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6.続く横暴
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ロメリア様の暴挙によって、王城の魔法使いはかなり減っていった。
機嫌を少しでも損ねると、彼女は容赦なくクビを言い渡した。国王様はその要望に、忠実に従っているようだ。
程なくして、何人かの魔法使い達が自らの意思で王城から去るようになった。いつクビになるかわからないため、転職する者も多いようだ。
「……ラムーナ様は、どうされるつもりなんですか?」
「わかりません。ただ、私は村のためにここにいる側面がありますから、少なくとも村が安泰になるまではここに残りたいとは思っています」
立場上は部下であるネフェリナさんの言葉に、私はそのように答えることしかできなかった。
聖女補佐として、私は莫大な見返りをもらっている。それは、他の仕事では絶対にもらえない程の金額だ。
それを手放すことは、正直惜しかった。飢饉の村のためにお金が必要な私にとって、今の地位を退くことは少々難しいのだ。
しかし、その事情がなければ私もここを去るかもしれない。それ程にこの王城での仕事は苦しいのである。
「ネフェリナさんは、どうされるおつもりなんですか?」
「私は今、仕事を探しています。新しい仕事が決まり次第、ここをやめてさせてもらおうかと思っています」
「そうですか……」
どうやらネフェリナさんも、ここをやめようと考えているようだ。やはり、皆限界がきているのだろう。
このままでは王城から優秀な人材が消えていくだけだ。それを国王様もロメリア様も、わかっていないのだろうか。
いや、恐らくわかっていないのだろう。狂人であるロメリア様とそんな彼女を溺愛している国王様に冷静な判断などができる訳はない。
「一応、ルドベルド様やレムバル様が動いてくださっているようですが、いつこの状況が改善されるかもわかりませんからね……」
「ええ、そうですね。中々に難しい問題なのだと思います」
第一王子であるルドベルド様とレムバル様は、国王様に抗議を重ねているそうだ。
しかし国王様は、それを一切聞き入れていないらしい。それ程までに、彼にとってはロメリア様が大切だということなのだろう。
横暴な振る舞いをしているが、それでも国王様の力はすごい。王子二人が手を合わせても、敵わないようだ。
「……ネフェリナだな?」
「……え?」
そこで私達の前に、兵士達がやって来た。
その兵士達は険しい顔をしている。その理由はわからないが、どうやらネフェリナさんに何か用があるらしい。
「あなたを捕まえさせてもらう」
「捕まえる? どうして私を?」
「上からの命令だ」
「命令?」
ネフェリナさんは、訳がわからないというような顔をしている。
それに対して、兵士達も気まずそうな顔をしていた。つまりその命令は、彼らにとってもそれ程快いものではないということなのだろう。
そこで私は、ある人物の顔を思い出した。これは明らかにロメリア様の手が及んでいる。恐らく、彼女がまたも理不尽な振る舞いをしているのだろう。
「……私が何をしたというのですか?」
「……あなたにはこの王城の情報を漏洩した容疑がかかっています」
「なるほど、そういうことですか……」
兵士達の言葉に、ネフェリナさんはその表情を歪めた。
彼女も、これがどういうことなのか気付いたのだろう。その表情は、怒りと悲しみが表れている。
「ラムーナ様、どうやらこの王城はもう終わりのようですね……」
「……そのようですね」
「早くここから出て行くことをお勧めします。そうしなければ、ラムーナ様もきっとあの方の毒牙にかかることになります」
「ネフェリナさん……」
ネフェリナさんはそう言い残して、兵士達に連れて行かれてしまった。
本当に、この王城はもう終わりなのだろう。いやそれどころか、この国が終わりなのかもしれない。
ここまで揺らいでいるのだ。その不満が爆発するまで、それ程時間はかからないのではないだろうか。
「……給料日はもうすぐ、か」
私は一言ぽつりと呟いた。
