そちらから縁を切ったのですから、今更頼らないでください。

木山楽斗

文字の大きさ
36 / 44

36.わかったこと

しおりを挟む
「し、失踪?」
「ああ、そうみたいなんだ……つい先日、いなくなってしまったらしい」

 ギルバートからの報告に、私はひどく驚いていた。
 エルシエット伯爵家の財政が火の車であること、それがディクソンの悪癖によるものだったということ。それらももちろん、衝撃的なことではある。
 ただ最も驚いたのが、ディクソンが失踪したということだ。事情はわからないが、エルシエット伯爵家に婿入りした彼はいなくなってしまったらしい。その消息は、まったく掴めていないようだ。

「話に聞いた所によると、結構あくどい所からお金を借りていたみたいだからね……」
「それが怖くて、逃げ出したということかしら?」
「もしくは、連れて行かれたのかもしれないね。どちらにしても、ディクソン・エルシエットという人間が再び姿を現す可能性は低そうだ」

 ギルバートの言葉に、私は少し震えてしまった。
 ディクソンは今一体、どこで何をしているのだろうか。果たして生きているのだろうか。彼の末路を考えると、気分が悪くなってくる。

「まあ、何はともあれ、これでエルシエット伯爵家がお金の無心をしてきた理由は判明した訳だ……それで、どうするつもりだい?」
「どうするつもりと言われてもね。縁を切っておいて、今更頼ってくるなと思ってしまうけれど」
「それが当然の反応だろうさ。それなら、丁重にお断りしようか? それとも、こんな手紙は届かなかったということにするかい?」
「返信くらいは、出しておいた方がいいのかもしれないわね。どちらにしても角は立つでしょうし、それならこちらの意思を伝えておいた方がいいように思えるわ。それに無視というのはなんだか子供っぽいしね?」

 ギルバートの言葉に、私はそのように返答した。
 元親族として、最低限の礼節は弁えた方がいいだろう。感情に任せるよりも、そちらの方が私好みだ。ここはあくまで、大人の対応をするとしよう。

「問題なのは、借金をしたあくどい所かしら? その人達が、こっちに来る可能性はないとは言い切れないわよね?」
「それは確かにそうかもしれないね。親族だからと返済を要求してくるかもしれない」
「それは正直な所、面倒ね。それに腹が立つわ」
「縁を切ったと言って納得してもらえるといいんだけど、それは恐らく難しいだろうね」

 早速手紙を書き始めながら、私はギルバートとそんな会話を交わした。
 こちらに借金取りが訪ねて来るかもしれない。それは私にとって、非常に億劫なことだった。
 どうにかして、それを回避したいとは思う。だが、それもまた中々に難しいことである。

「……相談するべきかしらね」
「相談?」

 そこで私は、ゆっくりと筆を止めた。
 これからの人生のためにも、過去から続く因縁は断ち切っておかなければならない。
 そのために私は、行動を開始するのだった。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの。

朝霧心惺
恋愛
「リリーシア・ソフィア・リーラー。冷酷卑劣な守銭奴女め、今この瞬間を持って俺は、貴様との婚約を破棄する!!」  テオドール・ライリッヒ・クロイツ侯爵令息に高らかと告げられた言葉に、リリーシアは純白の髪を靡かせ高圧的に微笑みながら首を傾げる。 「誰と誰の婚約ですって?」 「俺と!お前のだよ!!」  怒り心頭のテオドールに向け、リリーシアは真実を告げる。 「わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの」

【完結】「お前に聖女の資格はない!」→じゃあ隣国で王妃になりますね

ぽんぽこ@3/28新作発売!!
恋愛
【全7話完結保証!】 聖王国の誇り高き聖女リリエルは、突如として婚約者であるルヴェール王国のルシアン王子から「偽聖女」の烙印を押され追放されてしまう。傷つきながらも母国へ帰ろうとするが、運命のいたずらで隣国エストレア新王国の策士と名高いエリオット王子と出会う。 「僕が君を守る代わりに、その力で僕を助けてほしい」 甘く微笑む彼に導かれ、戸惑いながらも新しい人生を歩み始めたリリエル。けれど、彼女を追い詰めた隣国の陰謀が再び迫り――!? 追放された聖女と策略家の王子が織りなす、甘く切ない逆転ロマンス・ファンタジー。

妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。  マクリントック公爵家の長女カチュアは、婚約者だった王太子に斬られ、顔に醜い傷を受けてしまった。王妃の座を狙う妹が王太子を魅了して操っていたのだ。カチュアは顔の傷を治してももらえず、身一つで辺境に追放されてしまった。

兄にいらないと言われたので勝手に幸せになります

毒島醜女
恋愛
モラハラ兄に追い出された先で待っていたのは、甘く幸せな生活でした。 侯爵令嬢ライラ・コーデルは、実家が平民出の聖女ミミを養子に迎えてから実の兄デイヴィッドから冷遇されていた。 家でも学園でも、デビュタントでも、兄はいつもミミを最優先する。 友人である王太子たちと一緒にミミを持ち上げてはライラを貶めている始末だ。 「ミミみたいな可愛い妹が欲しかった」 挙句の果てには兄が婚約を破棄した辺境伯家の元へ代わりに嫁がされることになった。 ベミリオン辺境伯の一家はそんなライラを温かく迎えてくれた。 「あなたの笑顔は、どんな宝石や星よりも綺麗に輝いています!」 兄の元婚約者の弟、ヒューゴは不器用ながらも優しい愛情をライラに与え、甘いお菓子で癒してくれた。 ライラは次第に笑顔を取り戻し、ベミリオン家で幸せになっていく。 王都で聖女が起こした騒動も知らずに……

見た目の良すぎる双子の兄を持った妹は、引きこもっている理由を不細工だからと勘違いされていましたが、身内にも誤解されていたようです

珠宮さくら
恋愛
ルベロン国の第1王女として生まれたシャルレーヌは、引きこもっていた。 その理由は、見目の良い両親と双子の兄に劣るどころか。他の腹違いの弟妹たちより、不細工な顔をしているからだと噂されていたが、実際のところは全然違っていたのだが、そんな片割れを心配して、外に出そうとした兄は自分を頼ると思っていた。 それが、全く頼らないことになるどころか。自分の方が残念になってしまう結末になるとは思っていなかった。

婚約破棄を兄上に報告申し上げます~ここまでお怒りになった兄を見たのは初めてでした~

ルイス
恋愛
カスタム王国の伯爵令嬢ことアリシアは、慕っていた侯爵令息のランドールに婚約破棄を言い渡された 「理由はどういったことなのでしょうか?」 「なに、他に好きな女性ができただけだ。お前は少し固過ぎたようだ、私の隣にはふさわしくない」 悲しみに暮れたアリシアは、兄に婚約が破棄されたことを告げる それを聞いたアリシアの腹違いの兄であり、現国王の息子トランス王子殿下は怒りを露わにした。 腹違いお兄様の復讐……アリシアはそこにイケない感情が芽生えつつあったのだ。

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※短編です。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4800文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

結婚式後に「爵位を継いだら直ぐに離婚する。お前とは寝室は共にしない!」と宣言されました

山葵
恋愛
結婚式が終わり、披露宴が始まる前に夫になったブランドから「これで父上の命令は守った。だが、これからは俺の好きにさせて貰う。お前とは寝室を共にする事はない。俺には愛する女がいるんだ。父上から早く爵位を譲って貰い、お前とは離婚する。お前もそのつもりでいてくれ」 確かに私達の結婚は政略結婚。 2人の間に恋愛感情は無いけれど、ブランド様に嫁ぐいじょう夫婦として寄り添い共に頑張って行ければと思っていたが…その必要も無い様だ。 ならば私も好きにさせて貰おう!!

処理中です...