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13.王都での再会
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私は、慎重に穴の中から周囲を見渡した。
どうやら、周りに人はいないようだ。これなら問題なく、外に出られるような気がする。
「……疲れた」
自分が出てきた穴を塞ぎながら、私は一言そう呟いた。
狭い地中の中を進んでいくというのは、体力的にも精神的にもきつかった。おかげで既にへとへとである。
既に夜であるため、どの道王城を訪ねることはできない。今日は宿屋に泊まって、明日行動するべきだろう。
「宿に……え?」
体についた土をある程度落として大通りに出ててきた私は、そこで見知った人物を発見して思わず上ずった声を出してしまった。
するとその直後、その人物がこちらを向く。そして彼は、驚いたような顔をした。それは当然の反応だ。私がここにいるなんて、彼からすれば訳がわからないだろう。
「ラムーナ……なのか? どうして王都に?」
「イル、元気そうで良かった」
私の目の前まで来てくれたイルガルドは、かなり困惑しているようだった。
しかし彼は元気そうではある。そのことに私は安心していた。
ただ落ち着く前に、まずは彼に事情を説明しなければならないだろう。そう思って、私は意識を切り替える。
「……実は、この王都で良くないことが起こっているんだ」
「良くないこと?」
「私は、それを止めるために王都に来たの」
「来たって、どうやって? 王都には限られた人しか入れないはずだが……」
「まあ、私はこれでも優秀な魔法使いだからね」
「……つまり、非合法的な方法で中に入ったということか」
私の言葉に、イルガルドは頭を抱えていた。
もちろん、私がしたことは褒められたことではない。ただそうしなければ王都に入れなかったのだから、それは仕方ないことである。
「まあ、そのことは置いておいて。どこか宿を知らない?」
「宿?」
「とりあえず一夜を越さないといけないからさ」
「それなら特に心配する必要はないな。今は、どこの宿も閑古鳥が鳴いているからな」
「そうなの?」
私に対して、イルガルドは困ったような表情を浮かべていた。
そこで私は思い出す。この王都が、今は封鎖されているということを。
「ああ、そうか。外から人が入って来られないということは、宿にはお客さんがいないっていうことになるんだね……」
「ああ、その通りだ。まあ、逆に言えば止まっている客は出て行けなくなっている訳だが、やはり新しい客が来ないことにはどうしようもない。そいつらは段々とお金を失っていく訳だからな……」
「なるほど、色々と大変なことになっているみたいだね……」
封鎖されることによって、王都はかなり混乱しているようだ。
それに関してもなんとかしたい所ではあるのだが、生憎私にその力はない。私にできるのは、この王都に迫っている危機を取り除くことだけだ。
「まあ、宿が空いているというなら私にとっては朗報かな? 適当な宿に泊まらせてもらうことにする」
「ああ、それはいいんだが……一体何をしに来たんだ?」
「その辺りのことは、ちょっと話しにくいかな……」
「……よくわからないが、何か起こっているということか」
私の曖昧な言葉に、イルガルドはため息をついた。
彼とは、同じ村で育った仲だ。そのため、今ので大体わかってくれたのだろう。
「気をつけろよ。お前に何かあったら、皆悲しむ」
「それは大丈夫だと思う……あ、イルは悲しんでくれないの?」
「当然俺だって悲しむさ」
「そっか。それなら、無事に帰って来ないとね?」
「……お前は変わっていないようだな」
そんな会話を交わした後、私はイルガルドの元から去って行く。
明日からは忙しくなるはずだ。今日はしっかりと休まなければならない。
どうやら、周りに人はいないようだ。これなら問題なく、外に出られるような気がする。
「……疲れた」
自分が出てきた穴を塞ぎながら、私は一言そう呟いた。
狭い地中の中を進んでいくというのは、体力的にも精神的にもきつかった。おかげで既にへとへとである。
既に夜であるため、どの道王城を訪ねることはできない。今日は宿屋に泊まって、明日行動するべきだろう。
「宿に……え?」
体についた土をある程度落として大通りに出ててきた私は、そこで見知った人物を発見して思わず上ずった声を出してしまった。
するとその直後、その人物がこちらを向く。そして彼は、驚いたような顔をした。それは当然の反応だ。私がここにいるなんて、彼からすれば訳がわからないだろう。
「ラムーナ……なのか? どうして王都に?」
「イル、元気そうで良かった」
私の目の前まで来てくれたイルガルドは、かなり困惑しているようだった。
しかし彼は元気そうではある。そのことに私は安心していた。
ただ落ち着く前に、まずは彼に事情を説明しなければならないだろう。そう思って、私は意識を切り替える。
「……実は、この王都で良くないことが起こっているんだ」
「良くないこと?」
「私は、それを止めるために王都に来たの」
「来たって、どうやって? 王都には限られた人しか入れないはずだが……」
「まあ、私はこれでも優秀な魔法使いだからね」
「……つまり、非合法的な方法で中に入ったということか」
私の言葉に、イルガルドは頭を抱えていた。
もちろん、私がしたことは褒められたことではない。ただそうしなければ王都に入れなかったのだから、それは仕方ないことである。
「まあ、そのことは置いておいて。どこか宿を知らない?」
「宿?」
「とりあえず一夜を越さないといけないからさ」
「それなら特に心配する必要はないな。今は、どこの宿も閑古鳥が鳴いているからな」
「そうなの?」
私に対して、イルガルドは困ったような表情を浮かべていた。
そこで私は思い出す。この王都が、今は封鎖されているということを。
「ああ、そうか。外から人が入って来られないということは、宿にはお客さんがいないっていうことになるんだね……」
「ああ、その通りだ。まあ、逆に言えば止まっている客は出て行けなくなっている訳だが、やはり新しい客が来ないことにはどうしようもない。そいつらは段々とお金を失っていく訳だからな……」
「なるほど、色々と大変なことになっているみたいだね……」
封鎖されることによって、王都はかなり混乱しているようだ。
それに関してもなんとかしたい所ではあるのだが、生憎私にその力はない。私にできるのは、この王都に迫っている危機を取り除くことだけだ。
「まあ、宿が空いているというなら私にとっては朗報かな? 適当な宿に泊まらせてもらうことにする」
「ああ、それはいいんだが……一体何をしに来たんだ?」
「その辺りのことは、ちょっと話しにくいかな……」
「……よくわからないが、何か起こっているということか」
私の曖昧な言葉に、イルガルドはため息をついた。
彼とは、同じ村で育った仲だ。そのため、今ので大体わかってくれたのだろう。
「気をつけろよ。お前に何かあったら、皆悲しむ」
「それは大丈夫だと思う……あ、イルは悲しんでくれないの?」
「当然俺だって悲しむさ」
「そっか。それなら、無事に帰って来ないとね?」
「……お前は変わっていないようだな」
そんな会話を交わした後、私はイルガルドの元から去って行く。
明日からは忙しくなるはずだ。今日はしっかりと休まなければならない。
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