七光りのわがまま聖女を支えるのは疲れました。私はやめさせていただきます。

木山楽斗

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14.王城を訪ねて

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 宿屋で一夜を明かした後、私は王城を訪ねていた。
 忍び込むことも考えていたのだが、流石にそれはかなり難しいことであるので、とりあえずまずは正面から訪ねてみることにしたのだ。
 すると王城は、私のことをすんなりと受け入れてくれた。それが誰のおかげかはすぐにわかった。その人物が、私の前に現れたからだ。

「レムバル様、お久し振りです」
「ラムーナさん、お元気でしたか?」
「ええ、私は元気でした」

 久し振りに会ったレムバル様は、少し痩せていた。
 それは恐らく、色々とストレスがあったからなのだろう。この王都では様々なことが起こっている訳だし、王子である彼はかなり気を揉んでいるはずだ。

「えっと……とりあえず、王城に招いていただきありがとうございます。しかし、何故私が来るとはわかったのですか?」
「ああ、そのことですか……」

 私はすんなりと王城に入れたことにとても驚いていた。
 もう私は王城とは無関係であるはずなので、顔パスで入れるはずはない。もっと時間がかかると思っていたので、少しだけ混乱しているのだ。

「実の所、あなたがここに来るかもしれないとある人から伝えられていたのです」
「ある人?」
「ええ、サリームからです」
「サリーム様が……?」

 レムバル様が口にした意外な人物に、私は少し考えることになった。
 よく考えてみれば、私が気付いたような異変をサリーム様が気付かない訳がない。それを気付いた場合、どうするべきなのか彼女ならすぐにわかっただろう。
 ただサリーム様は、立場上動くことができない。そうやって前提を重ねていくと、段々と理解できてくる。

「なるほど、サリーム様は今回の件の解決を私に任せたということですか?」
「ええ、渋々ながらという感じでしたが……」
「彼女は私を気遣ってくれていましたから、そうなのでしょうね……」

 サリーム様は、私がここに必ず来ると思ってそれをレムバル様に伝えてくれたのだろう。
 自分では何できない以上、私に任せるしかない。彼女はそう判断したのだ。

「ただ、少しだけ驚きました。あなたが王都に来ているという情報がこちらには入って来ていませんから……」
「それは……」
「ああ、別に僕はそれを咎めようとは思っていませんからご安心ください。そもそも、この隔離体制がおかしいものである訳ですし」
「そうですか。それなら安心しました」

 恐らくレムバル様は、私が王都に入れるように取り計らってくれていただろう。
 それがわかっているなら、あんなに苦労して穴を掘る必要なんてなかったかもしれない。非合法な方法であった訳だし、まずは合法的な手段を試してからにすればよかった。

「しかしすごいですね。王都に忍び込むなんて……」
「え? ああ、それに関しては言いにくいのですが、簡単なことでした。何せ今は結界が弱まっていますから」
「ああ、そういう話でしたね……」

 私の言葉に、レムバル様は表情を切り替えた。
 その真剣な表情は、正に王子の表情だ。今回の事態が、この国を揺るがすことだと理解しているのだろう。

「この国に邪悪なものが近づいていると……」
「ええ、間違いなく結界が弱まっているせいです。とにかく結界を張り直す必要があると思います」
「なるほど、それなら早くした方が良さそうですね」

 レムバル様は、ゆっくりと頷いてくれた。
 彼の言う通り、できるだけ早く結界は張り直すべきだ。しかしながら、その前にレムバル様に聞いておかなければならないことがある。

「レムバル様は、サリーム様と親しくされているのですか?」
「え?」
「いえ、私が去る前は特に連絡がなかったと記憶していましたから……」
「……」

 私の質問に、レムバル様はまた表情を変えた。
 その考えるような表情に、私は理解する。彼が彼女とやり取りを交わしているということが、どういうことであるかということを。

「まあ、答えたくないことであるなら答えなくても大丈夫です」
「ラムーナさん、僕は……」
「とにかく今は、結界を張り直しましょう。私を例の部屋まで連れて行っていただけますか?」
「……ええ、それはもちろん」

 私はレムバル様に、必要以上に質問しないことにした。
 これ以上質問しても、彼を傷つけるだけだということがわかったからだ。
 だから私は、意識を切り替えた。私は私がやるべきことをやればいいだけである。レムバル様と家族の問題に、立ち入る必要なんてないのだろう。
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