身分違いの恋に燃えていると婚約破棄したではありませんか。没落したから助けて欲しいなんて言わないでください。

木山楽斗

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5.報告と疑念

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「なるほど、そんなことがあったのか……」
「ええ……」

 オンラルト侯爵家に帰って来た私は、お父様にアルガール侯爵家であったことを伝えた。
 お父様は、悲しそうな表情をしている。それは恐らく、アルガール侯爵のことを考えているからだろう。
 二人は親友である。その親友がもう長くはない。それは、お父様にとっては悲しいことであるはずだ。

「ふむ……まあ、婚約破棄に関しては、実の所既に手紙が届いていた。お前がここを出てから、すぐのことだった。丁度、入れ違いになったようだな」
「ああ、アルガール侯爵はランドラ様の事情を知っていた訳ですし、そうなりますか」
「当然私も驚いたが、結局ランドラ君が意見を変えないというなら、もう仕方ないと思うしかないだろう。彼とのことは忘れて、次のことを考えるか」

 お父様は、既に侯爵の顔に戻っていた。
 悲しむのはやめて、現状の問題に対処するつもりなのだろう。

「アルガール侯爵から提案されたラーゼル公爵家との縁談はどうでしょうか?」
「ふむ……無論、もしも婚約することができればありがたい話ではある。とはいえ、バルギードという人物が気難しい人物であるというのは、中々気になる情報だ。婚約が決まらず公爵が悩んでいるというなら、それはつまり彼が断っているということになる。問題がある人物なのではないか?」
「確かに情報だけならそう考えることもできると思います。ですが、これを提案したのはアルガール侯爵ですから、それ程問題はないのではありませんか?」
「まあ、彼は信頼できる人物ではある。ただ、彼がどこまでバルギードのことを知っているかはわからない」
「まあ、それはそうですね……」

 お父様は、バルギード様のことが気になっているようだ。
 それは当たり前のことだろう。話の内容だけ聞くと、彼は結構危ない人物のように思える。

「お父様も、何度か会ったことはありますよね」
「外面は悪くなかったと記憶している。丁寧な対応をしていたような気がする。だが、それは表面上のことかもしれない」
「……結局の所、会ってみなければわからないということではないでしょうか?」
「ふむ……」

 お父様は、それなりに悩んでいた。
 怪しい公爵令息と私が会うことを心配しているのだろう。
 実際、バルギード様はどのような人なのだろうか。婚約が中々決まらない。そこには一体どのような理由があるというのだろうか。

「まあ、あまり心配しなくてもいいと思いますよ。流石に、表立って何かするような人であるなら、噂くらいにはなっているでしょうし」
「そうだといいのだが……」
「とにかく、私は彼に会ってみようと思います。どの道、それ以外にやることがあるという訳でもありませんし」
「……仕方ないか」

 結局、お父様は私の言葉にゆっくりと頷いた。
 立派な貴族ではあるが、娘にはそれなりに甘い。そんなお父様の優しさに、私は思わず笑みを浮かべるのだった。
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