34 / 103
34.大きな一歩
しおりを挟む
「クラリアを傷つけたのはどうかと思うけれど、ウェリダンお兄様がそういう表情をできるようになったのは、おめでたいことだよね」
「まあ、そうだね。クラリアに怒りをぶつけたのはどうかと思うけれど」
エフェリアお姉様とオルディアお兄様も、私が傷つけたような前提で話を進めていた。
まあ、それに関してはとりあえず置いておくとしよう。ウェリダンお兄様がそう思っている以上、私が否定した所で意味はないような気がするし。
「……それでもまだ、ぎこちない点はありますよね?」
「まあ、それは仕方ないことなのではないかしら? いきなり表情が作れるようになって、完璧にできるというのもおかしな話ではあるし、これから慣れていけば良いのよ」
「何事もそういうものですか……」
「とにかく、これは大きな一歩よ。きっとお父様やお母様、アドルグお兄様も喜ぶと思うわ」
ウェリダンお兄様は、イフェネアお姉様と楽しそうに話していた。
そういえば、最近ヴェルード公爵夫妻やアドルグお兄様は屋敷を開けている。一体どこに行っているのだろうか。私はその辺りについて、特に聞いていない。
「あ、そうだ。例の二人の件ってどうなっているんですか?」
「え?」
「ああ、そのことですか……」
そこでエフェリアお姉様が、イフェネアお姉様とウェリダンお兄様に問いかけた。
そのことについては、私も気になっていたことではある。色々と作戦を立てていることがばれたからか、私達の方には情報があまり入らなくなった。ロヴェリオ殿下が防波堤になってくれているとは思うのだが、本当に大丈夫なのだろうか。
「まあ、この際ですから、話しておいても良いのかもしれませんね」
「ええ、私もそれでいいと思っているわ」
「今その件については、アドルグ兄上が対処しています。今頃は、ドルートン伯爵家の屋敷で話をつけていることでしょう」
「相変わらずアドルグ兄上は手が早いですね……」
アドルグお兄様が屋敷を開けていたのは、例の令嬢二人の件について対処するためだったということらしい。
私が思っていたよりも早く、お兄様方は動いていたようだ。これは、少々心配になってくる。絞首台に送られたりしていないだろうか。
「ウェリダンお兄様は、確かクラリアに過度な罰は与えないって約束したんだよね?」
「ええ、そうですよ。まあ、王家の介入もありますから過度な罰なんてことには、多分なりはしませんよ。その辺りについては、ご心配なく」
ウェリダンお兄様は、少し得意気に笑みを浮かべていた。
その笑顔を見ていると、本当に大丈夫だと思えてくる。嘘は言っていなさそうだということが、その表情からは前よりも鮮明に伝わってきたのだ。
「まあ、そうだね。クラリアに怒りをぶつけたのはどうかと思うけれど」
エフェリアお姉様とオルディアお兄様も、私が傷つけたような前提で話を進めていた。
まあ、それに関してはとりあえず置いておくとしよう。ウェリダンお兄様がそう思っている以上、私が否定した所で意味はないような気がするし。
「……それでもまだ、ぎこちない点はありますよね?」
「まあ、それは仕方ないことなのではないかしら? いきなり表情が作れるようになって、完璧にできるというのもおかしな話ではあるし、これから慣れていけば良いのよ」
「何事もそういうものですか……」
「とにかく、これは大きな一歩よ。きっとお父様やお母様、アドルグお兄様も喜ぶと思うわ」
ウェリダンお兄様は、イフェネアお姉様と楽しそうに話していた。
そういえば、最近ヴェルード公爵夫妻やアドルグお兄様は屋敷を開けている。一体どこに行っているのだろうか。私はその辺りについて、特に聞いていない。
「あ、そうだ。例の二人の件ってどうなっているんですか?」
「え?」
「ああ、そのことですか……」
そこでエフェリアお姉様が、イフェネアお姉様とウェリダンお兄様に問いかけた。
そのことについては、私も気になっていたことではある。色々と作戦を立てていることがばれたからか、私達の方には情報があまり入らなくなった。ロヴェリオ殿下が防波堤になってくれているとは思うのだが、本当に大丈夫なのだろうか。
「まあ、この際ですから、話しておいても良いのかもしれませんね」
「ええ、私もそれでいいと思っているわ」
「今その件については、アドルグ兄上が対処しています。今頃は、ドルートン伯爵家の屋敷で話をつけていることでしょう」
「相変わらずアドルグ兄上は手が早いですね……」
アドルグお兄様が屋敷を開けていたのは、例の令嬢二人の件について対処するためだったということらしい。
私が思っていたよりも早く、お兄様方は動いていたようだ。これは、少々心配になってくる。絞首台に送られたりしていないだろうか。
「ウェリダンお兄様は、確かクラリアに過度な罰は与えないって約束したんだよね?」
「ええ、そうですよ。まあ、王家の介入もありますから過度な罰なんてことには、多分なりはしませんよ。その辺りについては、ご心配なく」
ウェリダンお兄様は、少し得意気に笑みを浮かべていた。
