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4.声をかけられて
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フェセネア様の指示によって、私は今までの自分では信じられない程に装飾に塗れたドレスを着て、化粧や髪形などもいつもとは大きく変えて、舞踏会の場に赴くことになった。
馬子にも衣装という訳ではないのだが、私でもそれなりに華やかさが演出できているような気がする。もちろん、メルファナ嬢のようにやり過ぎてはいない。その辺りに関しては、フェセネア様のバランス感覚が優れているといえるだろう。
「……失礼、あなたはどちら様でしょうか?」
「え?」
「見かけない方だと思いまして」
舞踏会の場において、私に一人の男性が話しかけてきた。
その人は、見たことがある。確かナーゼス伯爵家のニヴェルグ様だ。彼とは以前に挨拶を交わしたことがあった。
しかし彼の方は、私のことを覚えていないらしい。その辺りに関しては、やはり私が地味で印象に残らなかったということだろうか。
「私は、オービス侯爵家のイルセアと申します」
「イルセア嬢? あなたが?」
私が名乗ると、ニヴェルグ様は目を丸くした。
その反応に、私は自分が勘違いしていたことに気付く。彼は私のことを、忘れていた訳ではなかったのだ。
ニヴェルグ様は、私がいつもと余りにも違う見た目をしているから、誰であるかに気付けなかったということだろう。
考えてみれば、それは当然のことだ。それに気付かなかった私の方が、愚かだったといえる。
「申し訳ありません。その、わかりませんよね。私がイルセアなんて……」
「いやいや、こちらこそ申し訳ありませんでした。まさかあなただったとは……」
「兄の婚約者であるフェセネア様にお願いして、少し着飾らせてもらったのです。私も色々とありましたから……」
「なるほど……」
私の言葉に、ニヴェルグ様はゆっくりと頷いた。
彼も当然、私がレヴァール殿下から婚約破棄されたことは知っているだろう。それは既に、社交界で噂となっているはずだ。
この舞踏会に参加したのは、そういった噂による風評被害を跳ね返すためでもある。ニヴェルグ様も、私に対して良い印象を抱いてくれると良いのだが。
「イルセア嬢、重ね重ね声をかけておいて申し訳ないのだが、私があなたをダンスに誘ったことはなかったことにしていただきたい」
「え?」
「ああ、言い方が悪かったですね。あなたと踊りたくない訳ではないのです。しかし、その役目はある男が相応しいのです。私の友人であるクレイドがあなたを探していました。それを聞いた以上、彼に先を譲るべきだと思ってしまうのです」
「クレイド様、ですか……」
ニヴェルグ様は、苦笑いを浮かべていた。
彼が言うクレイド様のことは、私も知っている。挨拶をしたことがあるからだ。カルティス伯爵家の長男である彼は、喜ばしいことに私を最初のパートナーにと考えてくれているらしい。
そういうことなら、私もクレイド様を探すとしよう。ニヴェルグ様の話を聞いた以上、そうするべきだと私は思った。
馬子にも衣装という訳ではないのだが、私でもそれなりに華やかさが演出できているような気がする。もちろん、メルファナ嬢のようにやり過ぎてはいない。その辺りに関しては、フェセネア様のバランス感覚が優れているといえるだろう。
「……失礼、あなたはどちら様でしょうか?」
「え?」
「見かけない方だと思いまして」
舞踏会の場において、私に一人の男性が話しかけてきた。
その人は、見たことがある。確かナーゼス伯爵家のニヴェルグ様だ。彼とは以前に挨拶を交わしたことがあった。
しかし彼の方は、私のことを覚えていないらしい。その辺りに関しては、やはり私が地味で印象に残らなかったということだろうか。
「私は、オービス侯爵家のイルセアと申します」
「イルセア嬢? あなたが?」
私が名乗ると、ニヴェルグ様は目を丸くした。
その反応に、私は自分が勘違いしていたことに気付く。彼は私のことを、忘れていた訳ではなかったのだ。
ニヴェルグ様は、私がいつもと余りにも違う見た目をしているから、誰であるかに気付けなかったということだろう。
考えてみれば、それは当然のことだ。それに気付かなかった私の方が、愚かだったといえる。
「申し訳ありません。その、わかりませんよね。私がイルセアなんて……」
「いやいや、こちらこそ申し訳ありませんでした。まさかあなただったとは……」
「兄の婚約者であるフェセネア様にお願いして、少し着飾らせてもらったのです。私も色々とありましたから……」
「なるほど……」
私の言葉に、ニヴェルグ様はゆっくりと頷いた。
彼も当然、私がレヴァール殿下から婚約破棄されたことは知っているだろう。それは既に、社交界で噂となっているはずだ。
この舞踏会に参加したのは、そういった噂による風評被害を跳ね返すためでもある。ニヴェルグ様も、私に対して良い印象を抱いてくれると良いのだが。
「イルセア嬢、重ね重ね声をかけておいて申し訳ないのだが、私があなたをダンスに誘ったことはなかったことにしていただきたい」
「え?」
「ああ、言い方が悪かったですね。あなたと踊りたくない訳ではないのです。しかし、その役目はある男が相応しいのです。私の友人であるクレイドがあなたを探していました。それを聞いた以上、彼に先を譲るべきだと思ってしまうのです」
「クレイド様、ですか……」
ニヴェルグ様は、苦笑いを浮かべていた。
彼が言うクレイド様のことは、私も知っている。挨拶をしたことがあるからだ。カルティス伯爵家の長男である彼は、喜ばしいことに私を最初のパートナーにと考えてくれているらしい。
そういうことなら、私もクレイド様を探すとしよう。ニヴェルグ様の話を聞いた以上、そうするべきだと私は思った。
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