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10.静かでのどかな村
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私の故郷の村は、エルファンド王国の辺境にある小さな村である。
都会と呼ばれるような町から大きく離れた場所にあるこの村は、よく言えば静かでのどかだが、悪く言えば殺風景で活気がない。
ただ私は、この村のことは好きだった。皆優しい人達だし、この澄んだ空気は私を元気にさせてくれる。
「ラムーナ、助かったよ」
「お役に立てたなら何よりです」
私は現在、そんな村で生活を送っている。サリーム様に忠告されたことのもあって、大人しく村にいることにしたのだ。
とはいえ、村でゆっくり休むことはできない。不作のこともあるし、色々とやらなければならないことがあったからだ。
そもそもの話、このような都会から離れた村では皆協力して生きていくのが基本である。そのため私は、色々な人の手助けをしているのだ。
「それにしても、見事なものだね。魔法使いとしての才能は昔から知っていたけれど、見事なものだ」
「まあ、これでも一応優秀な魔法使いなんですよ」
「はは、まあ僕にとってはいつまでもあの頃の小さな女の子に思えてしまうけどね」
私を見ながら、アムテルドさんは懐かしそうに笑っていた。
この村の人達は、皆私のことを娘みたいに可愛がってくれている。それは私にとって、とても嬉しいことだ。
小さな頃に両親を亡くした私のことを、村の人達は皆で支えてくれた。私に魔法使いとしての才能があるとわかった時もそうだ。皆でお金を出し合って、私を王都に行かせてくれたのである。
「でも驚いたよ。まさかあれ程の大金を村に寄付してくれるなんてね……本当に良かったのかい? 自分のために使っても誰も文句は言わなかったと思うけれど」
「私はただ、今までの恩を返したというだけです」
「恩だなんて思わなくてもいいんだけどね。この村の者達は、皆家族なのだから。支え合うのは当然というものさ」
「それなら、私の行動も家族だからですよ。困っている家族を支えるのは当然のことでしょう?」
「……なるほど、確かにそれはそうかもしれないね。盲点だったよ」
アムテルドさんは、苦笑いを浮かべていた。
村の人達は、本当に温かい人達ばかりだ。そんな人達がいる村の危機に、私が尽力するのは当然のことなのである。
もっとも、その尽力の形は想定していたものとは随分と変わってしまった。本当はもっとこの村のためにお金を稼ぎたかった。もしも私が聖女補佐を続けていれば、村の人達にもっと楽をさせられたはずである。
「そういえば昨日、イルガルドから手紙が届いたよ」
「イルから? 確か出稼ぎに出ていると聞きましたが……」
「ああ、まあ出稼ぎといってもあいつは元々この村から出たいと思っていたようだけどね……それで今イルガルドは、王都にいるらしいんだ」
「王都……」
アムテルドさんの息子であるイルガルドがいる場所に、私は少し不安を覚えていた。
王都というと、渦中の場所である。そこに村の人がいるというのは、少々気が重い。
当然のことながら、サリーム様の計画を村の人には伝えていない。そもそも村と王都は遠いし、そこに行くことなんてないと思っていたのだが、どうやら私の考えは浅はかだったようである。
「よくわからないけれど、王都という場所の空気がイルガルドは苦手なみたいだ。全体的に張り詰めているというか、居心地が悪いらしい」
「居心地が悪い、ですか……」
「でもね、働いている所の店主さんが言うには、いつもはそんな風じゃないみたいなんだ。ラムーナは、この話を聞いてどう思う?」
「そうですね……別に王都は過ごしにくい雰囲気がある場所ではないと思いますが」
アムテルドさんの言葉を聞きながら、私は少し考えていた。
国王様とロメリア様の横暴によって、王都は乱れているのかもしれない。
もしくは、ウェルメノン公爵家の動きが関係しているのだろうか。サリーム様は事態が水面下で動いていると言っていたし、その影響が出ているのかもしれない。
