王太子様には優秀な妹の方がお似合いですから、いつまでも私にこだわる必要なんてありませんよ?

木山楽斗

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18.愚かな人々(モブside)

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「お姉様が素晴らしい方であるということをわかっていない者が何と多いことか……私は嘆いています。この国の貴族達の愚かさを」
「む……」

 第二王子であるイーヴェルは、リルルナの言葉に唸っていた。
 彼も、彼女の言わんとしていることは理解できる。社交界では、落ちこぼれなどと言われているラルリアではあるが、そのようなことはないというのがイーヴェルの見解だ。
 むしろ彼は、彼女のことを尊敬している。ラルリアのように、素朴で優しい人柄の貴族は少ない。イーヴェルはそんな彼女の気質を、好いている。

「リルルナ、落ち着け」

 兄の声が聞こえてきて、イーヴェルは少し驚いた。
 あのアドルヴが、ラルリアに関する話を止めようとしている。それがイーヴェルには、信じられないことだったのだ。それは自分の役割だとさえ思っていた。

「貴族達が愚かなどという言葉は不適切だ」
「不適切?」

 続く言葉に、イーヴェルはさらに驚いている。
 まさかアドルヴが、貴族達を擁護するとは思っていなかった。彼がラルリアのことを悪く言うなんてことはあり得ない。むしろ、彼女を批判していた貴族達を口汚く糾弾していたくらいだ。
 心境に何かしらの変化でもあったということだろうか。イーヴェルの頭の中には、そのような考えが過ってきた。

「最早そのような言葉では言い表せない程に愚かだ。それ以上の言葉が欲しい所だ」
「……」

 イーヴェルは、自らの頭に過ってきた考えを抹消した。
 アドルヴにそのような心境な変化などはあり得ない。イーヴェルはそれを改めて認識していた。
 彼がラルリアのことを蔑ろにするようなことはないだろう。イーヴェルはわかりきっていたはずの結論をまた出すことになった。

「貴族達が愚かだとしても、そのような評価がされている以上、兄上とラルリア嬢との婚約は難しいものだと言えると思います」
「それはもちろんわかっている」
「ただ、バレリア公爵家との婚約自体は好意的に捉えられているとも考えられますね。その辺りは、リルルナ嬢の評価が関係しているでしょう」
「自分が優秀であることは自覚していますが、忌むべきことです」
「つまり我々は、各貴族達が納得する理由を作らなければならないということになります。例えば、ラルリア嬢の資質を示すこと。リルルナ嬢が不適切である理由を示すこと。方式は色々とあるでしょうね」

 イーヴェルは、二人に話しかけながら自分の中で整理をしていた。
 これからどうしていくべきか、考える必要があったのだ。兄とラルリアとの婚約が成立すること、その是非は置いておいて、彼はそれを成立させる方法を思案するのだった。
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