その笑顔を見ていると、本当に大丈夫だと思えてくる。嘘は言っていなさそうだということが、その表情からは前よりも鮮明に伝わってきたのだ。
1,245
あなたにおすすめの小説
短編 跡継ぎを産めない原因は私だと決めつけられていましたが、子ができないのは夫の方でした
朝陽千早
恋愛
侯爵家に嫁いで三年。
子を授からないのは私のせいだと、夫や周囲から責められてきた。
だがある日、夫は使用人が子を身籠ったと告げ、「その子を跡継ぎとして育てろ」と言い出す。
――私は静かに調べた。
夫が知らないまま目を背けてきた“事実”を、ひとつずつ確かめて。
嘘も責任も押しつけられる人生に別れを告げて、私は自分の足で、新たな道を歩き出す。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
「婚約破棄された聖女ですが、実は最強の『呪い解き』能力者でした〜追放された先で王太子が土下座してきました〜
鷹 綾
恋愛
公爵令嬢アリシア・ルナミアは、幼い頃から「癒しの聖女」として育てられ、オルティア王国の王太子ヴァレンティンの婚約者でした。
しかし、王太子は平民出身の才女フィオナを「真の聖女」と勘違いし、アリシアを「偽りの聖女」「無能」と罵倒して公衆の面前で婚約破棄。
王命により、彼女は辺境の荒廃したルミナス領へ追放されてしまいます。
絶望の淵で、アリシアは静かに真実を思い出す。
彼女の本当の能力は「呪い解き」——呪いを吸い取り、無効化する最強の力だったのです。
誰も信じてくれなかったその力を、追放された土地で発揮し始めます。
荒廃した領地を次々と浄化し、領民から「本物の聖女」として慕われるようになるアリシア。
一方、王都ではフィオナの「癒し」が効かず、魔物被害が急増。
王太子ヴァレンティンは、ついに自分の誤りを悟り、土下座して助けを求めにやってきます。
しかし、アリシアは冷たく拒否。
「私はもう、あなたの聖女ではありません」
そんな中、隣国レイヴン帝国の冷徹皇太子シルヴァン・レイヴンが現れ、幼馴染としてアリシアを激しく溺愛。
「俺がお前を守る。永遠に離さない」
勘違い王子の土下座、偽聖女の末路、国民の暴動……
追放された聖女が逆転し、究極の溺愛を得る、痛快スカッと恋愛ファンタジー!
婚約破棄ですか???実家からちょうど帰ってこいと言われたので好都合です!!!これからは復讐をします!!!~どこにでもある普通の令嬢物語~
tartan321
恋愛
婚約破棄とはなかなか考えたものでございますね。しかしながら、私はもう帰って来いと言われてしまいました。ですから、帰ることにします。これで、あなた様の口うるさい両親や、その他の家族の皆様とも顔を合わせることがないのですね。ラッキーです!!!
壮大なストーリーで奏でる、感動的なファンタジーアドベンチャーです!!!!!最後の涙の理由とは???
一度完結といたしました。続編は引き続き書きたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
短編 お前なんか一生結婚できないって笑ってたくせに、私が王太子妃になったら泣き出すのはどういうこと?
朝陽千早
恋愛
「お前なんか、一生結婚できない」
そう笑ってた幼馴染、今どんな気持ち?
――私、王太子殿下の婚約者になりましたけど?
地味で冴えない伯爵令嬢エリナは、幼い頃からずっと幼馴染のカイルに「お前に嫁の貰い手なんていない」とからかわれてきた。
けれどある日、王都で開かれた舞踏会で、偶然王太子殿下と出会い――そして、求婚された。
はじめは噂だと笑っていたカイルも、正式な婚約発表を前に動揺を隠せない。
ついには「お前に王太子妃なんて務まるわけがない」と暴言を吐くが、王太子殿下がきっぱりと言い返す。
「見る目がないのは君のほうだ」
「私の婚約者を侮辱するのなら、貴族であろうと容赦はしない」
格の違いを見せつけられ、崩れ落ちるカイル。
そんな姿を、もう私は振り返らない。
――これは、ずっと見下されていた令嬢が、運命の人に見初められる物語。
辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~
香木陽灯
恋愛
「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」
実の父と妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。
「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」
「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」
二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。
※ふんわり設定です。
※他サイトにも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる