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私とリルガー様は、数名の兵士とともに隠し通路を進んでいた。
やがて、私達は開けた場所に辿り着いた。そこには、よく知っている人物がいる。
「国王様……」
「む……もう来たか」
開けた場所には、たくさんの人がいた。もっとも、国王様を除いたその人々は地面に倒れており、動かない。
その人物達は、皆老けている。これは、禁忌の魔法を使ったカーテナ様と同じ状態だ。
「レパイア王よ。あなたはもう終わりだ。この王国の貴族達も、既にこちら側についている。あなたに勝ち目はない」
「勝ち目はない? それは、どうかな?」
「何?」
リルガー様の言葉に、国王様は笑っていた。
その余裕そうな笑みは、この状況だけを考えると意味がわからない。
だが、彼が禁忌の魔法を使ったというなら、わからない訳ではない。
彼は、何か手を持っている。禁忌の魔法によって、何かを引き起こしているのだ。
「私は、既に人間を越えている。この姿を見るがいい」
「なっ……」
言葉とともに、国王様の体は姿を変えていった。
体は大きくなり、肌は青く変色していく。背中からは翼が生え、頭から角が生えている。
その異形の姿は、人間からかけ離れていた。これも、禁忌の魔法によるものなのだろう。
「その姿は……」
「力が漲る……この力さえあれば、世界を手にすることだってできる。私は、無敵の存在になったのだ」
「このために、時間を稼いでいたというのか?」
「ふん、全ては囮よ! この私が、最強の体を作るための捨て駒だったのだ!」
国王様の言葉とともに、隠し通路全体が揺れ始めた。
強い魔力を感じる。これが、禁忌の魔法を行使して作られた国王様の力なのだ。
「このまま、生き埋めになるがいい!」
「なっ……」
国王様は、魔法によって天井に穴を開けた。
自身はそこから脱出し、私達はこの隠し通路に生き埋めにするつもりのようだ。
当然のことではあるが、国王様の周りにいる人々もそれに巻き込まれる。自身の親族すらも、彼は犠牲にしようとしているのだ。
「まずい、全員退避を!」
「それでは、間に合いません!」
「イルアナ様!? 何を!?」
私は、魔力を集中させて、一気に解き放つ。
辺りは、私の魔法の光に包まれていく。
「こ、ここは……」
「魔法によって、全員を転移させました。ここは、レパイア王国の王都です」
「そうでしたか。ありがとうございます、おかげで助かりました」
私は、魔法によって地下にいた人々を地上に連れ出したのだ。
これで、なんとか命拾いした。だが、問題はまだある。
「あれは……」
「ええ、国王様ですね……」
王都の上空には、一人の男がいた。
異形の姿になった国王様は、笑みを浮かべながら、地上を見つめている。
こうして、私達は新たな脅威に晒されることになるのだった。
やがて、私達は開けた場所に辿り着いた。そこには、よく知っている人物がいる。
「国王様……」
「む……もう来たか」
開けた場所には、たくさんの人がいた。もっとも、国王様を除いたその人々は地面に倒れており、動かない。
その人物達は、皆老けている。これは、禁忌の魔法を使ったカーテナ様と同じ状態だ。
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「勝ち目はない? それは、どうかな?」
「何?」
リルガー様の言葉に、国王様は笑っていた。
その余裕そうな笑みは、この状況だけを考えると意味がわからない。
だが、彼が禁忌の魔法を使ったというなら、わからない訳ではない。
彼は、何か手を持っている。禁忌の魔法によって、何かを引き起こしているのだ。
「私は、既に人間を越えている。この姿を見るがいい」
「なっ……」
言葉とともに、国王様の体は姿を変えていった。
体は大きくなり、肌は青く変色していく。背中からは翼が生え、頭から角が生えている。
その異形の姿は、人間からかけ離れていた。これも、禁忌の魔法によるものなのだろう。
「その姿は……」
「力が漲る……この力さえあれば、世界を手にすることだってできる。私は、無敵の存在になったのだ」
「このために、時間を稼いでいたというのか?」
「ふん、全ては囮よ! この私が、最強の体を作るための捨て駒だったのだ!」
国王様の言葉とともに、隠し通路全体が揺れ始めた。
強い魔力を感じる。これが、禁忌の魔法を行使して作られた国王様の力なのだ。
「このまま、生き埋めになるがいい!」
「なっ……」
国王様は、魔法によって天井に穴を開けた。
自身はそこから脱出し、私達はこの隠し通路に生き埋めにするつもりのようだ。
当然のことではあるが、国王様の周りにいる人々もそれに巻き込まれる。自身の親族すらも、彼は犠牲にしようとしているのだ。
「まずい、全員退避を!」
「それでは、間に合いません!」
「イルアナ様!? 何を!?」
私は、魔力を集中させて、一気に解き放つ。
辺りは、私の魔法の光に包まれていく。
「こ、ここは……」
「魔法によって、全員を転移させました。ここは、レパイア王国の王都です」
「そうでしたか。ありがとうございます、おかげで助かりました」
私は、魔法によって地下にいた人々を地上に連れ出したのだ。
これで、なんとか命拾いした。だが、問題はまだある。
「あれは……」
「ええ、国王様ですね……」
王都の上空には、一人の男がいた。
異形の姿になった国王様は、笑みを浮かべながら、地上を見つめている。
こうして、私達は新たな脅威に晒されることになるのだった。
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