刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。繁栄も滅亡も、私の導き次第で決まるようです。

木山楽斗

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82.騎士団襲来④

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「さて……」
「うん……」

 私もリルフも、すぐに気づいた。誰かが、私達に近づいて来る。
 状況から考えて、来たのは敵だろう。つまり、騎士が来たはずである。

「お取込み中、申し訳ないんだが……お邪魔させてもらってもいいだろうか」
「……少し場所を変えないかな? あなたが誇り騎士であるというなら、そうしてもらいたいんだけど」
「もちろん、俺もここで一線交えるのは、どうにも気分が悪いと思っていた所だ」

 私達の元にやって来たのは、見知らぬ騎士だった。彼が、ウェルデインの言っていたもう一人なのだろう。
 私とリルフは、今からこの男と一戦交えることになる。苦しい戦いになるだろう。だが、負ける気はない。

「おっと、一応、名乗っておこうか。俺は、ナルジャー。名目上は、あんた達の護衛となっている騎士だ」
「護衛?」
「騎士団の本隊は、終末を望む会の討伐に向かっている。その間、あんた達には護衛がつくことになっている。それが、俺と副団長なんだ。今ここに来ている騎士の中で、一番目と二番目に強い騎士が、つくことになったのさ」
「なるほど……あなたは、二番目という訳なんだね?」
「否定はしないが、その言い方にはいささか悪意があるような気がするね」

 騎士は、ナルジャーという人物であるようだ。ここにはそれなりに多くの騎士が来ていたので、その中で二番目に強い彼は、相当な実力者なのだろう。

「そういえば、一人で来たんだね? 副団長はどうしたの?」
「それについては、俺にもわかっていない。一緒に来ることになっていたんだが……まあ、大方、本隊の方の指示が上手くいっていないとかだろう」

 この町に来ている副団長は、よくわからないがここに来るのが遅れているようだ。
 それは、こちらにとっては都合がいいことである。二対二より、二対一の方が絶対にいい。

「まあ、お前達の相手は、俺一人で充分だ。わざわざ副団長や団長の手を煩わせるまでもない。この俺が全てを終わらせてやる」
「大した自信だね……副団長もそうだったけど、騎士団というのは高慢な人が多いのかな?」
「……ふん、今にそれが虚言ではないことがわかるさ」

 自信満々だったので、少々煽ってみると、ナルジャーは表情を変えた。どうやら、精神面はまだまだ未熟なようである。
 ローディスには、こういう手は通用しなかった。それが通用するとわかっただけでも、今の会話には大いに意味があったといえるだろう。
 そんな風に話をしながら、私達は墓地を後にするのだった。
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