旦那様の不手際は、私が頭を下げていたから許していただけていたことをご存知なかったのですか?

木山楽斗

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50.これからも隣で

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 薬指にある指輪を見ながら、私は不思議な気持ちになっていた。
 以前につけていたものを見た時は、こんな気持ちにはならなかった。それはつまり、この二度目の結婚が私にとっては、幸せなものであることを意味している。

「リメリア嬢、どうかしたのか?」
「バルハルド様、すみません。少し感傷に浸っていました。この指輪を見ていると、なんだか心が安らいで」
「指輪か……確かに不思議なものだ。アクセサリーの類も身に着けたことはあるが、これはそれらとは違うものだな」

 引っ越しのための荷解きの最中に手を止めていたからか、バルハルド様が私の元にやって来た。
 理由を話すと、同じような思いを語ってくれたが、彼はすぐに表情を切り替える。それは作業がまだ終わっていないからだろう。

「しかしリメリア嬢、いつまでも感傷に浸っていてはいられない。思っていたよりも荷物が多いからな。このままでは寝る場所もままならない」
「そうですね。まあ、私の荷物が多すぎるというか……」
「いや、俺の荷物も大概だ」

 私とバルハルド様は、ラプリードの家で暮らすことにした。
 色々と話し合ったが、それが一番丸い形だと思ったのだ。

 私も彼も、家を継ぐような立場ではない訳だし、いつまでも貴族の屋敷にいられはしない。
 バルハルド様には仕事もある訳だし、こちらで暮らすのが一番良い形だ。それは正式に結婚する前から、思っていたことである。

「お兄様やお姉様には、こちらの家はそんなに広くないと言っておいたんですがね……」
「ファナトやクルメアなど、実際に来たことがある。だというのにこれだ。そもそもの話、生活に必要なものは揃っている故に、余計なものなどはいらないと言ったのだが……」
「結婚の祝いに、皆張り切っていたのでしょうね。まあ古くなっているものは変えた方がいいのかもしれませんし……」
「そうだな。しかし、家具などを出すのも一苦労だ」

 という訳で引っ越した訳なのだが、お互いの兄弟が張り切った結果、家の中が大変なことになっている。私は現実逃避して、感傷に浸っていたくらいだ。

「エルガドを呼ぶか。奴も欲しいものなどがあるかもしれない……いや、商会そのものに掛け合うか。欲しいものは持ち帰ってもらうとしよう。これは俺達だけは捌ききれん」
「ファナト様やクルメア様には申し訳ありませんが、そうした方が良いですね。このままでは本当に寝る場所にも困りそうですし……」

 ただ、これは一応嬉しい悲鳴だといえる。兄弟が結婚を祝福してくれているということなので、悲観することでもないだろう。
 事実として、私もバルハルド様も笑っている。今この瞬間も、私達にとっては楽しい時間なのだ。
 これからもその楽しい時間は、続いていくだろう。そんなことを思いながら、私は作業を再開するのだった。



END
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感想 3

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みんなの感想(3件)

shiori.s
2024.09.12 shiori.s

19話に英雄の祖先って書いてありますが子孫では?
勘違いでしたらすみません。

2024.09.13 木山楽斗

ご指摘ありがとうございます。
修正させていただきます。

解除
雪月花
2024.06.18 雪月花

申し訳、わけありません。 こちらに、何か違う作品の感想を書いてしまいました。
こちらの作品も楽しんで読んでいましたが、なんだか、伯爵家のざまぁ、が少し足らなかったような気がしてます。 主人公が幸せになれて、良かったです。

2024.06.19 木山楽斗

感想の誤爆についてはお気になさらないでください。
この作品で楽しんでいただけたなら嬉しいです。
ただ至らぬ点があったなら申し訳ありません。

解除
雪月花
2024.06.14 雪月花

お医者様が、人を殺してはダメだし、死んでく人に醜い言葉を投げるのも、ああ無情。 面白すぎます。
キモイ元旦那では、あるけど、あれが彼の愛のカタチなんでしょうね。 とうてい、理解できないけどね・

2024.06.15 木山楽斗

感想ありがとうございます。
この作品で楽しんでいただけているなら嬉しいです。

解除

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