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8.玉座の間にて
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ラフェイン王国に来てから一日が経って、私は玉座の間にて謁見していた。
玉座に腰掛ける国王様とは、昨日の時点で既に顔を合わせている。それに猶予を貰えたお陰で、心の整理もできた。そのため、そこまで緊張はしていない。
それは問題ないのだが、私は先程からずっと玉座の間にある肖像画らしきものが気になっていた。そちらに自然と、視線が向いてしまう。
「アルネリア嬢? どうかしたのか?」
「あ、その、あちらの肖像画が気になってしまって」
「ああ、あれのことか……」
隣にいたラゼルト殿下は、私の質問に何故か嬉しそうにしていた。
その理由が、私にはわからない。あの絵画がどういったものか教えてもらえれば、それがわかるのだろうか。
いやそれ所か、あれは私のこちらの国での扱いさえ解明してくれるかもしれない。なぜならその肖像画に描かれている女性は、私とそっくりなのだから。
「あれはこの国の女神ラルネシア様だ」
「ラルネシア様、ですか?」
「ああ、遥か昔からこの国にはその伝説が言い伝えられている。彼女の加護があってこそのラフェイン王国だ」
「そ、そうなのですね……」
ラゼルト殿下の言葉に、私は肖像画がこの国で祀られている女神であることを理解した。
それは別に、おかしな話という訳でもない。カルノード王国にも、そういった伝承は言い伝えられている。国ごとにそういったものが、あって当然だろう。
しかし問題は、女神の容姿である。私とそっくりというその見た目は、色々と考えざるを得ない。
「まさか、ラゼルト殿下やこちらの国の人々が私を歓迎していたのは……」
「ああ、女神ラルネシア様が関係している。あなたはきっと、彼女の生まれ変わりなのだろう。皮肉なものだ。我々は女神の生まれ変わりを有する国と争っていたというのだからな……」
「それは……」
女神様とそっくりな私が歓迎されるということは、とても納得できるものであった。
しかしながら、生まれ変わりと言われても当然実感などはない。もちろん心当たりなどがある訳もないため、困惑してしまう。
「……ラゼルト、お前はそろそろ席を外せ」
「む……」
「アルネリア嬢が心配なのはわかるが、この場は私に任せるのだ」
「……わかりました」
そこで黙っていた国王様が、ラゼルト殿下に声をかけた。
本来であれば、これは私と国王様との一対一での謁見であった。ラゼルト殿下はついて来てくれていたが、それは許されないことであったらしい。
不満そうにしながらも、ラゼルト殿下は国王様の言葉に従う。そのまま玉座の間から去って行き、私は改めて国王様と向き合うことになったのだった。
玉座に腰掛ける国王様とは、昨日の時点で既に顔を合わせている。それに猶予を貰えたお陰で、心の整理もできた。そのため、そこまで緊張はしていない。
それは問題ないのだが、私は先程からずっと玉座の間にある肖像画らしきものが気になっていた。そちらに自然と、視線が向いてしまう。
「アルネリア嬢? どうかしたのか?」
「あ、その、あちらの肖像画が気になってしまって」
「ああ、あれのことか……」
隣にいたラゼルト殿下は、私の質問に何故か嬉しそうにしていた。
その理由が、私にはわからない。あの絵画がどういったものか教えてもらえれば、それがわかるのだろうか。
いやそれ所か、あれは私のこちらの国での扱いさえ解明してくれるかもしれない。なぜならその肖像画に描かれている女性は、私とそっくりなのだから。
「あれはこの国の女神ラルネシア様だ」
「ラルネシア様、ですか?」
「ああ、遥か昔からこの国にはその伝説が言い伝えられている。彼女の加護があってこそのラフェイン王国だ」
「そ、そうなのですね……」
ラゼルト殿下の言葉に、私は肖像画がこの国で祀られている女神であることを理解した。
それは別に、おかしな話という訳でもない。カルノード王国にも、そういった伝承は言い伝えられている。国ごとにそういったものが、あって当然だろう。
しかし問題は、女神の容姿である。私とそっくりというその見た目は、色々と考えざるを得ない。
「まさか、ラゼルト殿下やこちらの国の人々が私を歓迎していたのは……」
「ああ、女神ラルネシア様が関係している。あなたはきっと、彼女の生まれ変わりなのだろう。皮肉なものだ。我々は女神の生まれ変わりを有する国と争っていたというのだからな……」
「それは……」
女神様とそっくりな私が歓迎されるということは、とても納得できるものであった。
しかしながら、生まれ変わりと言われても当然実感などはない。もちろん心当たりなどがある訳もないため、困惑してしまう。
「……ラゼルト、お前はそろそろ席を外せ」
「む……」
「アルネリア嬢が心配なのはわかるが、この場は私に任せるのだ」
「……わかりました」
そこで黙っていた国王様が、ラゼルト殿下に声をかけた。
本来であれば、これは私と国王様との一対一での謁見であった。ラゼルト殿下はついて来てくれていたが、それは許されないことであったらしい。
不満そうにしながらも、ラゼルト殿下は国王様の言葉に従う。そのまま玉座の間から去って行き、私は改めて国王様と向き合うことになったのだった。
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