公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。

木山楽斗

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あなただから

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「……誰でも、同じようなことで悩むものなのね」
「え?」

 イルフェアお姉様は、私に対してそんなことを言ってきた。
 誰でも同じようなことで悩む。それは、一体どういうことなのだろうか。

「以前、私があなたを呼び出して……私のことをどう思っているかを聞いたことを覚えている?」
「え? ええ、覚えていますよ」

 イルフェアお姉様が言ってきたことは、よく覚えている。前に呼び出されて、私はそんなことを聞かれたのだ。
 その時の質問の意図を、私は未だに完全にはわかっていない。ただ、あの時は彼女が私との関係を気にしているのだとぼんやりと思い、抱きしめたのである。

「多分、その時の私の悩みとルネリアの悩みというのは、同じようなものだと思うの」
「そうなんですか?」
「ええ……なんというのかしら? まあ、サガード様とのこともそうだけど、人と人の関係というものは、難しいものね……」

 イルフェアお姉様は、しみじみとそう呟いていた。
 確かに、彼女の言う通りだ。思い返してみれば、私はずっと人間関係のことで、悩んでいるような気がする。

「そうね……ルネリアは、オルティナのことが好き?」
「え? はい、それは、好きです……大好きです」
「それは、お姉さんだからという訳ではないでしょう?」
「それは……」

 イルフェアお姉様の言葉に、私は言葉を詰まらせた。それは、彼女の意図が見えてきたからだ。
 私は、オルティナお姉様のことが好きである。それは、彼女が姉であるからという訳ではない。私は、彼女の人となりが好きなのだ。

「オルティナだって、それは同じよ。あなたが妹であるからという理由で、あんなに好いている訳ではないの。あなたが、あなたという人間であるから、彼女はあなたを好いているの……あなたが、ルネリアだから、オルティナはあんな感じなのよ」
「そうなんですね……」
「……それはきっと、オルティナだけではないのよね。私だって、他の兄弟だって、お母様だってそうだわ。あなたの性格や仕草、その全てがあるからあなたが好きなの。いい所も悪い所も知っていて、それでも愛おしいと思うの」
「……そうですよね」

 私は、イルフェアお姉様の言葉にゆっくりと頷いた。
 確かに、彼女の言う通りである。オルティナお姉様だって、私がただ妹だから好いている訳がないのだ。
 それに、私は笑みを浮かべてしまう。今まで心の中にあったもやもやは、もう晴れている。

「ありがとうございます、イルフェアお姉様。おかげで、心の中のもやもやが晴れました」
「力になれたなら、何よりよ」
「……あの、私、イルフェアお姉様のこと大好きです。お姉様だからじゃなくて、イルフェアお姉様だから……」
「……ありがとう。私も、あなたがあなただから大好きよ、ルネリア」

 私達は、そのように言葉を交わした。
 こうして、私の悩みは解決するのだった。
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