まさか私が王族の一員であることを知らずに、侮辱していた訳ではありませんよね?

木山楽斗

文字の大きさ
6 / 40

6.横暴への報い

しおりを挟む
「貴族というものは、嗅覚に優れていなければならない。それは社交界で生き残るにあたって、最も重要なことだ。それをお前は、わかっていなかったようだな?」
「そ、それは……」

 アゼルト殿下は、目の前にいるレシリア様に対して冷たい視線を向けていた。
 レシリア様の方はというと、すっかり縮こまってしまっている。第一王子から圧力をかけられたら、流石の彼女も強気に振る舞うことはできないようだ。

「も、申し訳ありませんでした。どうかお許し下さい。私は何も知らなかったのです。その子が王家の血を引いているなんて……」
「……そのことを口にしないでもらおうか」
「あっ……」

 アゼルト殿下の言葉に、レシリア様は怯んでいた。
 嬉々として私を嬲っていた令嬢は、見る影もない。怯え切ったその様は、少し哀れに思えた。
 しかし私は、彼女を許すつもりはない。セディルスさんのこともあるし、私自身の未来のためにも生半可な対応はしないつもりだ。

「それからお前は、一つ勘違いをしているな。お前がやったことは、メルフィナに対して行ったから問題という訳ではない。誰に対してであっても、許されないことだ。使用人をどのように扱っても良いと考えているようだが、それは間違いとしか言いようがない」
「わ、私は別に……」
「ランカール侯爵家の使用人達からも、既に話は聞いている。どうやらお前は、随分と横暴だったようだな。はっきり言って、反吐が出る」

 心底軽蔑したのか、アゼルト殿下は深くため息をついた。
 諸々を伝えた時に聞かされたことだが、貴族の中にはレシリア様のように横暴を働く者も少なくないらしい。使用人に対して何をしても良いと、考えている者がいるそうなのだ。
 それはなんとも、ひどい話である。王家もそう認識しているらしく、そういった貴族の意識の是正には積極的であるようだ。

「この私を売るなんて……」
「まだ吠えるか。しかし、お前のその横暴ももう終わりだ。ランカール侯爵家は、お前の追放を決めた」
「……え?」

 レシリア様は、そこで目を丸めていた。
 この期に及んで、まだ彼女は自分が貴族でいられると思っていたようだ。しかし既に、決定はなされている。ランカール侯爵家は、レシリア様を切り捨てる決断をしたのだ。

「そんな、私が見捨てられるなんて……」
「何を言った所で、もう終わりだ。お前は横暴に振る舞い過ぎたのだ。しっかりと噛みしめることだな。自らの過ちを……」

 ゆっくりと立ち上がったアゼルト殿下は、意気消沈しているレシリア様を見下していた。
 それから彼は、部屋の出入り口に向かった。私はそれに追従する。
 とりあえずこれで、降りかかってきた火の粉は払えたということだろう。最早レシリア様には、こちらに手出しする権力も気力も、残っていないはずだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

神託の聖女様~偽義妹を置き去りにすることにしました

青の雀
恋愛
半年前に両親を亡くした公爵令嬢のバレンシアは、相続権を王位から認められ、晴れて公爵位を叙勲されることになった。 それから半年後、突如現れた義妹と称する女に王太子殿下との婚約まで奪われることになったため、怒りに任せて家出をするはずが、公爵家の使用人もろとも家を出ることに……。

リストラされた聖女 ~婚約破棄されたので結界維持を解除します

青の雀
恋愛
キャロラインは、王宮でのパーティで婚約者のジークフリク王太子殿下から婚約破棄されてしまい、王宮から追放されてしまう。 キャロラインは、国境を1歩でも出れば、自身が張っていた結界が消えてしまうのだ。 結界が消えた王国はいかに?

ちゃんと忠告をしましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。  アゼット様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ? ※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。

婚約破棄 ~家名を名乗らなかっただけ

青の雀
恋愛
シルヴィアは、隣国での留学を終え5年ぶりに生まれ故郷の祖国へ帰ってきた。 今夜、王宮で開かれる自身の婚約披露パーティに出席するためである。 婚約者とは、一度も会っていない親同士が決めた婚約である。 その婚約者と会うなり「家名を名乗らない平民女とは、婚約破棄だ。」と言い渡されてしまう。 実は、シルヴィアは王女殿下であったのだ。

【完結】悪女を押し付けられていた第一王女は、愛する公爵に処刑されて幸せを得る

甘海そら
恋愛
第一王女、メアリ・ブラントは悪女だった。 家族から、あらゆる悪事の責任を押し付けられればそうなった。 国王の政務の怠慢。 母と妹の浪費。 兄の女癖の悪さによる乱行。 王家の汚点の全てを押し付けられてきた。 そんな彼女はついに望むのだった。 「どうか死なせて」 応える者は確かにあった。 「メアリ・ブラント。貴様の罪、もはや死をもって以外あがなうことは出来んぞ」 幼年からの想い人であるキシオン・シュラネス。 公爵にして法務卿である彼に死を請われればメアリは笑みを浮かべる。 そして、3日後。 彼女は処刑された。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

醜い私は妹の恋人に騙され恥をかかされたので、好きな人と旅立つことにしました

つばめ
恋愛
幼い頃に妹により火傷をおわされた私はとても醜い。だから両親は妹ばかりをかわいがってきた。伯爵家の長女だけれど、こんな私に婿は来てくれないと思い、領地運営を手伝っている。 けれど婚約者を見つけるデェビュタントに参加できるのは今年が最後。どうしようか迷っていると、公爵家の次男の男性と出会い、火傷痕なんて気にしないで参加しようと誘われる。思い切って参加すると、その男性はなんと妹をエスコートしてきて……どうやら妹の恋人だったらしく、周りからお前ごときが略奪できると思ったのかと責められる。 会場から逃げ出し失意のどん底の私は、当てもなく王都をさ迷った。ぼろぼろになり路地裏にうずくまっていると、小さい頃に虐げられていたのをかばってくれた、商家の男性が現れて……

妹と婚約者が結婚したけど、縁を切ったから知りません

編端みどり
恋愛
妹は何でもわたくしの物を欲しがりますわ。両親、使用人、ドレス、アクセサリー、部屋、食事まで。 最後に取ったのは婚約者でした。 ありがとう妹。初めて貴方に取られてうれしいと思ったわ。

処理中です...