旦那様の不手際は、私が頭を下げていたから許していただけていたことをご存知なかったのですか?

木山楽斗

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26.公表された事実(モブ視点)

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 ヴォンドラ伯爵家が隠し子を有していたという事実自体は、それ程重く受け止められた訳ではない。
 体裁的には悪いが、それでも取り返しのつかない悪評などにはならなかったはずである。それは貴族として、そこまで珍しいことでもないからだ。
 問題だったのは、それを公表したのが社交界でも名高いエルヴァイン公爵であり、また隠し子に対して暴行を働いていたということだろう。

「エルガドめ、なんということをっ……母上、どうしたらいいのですか?」
「そ、そんなことを私に聞かないで頂戴!」

 息子であるウルガドからの言葉に対して、レルーナはゆっくりと首を振った。
 自分達が追い詰められているということは、レルーナにもわかっている。そういった時の対処法も、心得ていない訳ではない。
 しかし、いくら考えても答えが出てこなかった。レルーナは冷静に考えて、自分達が無傷でいられないことを悟っていたのだ。

「こ、こんな主張は出まかせだと言えばいいのではありませんか。証拠なんて、どこにもない」
「あのエルヴァイン公爵が味方についた時点で、そんなことはできません。彼のことは、あなただってよく知っているでしょう。その影響力は絶大で、彼の言葉を嘘だと思う者なんてまずいない……」
「そ、そんな……」

 屋敷から出て行ったエルガドのことを、二人はもちろん捜索していた。
 彼の存在は、ヴォンドラ伯爵家にとって不利益だったからだ。
 だがそれでも、どこか楽観的な部分はあった。エルガドに自分達を揺るがす程のことができるなんて、思っていなかったのだ。

「エルヴァイン公爵は、どうしてこのようなことを……」
「考えられるのは、あの人よ。私の夫でありあなたの父であるあの男が、エルヴァイン公爵に何かしらの手紙を頼んでいたとしか考えられない」
「なっ、父上が……」
「忌々しい。あの人にとって大事なのは、私達ではなくあの妾の子だったというの……」

 レルーナは、自らの夫のことを思い出していた。
 既に亡くなった彼に後ろから刺されるなんて、彼女は考えていなかった。何より、彼が妾の子を取ったという事実に、彼女は屈辱を覚えたのだ。

「どうして、こんなことに……まさか、エルガドが言った通り、リメリアと離婚したことが全ての始まりだったとでもいうのか?」

 そんな母親を見ながら、ウルガドは茫然としていた。
 彼は思い返す。妻だったリメリアや、友だったファナトのことを。
 しかしいくら思い返しても、もう遅かった。彼が失ったものは、もう帰ってこないのである。
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