妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗

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34.大きな一歩

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「クラリアを傷つけたのはどうかと思うけれど、ウェリダンお兄様がそういう表情をできるようになったのは、おめでたいことだよね」
「まあ、そうだね。クラリアに怒りをぶつけたのはどうかと思うけれど」

 エフェリアお姉様とオルディアお兄様も、私が傷つけたような前提で話を進めていた。
 まあ、それに関してはとりあえず置いておくとしよう。ウェリダンお兄様がそう思っている以上、私が否定した所で意味はないような気がするし。

「……それでもまだ、ぎこちない点はありますよね?」
「まあ、それは仕方ないことなのではないかしら? いきなり表情が作れるようになって、完璧にできるというのもおかしな話ではあるし、これから慣れていけば良いのよ」
「何事もそういうものですか……」
「とにかく、これは大きな一歩よ。きっとお父様やお母様、アドルグお兄様も喜ぶと思うわ」

 ウェリダンお兄様は、イフェネアお姉様と楽しそうに話していた。
 そういえば、最近ヴェルード公爵夫妻やアドルグお兄様は屋敷を開けている。一体どこに行っているのだろうか。私はその辺りについて、特に聞いていない。

「あ、そうだ。例の二人の件ってどうなっているんですか?」
「え?」
「ああ、そのことですか……」

 そこでエフェリアお姉様が、イフェネアお姉様とウェリダンお兄様に問いかけた。
 そのことについては、私も気になっていたことではある。色々と作戦を立てていることがばれたからか、私達の方には情報があまり入らなくなった。ロヴェリオ殿下が防波堤になってくれているとは思うのだが、本当に大丈夫なのだろうか。

「まあ、この際ですから、話しておいても良いのかもしれませんね」
「ええ、私もそれでいいと思っているわ」
「今その件については、アドルグ兄上が対処しています。今頃は、ドルートン伯爵家の屋敷で話をつけていることでしょう」
「相変わらずアドルグ兄上は手が早いですね……」

 アドルグお兄様が屋敷を開けていたのは、例の令嬢二人の件について対処するためだったということらしい。
 私が思っていたよりも早く、お兄様方は動いていたようだ。これは、少々心配になってくる。絞首台に送られたりしていないだろうか。

「ウェリダンお兄様は、確かクラリアに過度な罰は与えないって約束したんだよね?」
「ええ、そうですよ。まあ、王家の介入もありますから過度な罰なんてことには、多分なりはしませんよ。その辺りについては、ご心配なく」

 ウェリダンお兄様は、少し得意気に笑みを浮かべていた。
 その笑顔を見ていると、本当に大丈夫だと思えてくる。嘘は言っていなさそうだということが、その表情からは前よりも鮮明に伝わってきたのだ。
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