43 / 43
43
しおりを挟む
私は、リルガー様とともにかつてレパイア王国の王都だった場所に来ていた。
王城だった場所から見える町は、ある程度の活気を取り戻している。エルグレンド王国の一都市となったこの町には、平和な時間が流れているといえるだろう。
「いい風が吹いていますね……」
「リルガー様……」
「やはり、故郷の町が賑やかになっているのは嬉しいですか?」
「……ええ」
町を見下ろしている私に、リルガー様が話しかけてきた。
この町が活気を取り戻したのは、彼のおかげだ。王族としてこの領地を治める彼が良き領主だったからこそ、この町は平和な時間を取り戻したのである。
「リルガー様、ありがとうございます。あなたのおかげで、レパイア王国だった国に暮らしていた人々の生活は守られています」
「いえ、僕は感謝されるようなことをしていません。それが兄上の方針だったから、そうしたまでです」
「そんなことはありません。リルガー様でなければ、これは成し遂げられなかったことだと思います」
リルガー様は否定したが、彼の力なしでは人々の生活は元に戻らなかっただろう。
その優しく真摯な人柄が伝わったからこそ、人々は安心して生活できているのだ。
「……それに、僕が頑張ったのは、下心からでもあります」
「え?」
「あなたが喜んでくれるから、頑張ったのです。だから、あまり褒められることではありません」
リルガー様は、少し顔を赤くしながらそのようなことを言ってきた。
そんなことを言われると、こちらも恥ずかしくなってしまう。
ただ、嬉しかった。そう言ってもらえるのは、妻として喜ばしいことなのである。
「さて、体が冷えてしまったたらいけません。そろそろ戻りましょうか。」
「……心配性ですね」
「心配にもなりますよ」
リルガー様に差し出された手を、私はゆっくりと掴む。
彼の温もりが、その手から伝わってくる。この温もりが、私を導いてくれるのだ。
「リルガー様……これからも、よろしくお願いします」
「え? なんですか? 急に改まって……」
「いえ、改めて言っておこうと思ったのです。町の様子を見て、これからの私達のことを考えて……そう思ったのです」
「……そうですか」
そこで、私はリルガー様に改めて挨拶することにした。
色々と考えて、そうしておくべきだと思ったのである。
「イルアナさん、任せてください。これからも、僕があなたを……このかつてレパイア王国だった場所を導いてきます」
「ええ……ありがとうございます」
私の言葉に、リルガー様はしっかりと答えてくれた。
きっと、彼と一緒なら大丈夫だ。そう思いながら、私はリルガー様と歩いて行くのだった。
王城だった場所から見える町は、ある程度の活気を取り戻している。エルグレンド王国の一都市となったこの町には、平和な時間が流れているといえるだろう。
「いい風が吹いていますね……」
「リルガー様……」
「やはり、故郷の町が賑やかになっているのは嬉しいですか?」
「……ええ」
町を見下ろしている私に、リルガー様が話しかけてきた。
この町が活気を取り戻したのは、彼のおかげだ。王族としてこの領地を治める彼が良き領主だったからこそ、この町は平和な時間を取り戻したのである。
「リルガー様、ありがとうございます。あなたのおかげで、レパイア王国だった国に暮らしていた人々の生活は守られています」
「いえ、僕は感謝されるようなことをしていません。それが兄上の方針だったから、そうしたまでです」
「そんなことはありません。リルガー様でなければ、これは成し遂げられなかったことだと思います」
リルガー様は否定したが、彼の力なしでは人々の生活は元に戻らなかっただろう。
その優しく真摯な人柄が伝わったからこそ、人々は安心して生活できているのだ。
「……それに、僕が頑張ったのは、下心からでもあります」
「え?」
「あなたが喜んでくれるから、頑張ったのです。だから、あまり褒められることではありません」
リルガー様は、少し顔を赤くしながらそのようなことを言ってきた。
そんなことを言われると、こちらも恥ずかしくなってしまう。
ただ、嬉しかった。そう言ってもらえるのは、妻として喜ばしいことなのである。
「さて、体が冷えてしまったたらいけません。そろそろ戻りましょうか。」
