ですがそれは私には関係ないことですので

木山楽斗

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4.最後の訪問

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「いきなり提案してすまなかったね」
「いえ、お気になさらないでください。むしろ、バルカルト侯爵が私のことを気にかけてくれていることが、嬉しいくらいですから」

 私は、とある客室でバルカルト侯爵と話をしていた。
 彼とこうして二人きりで話すという機会は、思えば今までなかったかもしれない。大抵の場合、お父様かウルーグが一緒だったのだ。

「……しかし本当に時の流れというものは早いものだ。君がもう婚約なんて、少し驚いているよ」
「そうですかね? でも、バルカルト侯爵のご子息にもそういう話はあるのでしょう?」
「それはもちろんそうなのだがね。家には男子しかいないからだろうか。そういう話に対しては、安心が先に来る。ただ、君の場合は少々趣が異なる。心配なのだよ」

 バルカルト侯爵の言葉には、温かさがあった。
 本当に娘を見るような柔らかい視線が、私にとっては少しむず痒い。

 バルカルト侯爵は、私やウルーグに対して良くしてくれている。それは今までも、わかっていたことだ。
 実の父親が機能していないためか、私はそんなバルカルト侯爵に対して、ある種の父性を感じているのかもしれない。
 そう思えるくらい、私の心は温もりを覚えていた。

「御心配には及びません。婚約者であるニーベル伯爵家のリヴルム様は、紳士的な方ですから」
「ニーベル伯爵家のリヴルムか……その名前を聞くと、益々心配になってくるがね」
「それは……」

 リヴルム様の名前を聞いて、バルカルト侯爵は苦い顔をしていた。
 どうやら侯爵も、リヴルム様の過激な面を知っているらしい。
 なんというか、私も少し心配になってきた。本当に今回の婚約は大丈夫なのだろうか。

「……前々から思っていたことだが、エルボスは耄碌したか」
「……え?」
「いや、というよりも元々奴という男は落ちぶれていたということだろうか。何れにしろ、私の道は決まった」

 そこでバルカルト侯爵は、私のことを鋭い目で見てきた。
 その視線に、私は怯んでしまう。いつも穏やかな侯爵から考えると、信じられないくらい怖い目をしていたからだ。

「実の所、これを私は最後の訪問にしようと思っている」
「最後?」
「私はエルボスと袂を分かつつもりだ。奴の裏側が見えてきた……いや、直視出来てきたといった方が正しいだろうか。私は今までずっと見ないようにしてきたのだろうな」

 バルカルト侯爵の言葉に、私は固まっていた。
 まさか彼が、真実に気付いているなんて驚きである。
 流石に、人を見る目は確かということだろうか。盟友故に目をそらしていただけで、彼はお父様のことをよくわかっていたのだ。
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