次の給料が入ったら、私もここから去るべきだろう。そうしなければ、その給料を村に持ち帰れないかもしれない。そうなることが、私にとって一番まずいことだ。
機嫌を少しでも損ねると、彼女は容赦なくクビを言い渡した。国王様はその要望に、忠実に従っているようだ。
程なくして、何人かの魔法使い達が自らの意思で王城から去るようになった。いつクビになるかわからないため、転職する者も多いようだ。
「……ラムーナ様は、どうされるつもりなんですか?」
「わかりません。ただ、私は村のためにここにいる側面がありますから、少なくとも村が安泰になるまではここに残りたいとは思っています」
立場上は部下であるネフェリナさんの言葉に、私はそのように答えることしかできなかった。
聖女補佐として、私は莫大な見返りをもらっている。それは、他の仕事では絶対にもらえない程の金額だ。
それを手放すことは、正直惜しかった。飢饉の村のためにお金が必要な私にとって、今の地位を退くことは少々難しいのだ。
しかし、その事情がなければ私もここを去るかもしれない。それ程にこの王城での仕事は苦しいのである。
「ネフェリナさんは、どうされるおつもりなんですか?」
「私は今、仕事を探しています。新しい仕事が決まり次第、ここをやめてさせてもらおうかと思っています」
「そうですか……」
どうやらネフェリナさんも、ここをやめようと考えているようだ。やはり、皆限界がきているのだろう。
このままでは王城から優秀な人材が消えていくだけだ。それを国王様もロメリア様も、わかっていないのだろうか。
いや、恐らくわかっていないのだろう。狂人であるロメリア様とそんな彼女を溺愛している国王様に冷静な判断などができる訳はない。
「一応、ルドベルド様やレムバル様が動いてくださっているようですが、いつこの状況が改善されるかもわかりませんからね……」
「ええ、そうですね。中々に難しい問題なのだと思います」
第一王子であるルドベルド様とレムバル様は、国王様に抗議を重ねているそうだ。
しかし国王様は、それを一切聞き入れていないらしい。それ程までに、彼にとってはロメリア様が大切だということなのだろう。
横暴な振る舞いをしているが、それでも国王様の力はすごい。王子二人が手を合わせても、敵わないようだ。
「……ネフェリナだな?」
「……え?」
そこで私達の前に、兵士達がやって来た。
その兵士達は険しい顔をしている。その理由はわからないが、どうやらネフェリナさんに何か用があるらしい。
「あなたを捕まえさせてもらう」
「捕まえる? どうして私を?」
「上からの命令だ」
「命令?」
ネフェリナさんは、訳がわからないというような顔をしている。
それに対して、兵士達も気まずそうな顔をしていた。つまりその命令は、彼らにとってもそれ程快いものではないということなのだろう。
そこで私は、ある人物の顔を思い出した。これは明らかにロメリア様の手が及んでいる。恐らく、彼女がまたも理不尽な振る舞いをしているのだろう。
「……私が何をしたというのですか?」
「……あなたにはこの王城の情報を漏洩した容疑がかかっています」
「なるほど、そういうことですか……」
兵士達の言葉に、ネフェリナさんはその表情を歪めた。
彼女も、これがどういうことなのか気付いたのだろう。その表情は、怒りと悲しみが表れている。
「ラムーナ様、どうやらこの王城はもう終わりのようですね……」
「……そのようですね」
「早くここから出て行くことをお勧めします。そうしなければ、ラムーナ様もきっとあの方の毒牙にかかることになります」
「ネフェリナさん……」
ネフェリナさんはそう言い残して、兵士達に連れて行かれてしまった。
本当に、この王城はもう終わりなのだろう。いやそれどころか、この国が終わりなのかもしれない。
ここまで揺らいでいるのだ。その不満が爆発するまで、それ程時間はかからないのではないだろうか。
「……給料日はもうすぐ、か」
私は一言ぽつりと呟いた。
次の給料が入ったら、私もここから去るべきだろう。そうしなければ、その給料を村に持ち帰れないかもしれない。そうなることが、私にとって一番まずいことだ。
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