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15.知識も技術も
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反射魔法の研究は、予定通り二つのチームに分かれて行うことになった。
魔法の精度を上げるチームと物体への付与を実現するチームの内、私は前者のチームに入ることになった。後者の方はある程度見通しが立っているらしく、より難しい前者にこの魔法の開発者である私が入るべきというのが、このチーム全体の見解だったからだ。
「さて、とりあえず今日はここまでだな……」
私達のチームをまとめているのは、ナルルグさんである。チーム全体のリーダーだった彼が、そのまままとめ役になった形だ。
一方で、あちらのチームはドナウさんがまとめている。ベテランの魔術師である彼が、やはりそういう立場になったらしい。
「……ラナトゥーリ嬢、大丈夫ですか?」
「あ、はい。大丈夫です」
業務が一区切りついてから、ナルルグさんは私の傍までやって来た。
現状、反射魔法を最も精度良く使えるのは私である。そのため自ずと私は魔法の実験をすることが多かった。
当然のことながら、魔法を使うととても疲れる。使い過ぎて体の中にある魔力が切れると、倒れてしまうこともあるくらいだ。だからナルルグさんは、私に声をかけてくれたのだろう。
「魔力はどれくらい残っているんですか?」
「六割くらいは残っています」
「六割ですか? それはすごいですね……」
私の言葉に、ナルルグさんは目を丸くして驚いていた。
勉強ばかりしてきた私は、試験のために魔法の鍛錬も欠かさなかった。その結果、そちらの方面も磨かれて、魔力も普通の人よりも多くなっている。
しかし、王城の魔術師団に入っている人達なら皆私と同じくらいの魔力はあるだろう。私の魔力は人よりも多いとはいえ、人並み外れているという訳ではない訳だし。
「話には聞いていましたが、ラナトゥーリ嬢は知識も技術もあるのですね」
「えっと……そうですね。試験のために、どちらも頑張りましたから。でも魔術師団に入っているような人達なら皆同じようなものではないんですか?」
「おっと、ラナトゥーリ嬢はその辺りについてはあまり詳しくないんですね?」
「え? あの……」
私の質問にまたも驚いたような反応をするナルルグさんに、私は少し困惑してしまった。
魔術師団は、王国の優れた魔術師達が集う組織である。だから皆知識も技術もある。そんな私の認識は、間違っていたのだろうか。
「確かに魔術師団には、ラナトゥーリ嬢と同じくらいの知識や技術を持った者は数多くいると思います。しかし、それが両立しているとは限らないのです」
「え? そうなんですか?」
「ええ、例えばこの魔法の研究の分野などでは実技よりも知識の方が重要になることが多いですから、技術がそれ程ではなくても問題がなかったりするんです。もちろん、それでも人並み以上であることは前提ですが」
「ああ、そうなんですね……」
ナルルグさんの言葉に、私は納得していた。
確かに魔術師団に所属していても、研究と実務では必要とされるものは変わってくる。知識と技術、どちらか片方が秀でているだけでもやってはいけるのだろう。
「俺やドナウさんなんかは、実技の面で優秀で採用されましたからね。本来なら、こっちよりも実務の方が向いているような気もするんですけど……」
「え? それなら、どうしてこちらに?」
「ラナトゥーリ嬢、申し訳ないが少し近づいてもらえますか?」
「それは……はい」
私の質問に対して、ナルルグさんは周囲を見渡していた。
つまり、彼がこちらに配属された理由は人に聞かれたくないものなのだろう。そうだとすると益々気になってしまったので、私は言われた通り耳を近づける。
「まあ、端的に言ってしまえばまとめ役が欲しかったみたいですね」
「まとめ役?」
「研究の方に配属されている魔術師はですね。結構マイペースな人が多いんですよ。自分の世界に入りがちで、あまり周囲のことを気にしない。まあそうやって集中力が高い訳ですから、研究には向いている人達が集まっているといえるでしょう。ただ開発となる少し話は変わってくる」
「まあ、それはそうですね……」
「俺とドナウさんは、リーダーシップを評価されたということなんだと思います」
「なるほど……」
ナルルグさんの言葉に、私は彼やドナウさんがどうしてまとめ役となっているのかを理解することができた。
単純にそれが二人に与えられた役割だったからこなしていた。それだけのことだったようである。
確かに二人は良きまとめ役ではあると思う。それは今までの言動から理解できる。
「まあ、俺達は開発担当という方がしっくりくるかもしれませんね……あ、でも俺もドナウさんもこう見えて結構知識はある方なんですよ?」
「優秀なんですね」
「……それはなんというか、頷きにくいですね」
