。
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