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19.傷を負っても
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「助けていただいたことには、感謝しています。ただ無理をし過ぎです」
「……そうですかね?」
「イルセア嬢の言う通りだ。一歩間違っていれば、お前の手は大変なことになっていたかもしれない」
「うっ……」
舞踏会の会場の控え室にて、手に包帯を巻いたクレイド様は苦い顔をしていた。
私と、それから友人であるニヴェルグ様から詰められるのは、彼としてもばつが悪いのだろう。
助けてもらった私は少々複雑ではあるが、彼の行動はなんとも危険なものである。下手をしたら、その手が切断されていたかもしれない。
「確かに僕の行動は危険だったかもしれません。ですが、イルセア嬢の安全のためには、腕を掴むだけでは不十分だと思ってしまったのです」
「私のことよりも、ご自分のことを気にしてください。クレイド様は、カルティス伯爵家の嫡子なのですから」
「そのようなことは、あなたを危険に晒す理由にはなりえません――ああ、そう思えて行動できたことは、少しは理想に近づけたといえるかもしれませんね」
クレイド様は、苦笑いを浮かべていた。
彼は自身の行動を後悔している様子はない。それ所かどこか満足げである。それに対して、私は思わずニヴェルグ様と顔を見合わせることになった。
「まったく、お前という奴は……らしいと言えばらしいが、これからは自分の身の安全もしっかりと考えることだな。さて、俺はそろそろ行くとしよう」
「ニヴェルグ……」
「イルセア嬢、少しこいつをよろしく頼みます」
「あ、はい。それは構いませんが……」
クレイド様と私に声をかけてから、ニヴェルグ様は部屋から出て行った。
何か用事でもあるのだろうか。よくわからないが、とにかく私はクレイド様と二人きりとなった。
その状況は、なんだか少し気まずい。悪い意味ではなく、心が少し躍ってしまって落ち着いていられないという意味で。
「……イルセア嬢、少しよろしいでしょうか?」
「あ、はい。なんですか?」
「お話ししたいことがあるのです」
「話、ですか。わ、わかりました」
緊張している状態でクレイド様に声をかけられて、私は少し上ずった声を出してしまった。
しかもよりによって、彼は何やら意味深な切り出し方をしてきた。そんな風に言われると、少し期待してしまう。いや、それは良くないことだ。非常事態の後に、私は何を浮ついたことを考えているのだろうか。
「結論から言います。僕と婚約していただけませんか?」
「……え?」
クレイド様の言葉に、私は再び固まることになった。
それは正しく、私が期待していたような言葉の類ではあったのだが、そのようなことを言われるとは思っておらず、思考が追いつかなかったのだ。
「……そうですかね?」
「イルセア嬢の言う通りだ。一歩間違っていれば、お前の手は大変なことになっていたかもしれない」
「うっ……」
舞踏会の会場の控え室にて、手に包帯を巻いたクレイド様は苦い顔をしていた。
私と、それから友人であるニヴェルグ様から詰められるのは、彼としてもばつが悪いのだろう。
助けてもらった私は少々複雑ではあるが、彼の行動はなんとも危険なものである。下手をしたら、その手が切断されていたかもしれない。
「確かに僕の行動は危険だったかもしれません。ですが、イルセア嬢の安全のためには、腕を掴むだけでは不十分だと思ってしまったのです」
「私のことよりも、ご自分のことを気にしてください。クレイド様は、カルティス伯爵家の嫡子なのですから」
「そのようなことは、あなたを危険に晒す理由にはなりえません――ああ、そう思えて行動できたことは、少しは理想に近づけたといえるかもしれませんね」
クレイド様は、苦笑いを浮かべていた。
彼は自身の行動を後悔している様子はない。それ所かどこか満足げである。それに対して、私は思わずニヴェルグ様と顔を見合わせることになった。
「まったく、お前という奴は……らしいと言えばらしいが、これからは自分の身の安全もしっかりと考えることだな。さて、俺はそろそろ行くとしよう」
「ニヴェルグ……」
「イルセア嬢、少しこいつをよろしく頼みます」
「あ、はい。それは構いませんが……」
クレイド様と私に声をかけてから、ニヴェルグ様は部屋から出て行った。
何か用事でもあるのだろうか。よくわからないが、とにかく私はクレイド様と二人きりとなった。
その状況は、なんだか少し気まずい。悪い意味ではなく、心が少し躍ってしまって落ち着いていられないという意味で。
「……イルセア嬢、少しよろしいでしょうか?」
「あ、はい。なんですか?」
「お話ししたいことがあるのです」
「話、ですか。わ、わかりました」
緊張している状態でクレイド様に声をかけられて、私は少し上ずった声を出してしまった。
しかもよりによって、彼は何やら意味深な切り出し方をしてきた。そんな風に言われると、少し期待してしまう。いや、それは良くないことだ。非常事態の後に、私は何を浮ついたことを考えているのだろうか。
「結論から言います。僕と婚約していただけませんか?」
「……え?」
クレイド様の言葉に、私は再び固まることになった。
それは正しく、私が期待していたような言葉の類ではあったのだが、そのようなことを言われるとは思っておらず、思考が追いつかなかったのだ。
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