妹の代わりに人質として嫁いだ私は、隣国の王太子様に何故か溺愛されています。

木山楽斗

文字の大きさ
4 / 12

4.隣国での扱い

しおりを挟む
 天蓋付きのベッドに寝転びながら、私は考えていた。何故、このようなことになっているのかということを。
 目の前には、とても良い部屋が広がっている。いやもちろん、王太子殿下の嫁となる私の部屋なのだから、それは別におかしいことではないのだが。
 問題は、こちらの国での扱いの方だろう。ラフェイン王国に来てからのことを、私は思い出す。



◇◇◇



 私は緊張しながら、馬車から下りていく。
 目の前には、ラフェイン王国の王城がある。立派な城を見ると、自分がどこにいるのかを嫌でも実感させられる。
 そんな王城に見惚れていると、そちらの方向から数人がゆっくりと近づいて来ているのが見えた。身なりからして、その中心にいる者達が高い身分にあることがわかる。

「……おお」

 最初に声を出したのは、初老の男性であった。
 その人物は恐らく、ラフェイン王国の国王様だ。私はとりあえず、一礼する。跪いた方が良いかとも思ったが、周囲の空気はそのような感じではない。
 そもそも、まだ誰も名乗っていない段階でそのようなことをするべきでもないだろう。私は国王様らしき人の言葉を待つことにする。

「アルネリア嬢で、間違いないだろうか?」
「はい。アルネリア・アガートと申します」
「うむ、私はラオーディル・ラフェイン。このラフェイン王国の国王だ」
「お会いできて光栄です」
「楽にしてもらって構わない。あなたは客人だ。何れは家族にもなる。堅苦しい態度は必要ない」

 国王様は、人の良さそうな笑みを浮かべていた。
 そのことに、私は少し面食らってしまう。それで私は、自分が敵対していた国の重鎮を悪い人だと決めつけていたことに気付いた。

 それはなんというか、偏った考え方をしていたということだろう。そこにいる人を想像できていなかったことは、恥じるべき事柄だ。
 いやそもそも、相手は関係を良好にしようとしている代の国王様だ。先代ならまだしも、この人に関して悪などと思うことは、大きな間違いだったといえる。

「……父上、俺も自己紹介しても良いでしょうか?」
「うん? ああ、もちろん構わないとも」

 私がそんなことを思っていると、国王様の隣にいた男性が声を出した。
 彼は前に出て来て、ゆっくりと一礼する。その優雅さや身なりからして、彼こそがこの国の王太子であるラゼルト殿下なのだろう。

「アルネリア嬢、初めまして。俺はラゼルト。この国の王太子だ」
「初めまして、ラゼルト殿下」
「……美しい」
「……え?」

 挨拶を交わした後、ラゼルト殿下はゆっくりと言葉を呟いた。
 その言葉に、私は思わず声を出してしまった。私の顔を見た彼は、今一体なんと言っただろうか。聞き間違いでなければ、美しいと呟いた気がするのだが。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

幼い頃、義母に酸で顔を焼かれた公爵令嬢は、それでも愛してくれた王太子が冤罪で追放されたので、ついていくことにしました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 設定はゆるくなっています、気になる方は最初から読まないでください。 ウィンターレン公爵家令嬢ジェミーは、幼い頃に義母のアイラに酸で顔を焼かれてしまった。何とか命は助かったものの、とても社交界にデビューできるような顔ではなかった。だが不屈の精神力と仮面をつける事で、社交界にデビューを果たした。そんなジェミーを、心優しく人の本質を見抜ける王太子レオナルドが見初めた。王太子はジェミーを婚約者に選び、幸せな家庭を築くかに思われたが、王位を狙う邪悪な弟に冤罪を着せられ追放刑にされてしまった。

冷酷騎士様の「愛さない」は一分も持たなかった件

水月
恋愛
「君を愛するつもりはない」 結婚初夜、帝国最強の冷酷騎士ヴォルフラム・ツヴァルト公爵はそう言い放った。 出来損ないと蔑まれ、姉の代わりの生贄として政略結婚に差し出されたリーリア・ミラベルにとって、それはむしろ救いだった。 愛を期待されないのなら、失望させることもない。 契約妻として静かに役目を果たそうとしたリーリアは、緩んだ軍服のボタンを自らの銀髪と微弱な強化魔法で直す。 ただ「役に立ちたい」という一心だった。 ――その瞬間。 冷酷騎士の情緒が崩壊した。 「君は、自分の価値を分かっていない」 開始一分で愛さない宣言は撤回。 無自覚に自己評価が低い妻に、激重独占欲を発症した最強騎士が爆誕する。 以後、 寝室は強制統合 常時抱っこ移動 一秒ごとに更新される溺愛 妻を傷つける者には容赦なし宣言 甘さ過多、独占欲過剰、愛情暴走中。 さらにはリーリアを取り戻そうとする実家の横槍まで入り――? 自己評価ゼロの健気令嬢と愛が一分も我慢できなかった最強騎士。 溺愛が止まらない、契約結婚から始まる甘すぎる逆転ラブコメ

