刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。繁栄も滅亡も、私の導き次第で決まるようです。

木山楽斗

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86.騎士団襲来⑧

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 リルフは、目の前で動けないでいる母親を見つめていた。
 このまま彼女が動けないでいると、こちらに勝ち目はない。例え、ナルジャーが本気でなかったとしても、母親を傷つけられると言われるとリルフは動けなくなってしまうのだ。
 今からナルジャーと戦うということは、母親を狙われる可能性があるということである。その状況は、リルフにとってかなり不利なのだ。

「どうにかしないと……」

 リルフは、この状況を打開する策を探していた。
 姿を変えれば、リルフは強力な力を得ることができる。しかし、それでもこの状況は打開できない。いくら強くなっても、母親を人質に取られては何も変わらないからだ。

「今までのボクでは、駄目だ……」

 そんなリルフの中には、ある姿が浮かんでいた。それは、今までとは違う大きくなった自分の姿である。
 その姿にどうしたらなれるか、リルフはそれをすぐに理解した。ゆっくりと目を瞑り、リルフは大地の音に耳を傾ける。

「……何をやっている? 諦めたのか?」
「諦めた訳じゃない……ボクは、もっと強くなる」
「何?」

 リルフは感じていた。この大地に眠る数多の生命の鼓動を。
 それを感じた時、リルフの中に浮かんだ竜の姿は、一気に鮮明なものとなる。

「エボリューション……グランドドラゴン!」
「な、何っ……!?」
「こ、これは……」

 リルフの体は光り輝き、その姿を変えた。
 今度の姿も、今までのものとは異なっている。トカゲのような頭は同じだが、黄色の体色で、翼が生えておらず、その手足が今までの姿よりも大きいのだ。
 リルフは、それが地の魔法を扱える姿であるとすぐに理解した。そして、リルフはその魔法を口にする。

「グランドヒール!」
「うっ……これは!」

 リルフの言葉によって、フェリナの体は光に包まれた。次の瞬間、彼女の顔色が一気に変わる。

「まさか……解毒魔法か」
「その通り……これがボクの新たなる力」
「くそっ……」

 リルフが使ったのは、解毒作用を持つ回復魔法だった。フェリナの体内にあった毒は、今の魔法で取り除かれたのである。
 これで、ナルジャーがいくら毒を使っても意味はなくなった。毒が回復できる以上、それは脅威ではなくなるのだ。

「リルフ、ありがとう……」
「お母さん、もう体は平気?」
「なんともないよ。おかげさまで、元気いっぱいだ」

 フェリナは、すっかりと良くなっていた。その姿を見て、リルフは安心する。
 彼女が毒を受けた時は、リルフもかなり不安だった。それが拭われたということも、二人を有利にする要因の一つである。
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