旦那様の不手際は、私が頭を下げていたから許していただけていたことをご存知なかったのですか?

木山楽斗

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34.迎えてくれたのは

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 私とバルハルド様は、ラプリードの家に戻って来ていた。
 そんな私達を迎えてくれたのは、エルガドだ。

「それで、バルハルド様の故郷はどのような所だったのですか?」
「とても良い所だったわ。空気も澄んでいて、それに皆大らかで……」
「別にそれ程特別な所という訳でもないのだがな」
「良い所であるということは否定されないのですね?」
「それは当然だ。故郷だからな」

 アキードの村の人達が開いてくれた宴会は、とても楽しいものだった。
 私のことも心から歓迎してくれていたみたいだし、本当に素敵な村であるとしか言いようがない。

「ここからそう遠くはない所なのですよね? 僕もいつか、行ってみましょうか……」
「そういうことなら、今日付いて来ればよかったのではないかしら?」
「いえ、流石にお二人の邪魔はできませんよ。レスティア商会でのお仕事もありましたし……」
「……それについて、聞かせてもらおうとしようか」

 エルガドの言葉に、バルハルド様は真剣な顔をした。
 今日、エルガドはレスティア商会の本拠点に赴いていた。彼はこれから、そこで働くことになる。その感触が、バルハルド様は気になっているのだろう。

「もちろん、まだ初日であるのだから、仕事というよりも説明ではあっただろうが、印象などを聞いておきたい」
「そうですね……まあ、簡単な仕事ではないと思いました。ですが皆さんとても親切で、正直とても良い職場であると思いました」
「……俺には色々と伝手がある。もしもお前が異なる仕事を望んでいるなら探すが」
「いいえ、レスティア商会で働かせてください」

 どうやらエルガドにとって、レスティア商会は好感触だったようだ。
 それなら何よりである。バルハルド様がトップの商会なら色々と融通も利くだろうし、複雑な立場であるエルガドにとっては、最良の職場であるだろう。

「無論、俺からすれば断る理由があるという訳ではない。お前には、それなりの知識があるようだしな……」
「はい、父上の厚意で軟禁中は本ばかり読んでいましたから、知識はあると思います。もっとも、それらの知識を使った経験などはありませんが」
「知識というものは、どこかしらで役に立つものだ。それを蓄えたお前のことを俺は価値があるものだと認識している」
「バルハルド様にそう思われていただけているのは、嬉しいです」

 エルガドは、バルハルド様の言葉に笑みを浮かべた。
 彼ならきっと、レスティア商会でも活躍するだろう。その笑顔に私は、そのようなことを思うのだった。
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