『壁の花』の地味令嬢、『耳が良すぎる』王子殿下に求婚されています〜《本業》に差し支えるのでご遠慮願えますか?〜

水都 ミナト
恋愛
 マリリン・モントワール伯爵令嬢。  実家が運営するモントワール商会は王国随一の大商会で、優秀な兄が二人に、姉が一人いる末っ子令嬢。  地味な外観でパーティには来るものの、いつも壁側で1人静かに佇んでいる。そのため他の令嬢たちからは『地味な壁の花』と小馬鹿にされているのだが、そんな嘲笑をものととせず彼女が壁の花に甘んじているのには理由があった。 「商売において重要なのは『信頼』と『情報』ですから」 ※設定はゆるめ。そこまで腹立たしいキャラも出てきませんのでお気軽にお楽しみください。2万字程の作品です。 ※カクヨム様、なろう様でも公開しています。

【短編】夫の国王は隣国に愛人を作って帰ってきません。散々遊んだあと、夫が城に帰ってきましたが・・・城門が開くとお思いですか、国王様?

五月ふう
恋愛
「愛人に会いに隣国に行かれるのですか?リリック様。」 朝方、こっそりと城を出ていこうとする国王リリックに王妃フィリナは声をかけた。 「違う。この国の為に新しい取引相手を探しに行くのさ。」 国王リリックの言葉が嘘だと、フィリナにははっきりと分かっていた。 ここ数年、リリックは国王としての仕事を放棄し、女遊びにばかり。彼が放り出した仕事をこなすのは、全て王妃フィリナだった。 「待ってください!!」 王妃の制止を聞くことなく、リリックは城を出ていく。 そして、3ヶ月間国王リリックは愛人の元から帰ってこなかった。 「国王様が、愛人と遊び歩いているのは本当ですか?!王妃様!」 「国王様は国の財源で女遊びをしているのですか?!王妃様!」 国民の不満を、王妃フィリナは一人で受け止めるしか無かったーー。 「どうしたらいいのーー?」

【完結】旦那様!単身赴任だけは勘弁して下さい!

たまこ
恋愛
 エミリーの大好きな夫、アランは王宮騎士団の副団長。ある日、栄転の為に辺境へ異動することになり、エミリーはてっきり夫婦で引っ越すものだと思い込み、いそいそと荷造りを始める。  だが、アランの部下に「副団長は単身赴任すると言っていた」と聞き、エミリーは呆然としてしまう。アランが大好きで離れたくないエミリーが取った行動とは。

【完結】冷遇・婚約破棄の上、物扱いで軍人に下賜されたと思ったら、幼馴染に溺愛される生活になりました。

天音ねる(旧:えんとっぷ)
恋愛
【恋愛151位!(5/20確認時点)】 アルフレッド王子と婚約してからの間ずっと、冷遇に耐えてきたというのに。 愛人が複数いることも、罵倒されることも、アルフレッド王子がすべき政務をやらされていることも。 何年間も耐えてきたのに__ 「お前のような器量の悪い女が王家に嫁ぐなんて国家の恥も良いところだ。婚約破棄し、この娘と結婚することとする」 アルフレッド王子は新しい愛人の女の腰を寄せ、婚約破棄を告げる。 愛人はアルフレッド王子にしなだれかかって、得意げな顔をしている。 誤字訂正ありがとうございました。4話の助詞を修正しました。

余命僅かな大富豪を看取って、円満に未亡人になるはずでした

ぜんだ 夕里
恋愛
傾きかけた家を救うため、私が結んだのはあまりにも不謹慎な契約――余命いくばくもない大富豪の辺境伯様と結婚し、彼の最期を穏やかに看取ることで莫大な遺産を相続する、というものだった。 しかし、人の死を利用して富を得るなど不正義! そう考えた私が立てたのは、前代未聞の計画。 「そうだ、遺産が残らないくらい贅沢の限りを尽くしてもらえば、すべて丸く収まるじゃない!」

地味で役に立たないと言われて捨てられましたが、王弟殿下のお相手としては最適だったようです

有賀冬馬
恋愛
「君は地味で、将来の役に立たない」 そう言われ、幼なじみの婚約者にあっさり捨てられた侯爵令嬢の私。 社交界でも忘れ去られ、同情だけを向けられる日々の中、私は王宮の文官補佐として働き始める。 そこで出会ったのは、権力争いを嫌う変わり者の王弟殿下。 過去も噂も問わず、ただ仕事だけを見て評価してくれる彼の隣で、私は静かに居場所を見つけていく。 そして暴かれる不正。転落していく元婚約者。 「君が隣にいない宮廷は退屈だ」 これは、選ばれなかった私が、必要とされる私になる物語。

処理中です...