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13.第二王子の嘆き
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「何故だ、何故私達王家はこうも美しいのだ? その美しさは、人々を狂わせる……私はどうすれば良い? これは一体、何なのだ?」
イルガン殿下は、頭を抱えながら悩みを口にしていた。
その様はなんというか見ていられるものではなく、私はクロードお兄様の傍まで急いで駆け寄った。
「イルガン殿下はどうされたのですか?」
「それは難しい質問だね。彼のこういった側面に関しては、僕も見識が深くない」
「そうですよね。わかりませんよね……」
私の質問に、クロードお兄様はゆっくりと首を横に振った。
その言い分は、当然のものである。聞いておいてなんだが、これできちんとしていた説明されていたらむしろ怖かったかもしれない。
ともあれイルガン殿下は、何やら独特の感性をしているようだ。今もよくわからないが、不条理を嘆いているようだし。
「……ままならないものですね。さてと、どうこまで話しましたかね? ああ、そうだ。あなたの存在が王位を争奪する上で、必ず影響するという話でしたか」
「え? あの、その話に戻るんですか?」
「何か問題でもありますか?」
イルガン殿下が何事もなかったかのように話し始めたため、私は思わず聞き返していた。
それに彼は、きょとんとした表情をした。先程のあれは、本人にとってもいつも通りということなのだろうか。
「私のことを美しいと仰っていましたが……」
「それが何か?」
「その、どうして急にそんなことを言い出したのか……」
「それは愚問ですね。あなたは美しいものを見た時にそれを口にするのは、当たり前のことです」
「そ、そうですか……」
イルガン殿下の言い分に、私は少し照れることになった。
美しいと言われて、嫌な気はしない。ただ彼のことがわからなくなる。私のことを疎んでいるはずなのに、どうして称賛の言葉を口にするのだろうか。
「その後に色々と言っていたのは……」
「……それについては、確かにみっともない所を見せてしまいましたね。しかし衝動を抑えるのはよくありません。例えそれが、当然のことに対する嘆きだったとしても」
「えっと……」
イルガン殿下は、少し照れているようだった。
一応、先程の嘆きに関しては恥じているということだろうか。嘆いている内容については、疑問の余地などはないようだが。
「あなたも気を付けた方が良いですよ。その美しさは人を狂わせるものなのですから」
「……」
「ああ……本当に、どうして私達王家はこうも美しいのか」
私の言葉によってまた思い出したのか、イルガン殿下は悩み始めた。
どうやら彼は、自分も含めた王家の容姿に対して、色々と思う所があるようだ。それは彼にとって、相当に重要なことであるらしい。
「……話はまた今度にしましょうか。今日は私達の美しさについて、考えなければならなくなった。本当にあなたは、罪な存在だ」
「そ、そうですか……」
「イルガン、また来るといい。僕はいつでも歓迎するよ」
「ええ、そうさせてもらいますよ」
イルガン殿下は、そこで踵を返した。
結局彼は、私に何を伝えたかったのだろうか。それはわからなかったが、彼はただの怖い人ではないということはわかった。イルガン殿下は、思っていたのとは別の方向の怖さがある人だ。
イルガン殿下は、頭を抱えながら悩みを口にしていた。
その様はなんというか見ていられるものではなく、私はクロードお兄様の傍まで急いで駆け寄った。
「イルガン殿下はどうされたのですか?」
「それは難しい質問だね。彼のこういった側面に関しては、僕も見識が深くない」
「そうですよね。わかりませんよね……」
私の質問に、クロードお兄様はゆっくりと首を横に振った。
その言い分は、当然のものである。聞いておいてなんだが、これできちんとしていた説明されていたらむしろ怖かったかもしれない。
ともあれイルガン殿下は、何やら独特の感性をしているようだ。今もよくわからないが、不条理を嘆いているようだし。
「……ままならないものですね。さてと、どうこまで話しましたかね? ああ、そうだ。あなたの存在が王位を争奪する上で、必ず影響するという話でしたか」
「え? あの、その話に戻るんですか?」
「何か問題でもありますか?」
イルガン殿下が何事もなかったかのように話し始めたため、私は思わず聞き返していた。
それに彼は、きょとんとした表情をした。先程のあれは、本人にとってもいつも通りということなのだろうか。
「私のことを美しいと仰っていましたが……」
「それが何か?」
「その、どうして急にそんなことを言い出したのか……」
「それは愚問ですね。あなたは美しいものを見た時にそれを口にするのは、当たり前のことです」
「そ、そうですか……」
イルガン殿下の言い分に、私は少し照れることになった。
美しいと言われて、嫌な気はしない。ただ彼のことがわからなくなる。私のことを疎んでいるはずなのに、どうして称賛の言葉を口にするのだろうか。
「その後に色々と言っていたのは……」
「……それについては、確かにみっともない所を見せてしまいましたね。しかし衝動を抑えるのはよくありません。例えそれが、当然のことに対する嘆きだったとしても」
「えっと……」
イルガン殿下は、少し照れているようだった。
一応、先程の嘆きに関しては恥じているということだろうか。嘆いている内容については、疑問の余地などはないようだが。
「あなたも気を付けた方が良いですよ。その美しさは人を狂わせるものなのですから」
「……」
「ああ……本当に、どうして私達王家はこうも美しいのか」
私の言葉によってまた思い出したのか、イルガン殿下は悩み始めた。
どうやら彼は、自分も含めた王家の容姿に対して、色々と思う所があるようだ。それは彼にとって、相当に重要なことであるらしい。
「……話はまた今度にしましょうか。今日は私達の美しさについて、考えなければならなくなった。本当にあなたは、罪な存在だ」
「そ、そうですか……」
「イルガン、また来るといい。僕はいつでも歓迎するよ」
「ええ、そうさせてもらいますよ」
イルガン殿下は、そこで踵を返した。
結局彼は、私に何を伝えたかったのだろうか。それはわからなかったが、彼はただの怖い人ではないということはわかった。イルガン殿下は、思っていたのとは別の方向の怖さがある人だ。
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