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38.血族の一員
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「……そうだ。元はと言えば、全てはお前のせいだ!」
「……私、ですか?」
お祖母様の記憶を失ったからか、アズガルト様は私の方に矛先を向けてきた。
しかし、私のせいと言われてもよくわからない。一体彼は、何の責任を私に求めているというのだろうか。
「この国を見捨てて、ドナテロ王国に与した裏切り者め……お前がいなくなったせいで、この国は滅茶苦茶だ」
「私を無能といって切り捨てたのは、あなたではありませんか。今頃その責任を押し付けないでください」
「どこの馬の骨だかも知らない聖女が……知ったような口を」
私の反論も気にせず、アズガルト様は言葉を続けていた。
彼は既に、私に対する恨みでいっぱいなのだろう。それがその表情から伝わってくる。
「所詮は平民の愚か者……薄汚い血筋の俗物が、この俺の王道を邪魔するとは!」
「ふん、そっちに関してあんたはまったく知らない訳か。真なる馬鹿者はどちらだか……」
「……なんだと?」
そこでお祖母様は、アズガルト様の言葉を遮った。
お祖母様は、彼のことを鼻で笑っている。強力な反論が、あるということなのだろう。
「アタシは、あんたの祖父であるアラノルトとも知り合いだった。あの男がどういう人間であったかは、お前もよく知っているだろう。最期の最期まで、あいつは欲望に忠実だった」
「な、何が言いたい?」
「あいつは最期に忘れ形見を残していたのさ。しかしエルベルトは、その忘れ形見を政治に巻き込ませないために隠した。それが母親の望みだったのさ。あの子は当時の王に見初められたことによって、色々と大変だったからね」
「そ、それはつまり……」
アズガルト様は、目を丸くしてこちらを見ていた。
恐らく信じられないのだろう。私がまさか、叔母にあたる人物だったなんて。
それは私も同じである。私がエルベルト様の年の離れた妹だったなんて驚きだ。
「この子は、あんたと同じ血を引く人間なのさ。あんた達の基準で考えると、高貴な人間だ」
「ば、馬鹿な……」
「まあ、そんなことは些細なことだけどね。血筋なんて関係なく、この子は高潔な人間だ。あんたとは格が違うのさ」
お祖母様は、冷たい目をしてそう言い切った。
確かに、アズガルト様の問題は個人の問題だ。ルバディオ様などの他の王族達は、きちんとした人達である。目の前にいる彼とは、まったく違う。
「クレメリア、そろそろ行くとしようか。これ以上こいつと話していたって、時間の無駄だ」
「ええ、そうしましょう」
「まあ、幸いにもあんたにはたっぷり時間がある。精々反省するんだね」
「くっ……」
お祖母様の言葉に、アズガルト様は項垂れていた。
彼はこれから、長い時間をかけて罰を受けることになる。その過程で、彼が己を顧みてくれれば良いのだが。
「……私、ですか?」
お祖母様の記憶を失ったからか、アズガルト様は私の方に矛先を向けてきた。
しかし、私のせいと言われてもよくわからない。一体彼は、何の責任を私に求めているというのだろうか。
「この国を見捨てて、ドナテロ王国に与した裏切り者め……お前がいなくなったせいで、この国は滅茶苦茶だ」
「私を無能といって切り捨てたのは、あなたではありませんか。今頃その責任を押し付けないでください」
「どこの馬の骨だかも知らない聖女が……知ったような口を」
私の反論も気にせず、アズガルト様は言葉を続けていた。
彼は既に、私に対する恨みでいっぱいなのだろう。それがその表情から伝わってくる。
「所詮は平民の愚か者……薄汚い血筋の俗物が、この俺の王道を邪魔するとは!」
「ふん、そっちに関してあんたはまったく知らない訳か。真なる馬鹿者はどちらだか……」
「……なんだと?」
そこでお祖母様は、アズガルト様の言葉を遮った。
お祖母様は、彼のことを鼻で笑っている。強力な反論が、あるということなのだろう。
「アタシは、あんたの祖父であるアラノルトとも知り合いだった。あの男がどういう人間であったかは、お前もよく知っているだろう。最期の最期まで、あいつは欲望に忠実だった」
「な、何が言いたい?」
「あいつは最期に忘れ形見を残していたのさ。しかしエルベルトは、その忘れ形見を政治に巻き込ませないために隠した。それが母親の望みだったのさ。あの子は当時の王に見初められたことによって、色々と大変だったからね」
「そ、それはつまり……」
アズガルト様は、目を丸くしてこちらを見ていた。
恐らく信じられないのだろう。私がまさか、叔母にあたる人物だったなんて。
それは私も同じである。私がエルベルト様の年の離れた妹だったなんて驚きだ。
「この子は、あんたと同じ血を引く人間なのさ。あんた達の基準で考えると、高貴な人間だ」
「ば、馬鹿な……」
「まあ、そんなことは些細なことだけどね。血筋なんて関係なく、この子は高潔な人間だ。あんたとは格が違うのさ」
お祖母様は、冷たい目をしてそう言い切った。
確かに、アズガルト様の問題は個人の問題だ。ルバディオ様などの他の王族達は、きちんとした人達である。目の前にいる彼とは、まったく違う。
「クレメリア、そろそろ行くとしようか。これ以上こいつと話していたって、時間の無駄だ」
「ええ、そうしましょう」
「まあ、幸いにもあんたにはたっぷり時間がある。精々反省するんだね」
「くっ……」
お祖母様の言葉に、アズガルト様は項垂れていた。
彼はこれから、長い時間をかけて罰を受けることになる。その過程で、彼が己を顧みてくれれば良いのだが。
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