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30.素直な答え
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「……お前はセディルスとかなり親密なようだな?」
「え?」
「奴のことをどう思っているのか、聞いておきたい所だ」
私の心境の変化の要因がセディルスさんである。それで誤魔化してなんとか場を乗り切ったと思っていた私は、アゼルトお兄様からの意外な質問に面食らった。
その質問は要するに、私の異性関係を気にしているということだろうか。それは実際の所、大事なことではあるはずだ。私は王家の血を引いている訳だし。
ただあのアゼルトお兄様から、そんな質問が飛んでくるなんて思ってもいなかった。もちろん、下世話な意図などはないのだろうが、それでも少し違和感がある。
「セディルスさんとは、お友達ですよ。別に何かあるという訳ではありません」
「奴に恋愛的な意味で好意を抱いているのか?」
「いや、そんなことはありません……」
「……これに関しては、誤魔化した所で良い結果は得らないぞ? お前が素直に話せば、俺とて協力することはできる。逆に気持ちを偽られたら、こちらとしてもそれなりの対応を取らざるを得ない」
アゼルトお兄様は、少し困ったような顔をしていた。
その表情に、私は理解する。今ここで本心を隠すことは、何の得にもならないということを。
私は王家の血を引く面倒な立場なのだ。それなら、それなりの対応をしなければならないのだろう。
今までだってそうだったのだから、恋愛でもなんでも変わらないのだ。信頼できるアゼルトお兄様に話して、どうするべきかを考える方が良いのである。
「……その、セディルスさんは非常に魅力的な方だと思っています」
「ふむ……」
「もちろん私も、そういった関係になることに憧れはありますけれど……まだよくわかっていません。彼に対して、今まで感じたことがないような気持ちにはなりますけど」
「曖昧なものだな……いや、別にそれを咎めるつもりはない。人の心の内など、そう簡単に推し量れるものでもないからな。ともあれ、お前が奴を好意的に見ているというなら、その方面で話を進めていくのも悪くはないことだろう」
私の言葉を受けて、アゼルトお兄様は思案するような仕草を見せた。
これからのことを、考えてくれているのだろう。それは私にとって、非常にありがたいことだ。
ただ私の方はともかくとして、セディルスさんが私をどう思っているのかはわからない。私はそれが、とても気になっていた。
少なくとも嫌われてはいないと思っている。彼の方も友達としては、認識してくれているのではないだろうか。
でも婚約とか、そういった話になった時に快く受け入れてくれるかは微妙な所だ。そこで良い反応が返ってこなかったら、とても悲しいのだが。
「え?」
「奴のことをどう思っているのか、聞いておきたい所だ」
私の心境の変化の要因がセディルスさんである。それで誤魔化してなんとか場を乗り切ったと思っていた私は、アゼルトお兄様からの意外な質問に面食らった。
その質問は要するに、私の異性関係を気にしているということだろうか。それは実際の所、大事なことではあるはずだ。私は王家の血を引いている訳だし。
ただあのアゼルトお兄様から、そんな質問が飛んでくるなんて思ってもいなかった。もちろん、下世話な意図などはないのだろうが、それでも少し違和感がある。
「セディルスさんとは、お友達ですよ。別に何かあるという訳ではありません」
「奴に恋愛的な意味で好意を抱いているのか?」
「いや、そんなことはありません……」
「……これに関しては、誤魔化した所で良い結果は得らないぞ? お前が素直に話せば、俺とて協力することはできる。逆に気持ちを偽られたら、こちらとしてもそれなりの対応を取らざるを得ない」
アゼルトお兄様は、少し困ったような顔をしていた。
その表情に、私は理解する。今ここで本心を隠すことは、何の得にもならないということを。
私は王家の血を引く面倒な立場なのだ。それなら、それなりの対応をしなければならないのだろう。
今までだってそうだったのだから、恋愛でもなんでも変わらないのだ。信頼できるアゼルトお兄様に話して、どうするべきかを考える方が良いのである。
「……その、セディルスさんは非常に魅力的な方だと思っています」
「ふむ……」
「もちろん私も、そういった関係になることに憧れはありますけれど……まだよくわかっていません。彼に対して、今まで感じたことがないような気持ちにはなりますけど」
「曖昧なものだな……いや、別にそれを咎めるつもりはない。人の心の内など、そう簡単に推し量れるものでもないからな。ともあれ、お前が奴を好意的に見ているというなら、その方面で話を進めていくのも悪くはないことだろう」
私の言葉を受けて、アゼルトお兄様は思案するような仕草を見せた。
これからのことを、考えてくれているのだろう。それは私にとって、非常にありがたいことだ。
ただ私の方はともかくとして、セディルスさんが私をどう思っているのかはわからない。私はそれが、とても気になっていた。
少なくとも嫌われてはいないと思っている。彼の方も友達としては、認識してくれているのではないだろうか。
でも婚約とか、そういった話になった時に快く受け入れてくれるかは微妙な所だ。そこで良い反応が返ってこなかったら、とても悲しいのだが。
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