堅実に働いてきた私を無能と切り捨てたのはあなた達ではありませんか。

木山楽斗

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15.国境付近の町で

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 ベルトチカという町は、ドナテロ王国とアルフェンド王国との国境付近にある村だ。
 二つの国が和平を結んでからというもの、この町には二つの国を行き来する旅人が立ち寄り、それなりに賑わっていたそうだ。
 しかしその町は、今は静かである。その理由は明白だ。二つの国との間の行き来が、できくなくなったからである。

「どうやら、アルフェンド王国側は本当に仕掛けるつもりのようですね。こちらに無断で関所を封じるとは……」
「お祖母様の言う通り、早くこちらに来ておいてよかったですね」
「まあ、あのガキの考えることくらい予想はつくさ」

 ベルトチカの町に辿り着いてから、私達は町民から色々と話を聞くことになった。
 どうやら、国境付近は荒れているらしい。アルフェンド王国が、既に動いているようだ。

「アタシ達がやるべきことは一つだ。アルフェンド王国側から来るであろう兵達を退けることだ」
「やはりそういうことになるのですね……」
「当然だろう。あっちが仕掛けるつもりなんだ。こっちもそれなりの対応をする必要がある」

 お祖母様は、とても好戦的だった。それは恐らく、生まれた時代が違うからなのだろう。
 私とウルギア様は、二国間の争いなど経験していない世代だ。一方、お祖母様は和平が結ばれる前から生きている。故に、特に躊躇いはないのだろう。

「なんとかして、彼らの侵攻を事前に阻止できないでしょうか?」
「それは難しいだろうね」
「そうですか……」

 ウルギア様は、少し悲しそうな顔をしていた。
 その気持ちはよく理解できる。私だって、できることなら争いは嫌だ。
 しかし、お祖母様の言っていることも正論である。ここまで来たら、もう争いを止めることはできない。アルフェンド王国側に、止まる理由などないからだ。

「ウルギア、あんたも覚悟してきたはずだろう。王家の一員として、的確な判断を下しな」
「……もちろん、それは心得ています。血を流したくはありませんが、その辺りのことを割り切ることはできます。これでも、王子ですから」
「いい目をしているね。その目は期待ができる目だ。クレメリア、あんたも覚悟はいいかい?」

 お祖母様に言われて、私は少しだけ固まった。
 だが、私も覚悟はしてきている。これでも元聖女だ。いざという時にどうするべきかは、よく理解している。

「覚悟はできています」
「それならいいさ」
「お祖母様、無理はしないでくださいね?」
「ふん、アタシの心配なんていらないよ」

 私はお祖母様の言葉に力強く頷いた。
 こうして私達は、アルフェンド王国と戦う覚悟を決めたのだった。
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