妹の代わりに人質として嫁いだ私は、隣国の王太子様に何故か溺愛されています。

木山楽斗

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「……息子がすまないな」
「え?」

 ラゼルト殿下が去ってから、国王様は申し訳なさそうにしながら、謝罪の言葉を口にしてきた。
 その言葉に、私は少し面食らう。それが何に対する謝罪であるのかわからなかったからだ。

「あれは昔から、女神ラルネシアに対して強い憧れを抱いていた。女神とあなたを重ね合わせてみているのだろう」
「私と女神様を、ですか?」
「うむ。今回の婚約というものも、あなたの噂をあれが耳にしたことが発端だ。もちろん、決めた理由はそれだけではないが、きっかけとなったのは紛れもない事実だ」

 国王様は、少し気まずそうな顔をしながら言葉を発していた。
 それを聞いた私は、少しだけ微妙な気分である。ラゼルト殿下の優しさというものは、詰まる所女神様に向けられたものだということが、理解できたからだ。

「あなたにとっては、良いことではないだろう。ラゼルトはあなたを見ていないのだからな」
「……いえ、別に構いません」
「いや、それに関してはラゼルトだけではないか。この国の多くの者は、あなたに女神の姿を見ているといえるだろう。それは私にとっては、都合が良いことではある。私はそれを利用して、二国の平和というものを成立させられると期待しているのだ」

 国王様の言葉は、とてもゆっくりだった。
 彼の理想というものが、その言葉からは伝わって来る。本当に平和を望んでいるのだろう。そのためには、何でも利用する。国王様はきっと、そんな風に思っているのだ。
 それは悪いことではない。むしろ良いことだと、私は思う。この私の見た目一つで、ラフェイン王国の人達がカルノード王国への評価を改めてくれるなんて、なんとも安いことだろうか。

「国王様、私も気持ちは同じです。私の見た目が利用できるなら、利用すれば良いと思います。しかし、私は女神様のように振る舞うことはできません。そんな風にするのは、きっと逆効果でしかないでしょう」
「うむ、それはその通りだ。あなたはあなたとして、これからも生きてくれれば良い。そもそも女神ラルネシアの像というものも、人それぞれだ。再現することなどは不可能だろう」
「そう言っていただけると、気が楽になります」

 国王様は、初めて会った時に私の顔を見て驚いていた。本当にあの肖像画の通りの人物で、思わず感嘆の声をあげたのだろう。
 しかしながらそれ以降は、私と女神様を重ね合わせてはいないように思える。それは彼が国王である故のことなのだろうか。
 願わくは、ラゼルト殿下もそのようになってもらいたいものである。私は国王様と話ながら、ぼんやりとそんなことを考えていた。
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