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10.危険な存在

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 カークスお兄様が部屋からいなくなった後、私は一人で瞑想していた。
 自分の中にある膨大な魔力、それを私ははっきりと認識できる。
 私自身がこの魔力を感じても、特に何も起こることはない。自分自身の魔力なのだから、それは当たり前なのかもしれない。

「そういえば、私のこの魔力は一体、誰が伝えてくれたんだろう?」

 そこで、私はとある疑問を抱いた。
 私自身は、自分の魔力を認識しているが、お父様などはどうやってこの魔力を認識したのだろうか。
 魔力を感知する魔法は存在する。誰がそれを使って、私の魔力を調べたと考えるのが自然だ。

「……その人はどうなったんだろう?」

 もしも私の魔力が魔力中毒を引き起こすとしたら、私の魔力を観測した人はただでは済まなかったはずである。
 お父様から、そのような話は聞いたことがない。だが、それが起こった可能性がある。私が生まれてすぐに魔力を観測したとすれば、私がそれを知らなくてもおかしくはない訳ではあるし。

「カークスお兄様も、多分知らないよね……」

 私と年齢がそれ程違わないカークスお兄様も、私が生まれた時のことは把握していないだろう。それを知っているとしたら、長男であるダルムお兄様か、次男であるサリクドお兄様だろうか。

「今度来た時に、聞いてみようかな……」

 カークスお兄様以外のお兄様は、私の部屋をそれ程訪ねて来ない。正確に言えば、立場上訪ねられないということになるだろうか。
 一応、私はここで業務をしているという扱いになっている。部下にあたるカークスお兄様は、業務の名目としてここを定期的に訪れることができるが、それ以外の人物はあまりここに来られないのだ。

「……魔力中毒」

 私は、先程取り出した本に再び目を通した。
 魔力中毒は、一度陥ってしまうと治ることはないそうだ。治す方法はあるのかもしれないが、それは今の所見つかっていない。
 つまり、ディレンさんは一生後遺症に悩まされる可能性がある。それを考えると、心が痛くなってきた。

「……本当にいい人みたいだしね」

 ディレンさんと実際に対面して話してみて、私はカークスお兄様の言っていたことが少しだけ理解することができた。
 彼は恐らく、いい人なのだろう。そんな人を苦しめる結果になってしまったのは、本当に申し訳ない。
 とにかく、私はこれからもうこの部屋から出ない方がいいだろう。二度と、このようなことを引き起こさないためにも。

「私は危険な存在、それをもう一度心に刻まないと……」

 お父様は、私を怪物であると称した。
 実際に、その通りだ。私という存在は、他者を傷つけてしまうとても危険な存在なのである。
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