ただどちらにしても、これはまずい状況だ。王都の動乱に、イルガルドが巻き込まれる可能性がある。
都会と呼ばれるような町から大きく離れた場所にあるこの村は、よく言えば静かでのどかだが、悪く言えば殺風景で活気がない。
ただ私は、この村のことは好きだった。皆優しい人達だし、この澄んだ空気は私を元気にさせてくれる。
「ラムーナ、助かったよ」
「お役に立てたなら何よりです」
私は現在、そんな村で生活を送っている。サリーム様に忠告されたことのもあって、大人しく村にいることにしたのだ。
とはいえ、村でゆっくり休むことはできない。不作のこともあるし、色々とやらなければならないことがあったからだ。
そもそもの話、このような都会から離れた村では皆協力して生きていくのが基本である。そのため私は、色々な人の手助けをしているのだ。
「それにしても、見事なものだね。魔法使いとしての才能は昔から知っていたけれど、見事なものだ」
「まあ、これでも一応優秀な魔法使いなんですよ」
「はは、まあ僕にとってはいつまでもあの頃の小さな女の子に思えてしまうけどね」
私を見ながら、アムテルドさんは懐かしそうに笑っていた。
この村の人達は、皆私のことを娘みたいに可愛がってくれている。それは私にとって、とても嬉しいことだ。
小さな頃に両親を亡くした私のことを、村の人達は皆で支えてくれた。私に魔法使いとしての才能があるとわかった時もそうだ。皆でお金を出し合って、私を王都に行かせてくれたのである。
「でも驚いたよ。まさかあれ程の大金を村に寄付してくれるなんてね……本当に良かったのかい? 自分のために使っても誰も文句は言わなかったと思うけれど」
「私はただ、今までの恩を返したというだけです」
「恩だなんて思わなくてもいいんだけどね。この村の者達は、皆家族なのだから。支え合うのは当然というものさ」
「それなら、私の行動も家族だからですよ。困っている家族を支えるのは当然のことでしょう?」
「……なるほど、確かにそれはそうかもしれないね。盲点だったよ」
アムテルドさんは、苦笑いを浮かべていた。
村の人達は、本当に温かい人達ばかりだ。そんな人達がいる村の危機に、私が尽力するのは当然のことなのである。
もっとも、その尽力の形は想定していたものとは随分と変わってしまった。本当はもっとこの村のためにお金を稼ぎたかった。もしも私が聖女補佐を続けていれば、村の人達にもっと楽をさせられたはずである。
「そういえば昨日、イルガルドから手紙が届いたよ」
「イルから? 確か出稼ぎに出ていると聞きましたが……」
「ああ、まあ出稼ぎといってもあいつは元々この村から出たいと思っていたようだけどね……それで今イルガルドは、王都にいるらしいんだ」
「王都……」
アムテルドさんの息子であるイルガルドがいる場所に、私は少し不安を覚えていた。
王都というと、渦中の場所である。そこに村の人がいるというのは、少々気が重い。
当然のことながら、サリーム様の計画を村の人には伝えていない。そもそも村と王都は遠いし、そこに行くことなんてないと思っていたのだが、どうやら私の考えは浅はかだったようである。
「よくわからないけれど、王都という場所の空気がイルガルドは苦手なみたいだ。全体的に張り詰めているというか、居心地が悪いらしい」
「居心地が悪い、ですか……」
「でもね、働いている所の店主さんが言うには、いつもはそんな風じゃないみたいなんだ。ラムーナは、この話を聞いてどう思う?」
「そうですね……別に王都は過ごしにくい雰囲気がある場所ではないと思いますが」
アムテルドさんの言葉を聞きながら、私は少し考えていた。
国王様とロメリア様の横暴によって、王都は乱れているのかもしれない。
もしくは、ウェルメノン公爵家の動きが関係しているのだろうか。サリーム様は事態が水面下で動いていると言っていたし、その影響が出ているのかもしれない。
ただどちらにしても、これはまずい状況だ。王都の動乱に、イルガルドが巻き込まれる可能性がある。
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