私の言葉に、ナルルグさんは苦い顔をした。
でも言ったことは本当である。ナルルグさんもドナウさんも、優秀な魔術師であることは間違いない。
魔法の精度を上げるチームと物体への付与を実現するチームの内、私は前者のチームに入ることになった。後者の方はある程度見通しが立っているらしく、より難しい前者にこの魔法の開発者である私が入るべきというのが、このチーム全体の見解だったからだ。
「さて、とりあえず今日はここまでだな……」
私達のチームをまとめているのは、ナルルグさんである。チーム全体のリーダーだった彼が、そのまままとめ役になった形だ。
一方で、あちらのチームはドナウさんがまとめている。ベテランの魔術師である彼が、やはりそういう立場になったらしい。
「……ラナトゥーリ嬢、大丈夫ですか?」
「あ、はい。大丈夫です」
業務が一区切りついてから、ナルルグさんは私の傍までやって来た。
現状、反射魔法を最も精度良く使えるのは私である。そのため自ずと私は魔法の実験をすることが多かった。
当然のことながら、魔法を使うととても疲れる。使い過ぎて体の中にある魔力が切れると、倒れてしまうこともあるくらいだ。だからナルルグさんは、私に声をかけてくれたのだろう。
「魔力はどれくらい残っているんですか?」
「六割くらいは残っています」
「六割ですか? それはすごいですね……」
私の言葉に、ナルルグさんは目を丸くして驚いていた。
勉強ばかりしてきた私は、試験のために魔法の鍛錬も欠かさなかった。その結果、そちらの方面も磨かれて、魔力も普通の人よりも多くなっている。
しかし、王城の魔術師団に入っている人達なら皆私と同じくらいの魔力はあるだろう。私の魔力は人よりも多いとはいえ、人並み外れているという訳ではない訳だし。
「話には聞いていましたが、ラナトゥーリ嬢は知識も技術もあるのですね」
「えっと……そうですね。試験のために、どちらも頑張りましたから。でも魔術師団に入っているような人達なら皆同じようなものではないんですか?」
「おっと、ラナトゥーリ嬢はその辺りについてはあまり詳しくないんですね?」
「え? あの……」
私の質問にまたも驚いたような反応をするナルルグさんに、私は少し困惑してしまった。
魔術師団は、王国の優れた魔術師達が集う組織である。だから皆知識も技術もある。そんな私の認識は、間違っていたのだろうか。
「確かに魔術師団には、ラナトゥーリ嬢と同じくらいの知識や技術を持った者は数多くいると思います。しかし、それが両立しているとは限らないのです」
「え? そうなんですか?」
「ええ、例えばこの魔法の研究の分野などでは実技よりも知識の方が重要になることが多いですから、技術がそれ程ではなくても問題がなかったりするんです。もちろん、それでも人並み以上であることは前提ですが」
「ああ、そうなんですね……」
ナルルグさんの言葉に、私は納得していた。
確かに魔術師団に所属していても、研究と実務では必要とされるものは変わってくる。知識と技術、どちらか片方が秀でているだけでもやってはいけるのだろう。
「俺やドナウさんなんかは、実技の面で優秀で採用されましたからね。本来なら、こっちよりも実務の方が向いているような気もするんですけど……」
「え? それなら、どうしてこちらに?」
「ラナトゥーリ嬢、申し訳ないが少し近づいてもらえますか?」
「それは……はい」
私の質問に対して、ナルルグさんは周囲を見渡していた。
つまり、彼がこちらに配属された理由は人に聞かれたくないものなのだろう。そうだとすると益々気になってしまったので、私は言われた通り耳を近づける。
「まあ、端的に言ってしまえばまとめ役が欲しかったみたいですね」
「まとめ役?」
「研究の方に配属されている魔術師はですね。結構マイペースな人が多いんですよ。自分の世界に入りがちで、あまり周囲のことを気にしない。まあそうやって集中力が高い訳ですから、研究には向いている人達が集まっているといえるでしょう。ただ開発となる少し話は変わってくる」
「まあ、それはそうですね……」
「俺とドナウさんは、リーダーシップを評価されたということなんだと思います」
「なるほど……」
ナルルグさんの言葉に、私は彼やドナウさんがどうしてまとめ役となっているのかを理解することができた。
単純にそれが二人に与えられた役割だったからこなしていた。それだけのことだったようである。
確かに二人は良きまとめ役ではあると思う。それは今までの言動から理解できる。
「まあ、俺達は開発担当という方がしっくりくるかもしれませんね……あ、でも俺もドナウさんもこう見えて結構知識はある方なんですよ?」
「優秀なんですね」
「……それはなんというか、頷きにくいですね」
私の言葉に、ナルルグさんは苦い顔をした。
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