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99.あれから私は
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王城という場所には、何度も訪れている。だけど、慣れているという訳ではない。ここではやはり、気が引き締まる。
といっても、それは王城だけに限った話という訳でもないかもしれない。公の場に出るとなると、背筋が伸びるものだ。私は生粋の貴族という訳でもないので、完全に慣れるということは、無理な話のかもしれない。
「クラリア嬢、来ていたんだね?」
「リチャード殿下、お邪魔しています」
「ご丁寧にどうも」
そんな私は、リチャード殿下と廊下で顔を合わせていた。
それはもしかしたら、運が良いことかもしれない。次期国王である彼は、何かと忙しいため、あまり顔を合わせることができないのだ。
「ロヴェリオに会いに来たのかな?」
「はい。私はロヴェリオ殿下の婚約者ですから」
「それが決まってから、もう八年くらい経つのかな?」
「ええ、そうですね。そのくらいになると思います」
「時が経つのは早いものだ。とはいえ、二人の仲というものは変わっていない……いや、より親密になっているというべきだろうか」
リチャード殿下に言われて、私は思い出す。
婚約が決まってから、いやそれ以前から、本当に色々なことがあった。時には苦しいこともあったけれど、それも今では良い思い出だ。
「クラリア? それにリチャード兄上も」
「ロヴェリオ殿下」
「ロヴェリオ、愛しのクラリア嬢のお越しだよ」
「兄上、やめてくださいよ。からかうのは」
そんなことを話していると、ロヴェリオ殿下がやって来た。
リチャード殿下に茶化されて、彼は顔を赤くしている。ちなみにそれは、私も同じだ。
「二人の仲の良さというものは、僕もよく聞いているからね。ついからかってしまう。どうか許してくれ」
「兄上だって、義姉上との仲は良好でしょうに」
「おっと、そろそろ行かないと。クラリア嬢、僕はそろそろ失礼するよ」
「あ、はい」
「……逃げたな」
ロヴェリオ殿下の言葉を受けて、リチャード殿下は早足で駆け出した。
逃げる意図もあるのかもしれないが、忙しいのも確かだろう。今回の場合は、廊下で突発的に出会った訳だし猶更だ。
「八年、ですか……」
「クラリア? どうかしたのか?」
「いえ、婚約してからそんなに経ったんだなと改めて思いまして。考えてみれば、私はあの頃のイフェネアお姉様と同じ年です。でも、今の自分があの頃のお姉様のようになれているかというと自信がありません」
八年という月日を改めて実感して、私は今の自分というものを見つめ直していた。
私が憧れているイフェネアお姉様は、今の私くらいの年にはもっと立派だったような気がする。まるで進歩がないという訳ではないが、それでもまだ足りないと思ってしまう。
「それは……俺だって、そんなものさ。あの頃のアドルグ様所か、ウェリダン様やオルディア様にすらなれていないような気がする。そもそもクラリアとイフェネア様は違う人なんだ。比べる必要なんてないだろうさ。スタートラインだって違う」
「それでも、精進しようという心は忘れてはならないと思うのです」
「それはそうだな。少し耳が痛いが……クラリアは立派だな」
私の言葉に、ロヴェリオ殿下は笑顔を浮かべてくれていた。
その笑顔を見ていると、安心できる。だがだからといって、努力を忘れてはならない。私は、もっと立派な貴族の令嬢になってみせるのだ。
といっても、それは王城だけに限った話という訳でもないかもしれない。公の場に出るとなると、背筋が伸びるものだ。私は生粋の貴族という訳でもないので、完全に慣れるということは、無理な話のかもしれない。
「クラリア嬢、来ていたんだね?」
「リチャード殿下、お邪魔しています」
「ご丁寧にどうも」
そんな私は、リチャード殿下と廊下で顔を合わせていた。
それはもしかしたら、運が良いことかもしれない。次期国王である彼は、何かと忙しいため、あまり顔を合わせることができないのだ。
「ロヴェリオに会いに来たのかな?」
「はい。私はロヴェリオ殿下の婚約者ですから」
「それが決まってから、もう八年くらい経つのかな?」
「ええ、そうですね。そのくらいになると思います」
「時が経つのは早いものだ。とはいえ、二人の仲というものは変わっていない……いや、より親密になっているというべきだろうか」
リチャード殿下に言われて、私は思い出す。
婚約が決まってから、いやそれ以前から、本当に色々なことがあった。時には苦しいこともあったけれど、それも今では良い思い出だ。
「クラリア? それにリチャード兄上も」
「ロヴェリオ殿下」
「ロヴェリオ、愛しのクラリア嬢のお越しだよ」
「兄上、やめてくださいよ。からかうのは」
そんなことを話していると、ロヴェリオ殿下がやって来た。
リチャード殿下に茶化されて、彼は顔を赤くしている。ちなみにそれは、私も同じだ。
「二人の仲の良さというものは、僕もよく聞いているからね。ついからかってしまう。どうか許してくれ」
「兄上だって、義姉上との仲は良好でしょうに」
「おっと、そろそろ行かないと。クラリア嬢、僕はそろそろ失礼するよ」
「あ、はい」
「……逃げたな」
ロヴェリオ殿下の言葉を受けて、リチャード殿下は早足で駆け出した。
逃げる意図もあるのかもしれないが、忙しいのも確かだろう。今回の場合は、廊下で突発的に出会った訳だし猶更だ。
「八年、ですか……」
「クラリア? どうかしたのか?」
「いえ、婚約してからそんなに経ったんだなと改めて思いまして。考えてみれば、私はあの頃のイフェネアお姉様と同じ年です。でも、今の自分があの頃のお姉様のようになれているかというと自信がありません」
八年という月日を改めて実感して、私は今の自分というものを見つめ直していた。
私が憧れているイフェネアお姉様は、今の私くらいの年にはもっと立派だったような気がする。まるで進歩がないという訳ではないが、それでもまだ足りないと思ってしまう。
「それは……俺だって、そんなものさ。あの頃のアドルグ様所か、ウェリダン様やオルディア様にすらなれていないような気がする。そもそもクラリアとイフェネア様は違う人なんだ。比べる必要なんてないだろうさ。スタートラインだって違う」
「それでも、精進しようという心は忘れてはならないと思うのです」
「それはそうだな。少し耳が痛いが……クラリアは立派だな」
私の言葉に、ロヴェリオ殿下は笑顔を浮かべてくれていた。
その笑顔を見ていると、安心できる。だがだからといって、努力を忘れてはならない。私は、もっと立派な貴族の令嬢になってみせるのだ。
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