「……心配性ですね」
「心配にもなりますよ」
リルガー様に差し出された手を、私はゆっくりと掴む。
彼の温もりが、その手から伝わってくる。この温もりが、私を導いてくれるのだ。
「リルガー様……これからも、よろしくお願いします」
「え? なんですか? 急に改まって……」
「いえ、改めて言っておこうと思ったのです。町の様子を見て、これからの私達のことを考えて……そう思ったのです」
「……そうですか」
そこで、私はリルガー様に改めて挨拶することにした。
色々と考えて、そうしておくべきだと思ったのである。
「イルアナさん、任せてください。これからも、僕があなたを……このかつてレパイア王国だった場所を導いてきます」
「ええ……ありがとうございます」
私の言葉に、リルガー様はしっかりと答えてくれた。
きっと、彼と一緒なら大丈夫だ。そう思いながら、私はリルガー様と歩いて行くのだった。
50
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(74件)
あなたにおすすめの小説
聖女を騙った罪で追放されそうなので、聖女の真の力を教えて差し上げます
香木陽灯
恋愛
公爵令嬢フローラ・クレマンは、首筋に聖女の証である薔薇の痣がある。それを知っているのは、家族と親友のミシェルだけ。
どうして自分なのか、やりたい人がやれば良いのにと、何度思ったことか。だからミシェルに相談したの。
「私は聖女になりたくてたまらないのに!」
ミシェルに言われたあの日から、私とミシェルの二人で一人の聖女として生きてきた。
けれど、私と第一王子の婚約が決まってからミシェルとは連絡が取れなくなってしまった。
ミシェル、大丈夫かしら?私が力を使わないと、彼女は聖女として振る舞えないのに……
なんて心配していたのに。
「フローラ・クレマン!聖女の名を騙った罪で、貴様を国外追放に処す。いくら貴様が僕の婚約者だったからと言って、許すわけにはいかない。我が国の聖女は、ミシェルただ一人だ」
第一王子とミシェルに、偽の聖女を騙った罪で断罪させそうになってしまった。
本気で私を追放したいのね……でしたら私も本気を出しましょう。聖女の真の力を教えて差し上げます。
【完結】大聖女は無能と蔑まれて追放される〜殿下、1%まで力を封じよと命令したことをお忘れですか?隣国の王子と婚約しましたので、もう戻りません
冬月光輝
恋愛
「稀代の大聖女が聞いて呆れる。フィアナ・イースフィル、君はこの国の聖女に相応しくない。職務怠慢の罪は重い。無能者には国を出ていってもらう。当然、君との婚約は破棄する」
アウゼルム王国の第二王子ユリアンは聖女フィアナに婚約破棄と国家追放の刑を言い渡す。
フィアナは侯爵家の令嬢だったが、両親を亡くしてからは教会に預けられて類稀なる魔法の才能を開花させて、その力は大聖女級だと教皇からお墨付きを貰うほどだった。
そんな彼女は無能者だと追放されるのは不満だった。
なぜなら――
「君が力を振るうと他国に狙われるし、それから守るための予算を割くのも勿体ない。明日からは能力を1%に抑えて出来るだけ働くな」
何を隠そう。フィアナに力を封印しろと命じたのはユリアンだったのだ。
彼はジェーンという国一番の美貌を持つ魔女に夢中になり、婚約者であるフィアナが邪魔になった。そして、自らが命じたことも忘れて彼女を糾弾したのである。
国家追放されてもフィアナは全く不自由しなかった。
「君の父親は命の恩人なんだ。私と婚約してその力を我が国の繁栄のために存分に振るってほしい」
隣国の王子、ローレンスは追放されたフィアナをすぐさま迎え入れ、彼女と婚約する。
一方、大聖女級の力を持つといわれる彼女を手放したことがバレてユリアンは国王陛下から大叱責を食らうことになっていた。
(完結)お荷物聖女と言われ追放されましたが、真のお荷物は追放した王太子達だったようです
しまうま弁当
恋愛
伯爵令嬢のアニア・パルシスは婚約者であるバイル王太子に突然婚約破棄を宣言されてしまうのでした。
さらにはアニアの心の拠り所である、聖女の地位まで奪われてしまうのでした。
訳が分からないアニアはバイルに婚約破棄の理由を尋ねましたが、ひどい言葉を浴びせつけられるのでした。
「アニア!お前が聖女だから仕方なく婚約してただけだ。そうでなけりゃ誰がお前みたいな年増女と婚約なんかするか!!」と。
アニアの弁明を一切聞かずに、バイル王太子はアニアをお荷物聖女と決めつけて婚約破棄と追放をさっさと決めてしまうのでした。
挙句の果てにリゼラとのイチャイチャぶりをアニアに見せつけるのでした。
アニアは妹のリゼラに助けを求めましたが、リゼラからはとんでもない言葉が返ってきたのでした。
リゼラこそがアニアの追放を企てた首謀者だったのでした。
アニアはリゼラの自分への悪意を目の当たりにして愕然しますが、リゼラは大喜びでアニアの追放を見送るのでした。
信じていた人達に裏切られたアニアは、絶望して当てもなく宿屋生活を始めるのでした。
そんな時運命を変える人物に再会するのでした。
それはかつて同じクラスで一緒に学んでいた学友のクライン・ユーゲントでした。
一方のバイル王太子達はアニアの追放を喜んでいましたが、すぐにアニアがどれほどの貢献をしていたかを目の当たりにして自分達こそがお荷物であることを思い知らされるのでした。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
全25話執筆済み 完結しました
「犯人は追放!」無実の彼女は国に絶対に必要な能力者で“価値の高い女性”だった
佐藤 美奈
恋愛
セリーヌ・エレガント公爵令嬢とフレッド・ユーステルム王太子殿下は婚約成立を祝した。
その数週間後、ヴァレンティノ王立学園50周年の創立記念パーティー会場で、信じられない事態が起こった。
フレッド殿下がセリーヌ令嬢に婚約破棄を宣言した。様々な分野で活躍する著名な招待客たちは、激しい動揺と衝撃を受けてざわつき始めて、人々の目が一斉に注がれる。
フレッドの横にはステファニー男爵令嬢がいた。二人は恋人のような雰囲気を醸し出す。ステファニーは少し前に正式に聖女に選ばれた女性であった。
ステファニーの策略でセリーヌは罪を被せられてしまう。信じていた幼馴染のアランからも冷たい視線を向けられる。
セリーヌはいわれのない無実の罪で国を追放された。悔しくてたまりませんでした。だが彼女には秘められた能力があって、それは聖女の力をはるかに上回るものであった。
彼女はヴァレンティノ王国にとって絶対的に必要で貴重な女性でした。セリーヌがいなくなるとステファニーは聖女の力を失って、国は急速に衰退へと向かう事となる……。
侯爵令嬢セリーナ・マクギリウスは冷徹な鬼公爵に溺愛される。 わたくしが古の大聖女の生まれ変わり? そんなの聞いてません!!
友坂 悠
恋愛
「セリーナ・マクギリウス。貴女の魔法省への入省を許可します」
婚約破棄され修道院に入れられかけたあたしがなんとか採用されたのは国家の魔法を一手に司る魔法省。
そこであたしの前に現れたのは冷徹公爵と噂のオルファリド・グラキエスト様でした。
「君はバカか?」
あたしの話を聞いてくれた彼は開口一番そうのたまって。
ってちょっと待って。
いくらなんでもそれは言い過ぎじゃないですか!!?
⭐︎⭐︎⭐︎
「セリーナ嬢、君のこれまでの悪行、これ以上は見過ごすことはできない!」
貴族院の卒業記念パーティの会場で、茶番は起きました。
あたしの婚約者であったコーネリアス殿下。会場の真ん中をスタスタと進みあたしの前に立つと、彼はそう言い放ったのです。
「レミリア・マーベル男爵令嬢に対する数々の陰湿ないじめ。とても君は国母となるに相応しいとは思えない!」
「私、コーネリアス・ライネックの名においてここに宣言する! セリーナ・マクギリウス侯爵令嬢との婚約を破棄することを!!」
と、声を張り上げたのです。
「殿下! 待ってください! わたくしには何がなんだか。身に覚えがありません!」
周囲を見渡してみると、今まで仲良くしてくれていたはずのお友達たちも、良くしてくれていたコーネリアス殿下のお付きの人たちも、仲が良かった従兄弟のマクリアンまでもが殿下の横に立ち、あたしに非難めいた視線を送ってきているのに気がついて。
「言い逃れなど見苦しい! 証拠があるのだ。そして、ここにいる皆がそう証言をしているのだぞ!」
え?
どういうこと?
二人っきりの時に嫌味を言っただの、お茶会の場で彼女のドレスに飲み物をわざとかけただの。
彼女の私物を隠しただの、人を使って階段の踊り場から彼女を突き落とそうとしただの。
とそんな濡れ衣を着せられたあたし。
漂う黒い陰湿な気配。
そんな黒いもやが見え。
ふんわり歩いてきて殿下の横に縋り付くようにくっついて、そしてこちらを見て笑うレミリア。
「私は真実の愛を見つけた。これからはこのレミリア嬢と添い遂げてゆこうと思う」
あたしのことなんかもう忘れたかのようにレミリアに微笑むコーネリアス殿下。
背中にじっとりとつめたいものが走り、尋常でない様子に気分が悪くなったあたし。
ほんと、この先どうなっちゃうの?
【完結】婚約破棄と追放された聖女は、国を出て新国家を作っていきます〜セッカチな殿下の身勝手な行動で国は崩壊しますが、もう遅いです〜
よどら文鳥
恋愛
「聖女レレーナよ、婚約破棄の上、国から追放する」
デイルムーニ王国のために政略結婚しようと言ってきた相手が怒鳴ってくる。
「聖女と言いながら未だに何も役に立っていない奴など結婚する価値などない」
婚約が決まった後に顔合わせをしたわけだが、ドックス殿下は、セッカチで頭の中もお花畑だということに気がつかされた。
今回の婚約破棄も、現在他国へ出張中の国王陛下には告げず、己の考えだけで一方的に言っていることなのだろう。
それにドックス殿下は肝心なことを忘れている。
「婚約破棄され国を出るように命令されたことは、お父様に告げることになります。そうなると──」
「そういう話はいらんいらん! そうやって私を脅そうとしているだけだ」
次期国王になろうとしているくせに、お父様がどれだけ国に納税しているか知らないのか。
話を全く聞かない殿下に呆れ、婚約破棄をあっさりと承認して追放されることにした。
お父様に告げると、一緒に国を出て新国家を創り出そうと言われてしまう。
賛同する者も多く、最初から大勢の人たちと共に移民が始まった。
※タイトルに【ざまぁ】と書いてあるお話は、ざまぁパートへの視点変更となります。必ずざまぁされるわけではありませんのでご了承ください。
前世の記憶を持つ守護聖女は婚約破棄されました。
さざれ石みだれ
恋愛
「カテリーナ。お前との婚約を破棄する!」
王子殿下に婚約破棄を突きつけられたのは、伯爵家次女、薄幸のカテリーナ。
前世で伝説の聖女であった彼女は、王都に対する闇の軍団の攻撃を防いでいた。
侵入しようとする悪霊は、聖女の力によって浄化されているのだ。
王国にとってなくてはならない存在のカテリーナであったが、とある理由で正体を明かすことができない。
政略的に決められた結婚にも納得し、静かに守護の祈りを捧げる日々を送っていたのだ。
ところが、王子殿下は婚約破棄したその場で巷で聖女と噂される女性、シャイナを侍らせ婚約を宣言する。
カテリーナは婚約者にふさわしくなく、本物の聖女であるシャイナが正に王家の正室として適格だと口にしたのだ。
辺境伯聖女は城から追い出される~もう王子もこの国もどうでもいいわ~
サイコちゃん
恋愛
聖女エイリスは結界しか張れないため、辺境伯として国境沿いの城に住んでいた。しかし突如王子がやってきて、ある少女と勝負をしろという。その少女はエイリスとは違い、聖女の資質全てを備えていた。もし負けたら聖女の立場と爵位を剥奪すると言うが……あることが切欠で全力を発揮できるようになっていたエイリスはわざと負けることする。そして国は真の聖女を失う――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
何というか、現実の突きつけ方が稚拙ですね。
出てくる地位のある者たちがみんな利己的であり身勝手で、言葉の選択が下手な印象です。
主人公のような人間は使いやすい駒でしょうね。
感想ありがとうございます。
確かに、そうかもしれません。
穏やかなエンディング、いいですねぇ☺
感想ありがとうございます。
楽しんでいただけたなら、幸いです。
更新ありがとうございます & 完結お疲れ様です。
読後感すごくいいハッピーエンドです。最高です!
感想ありがとうございます。
楽しんでいただけたなら、幸いです。