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7.少しぼかして

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「……君が嘘をついているとは思っていないが、にわかには信じられないことだな」
「まあ、そうですよね……」

 私の説明に対して、クラウス様はとても率直な感想を述べてくれた。
 聖女の機嫌を損ねたらクビになる。個人のわがままで、人事の裁量が成されるなんて、真っ当な感性を持つ彼からすれば訳がわからないことだろう。
 しかし事実として、私は特に理由もなくクビになった。ファルティア様の機嫌で、職を失ってしまったのである。

「実は、聖女ファルティア様には少々問題がありまして……」
「問題?」
「気難しい方なんです」

 私は、ファルティア様のことを少しぼかして伝えることにした。
 彼女に魔法の才能がないというのは、一応国家の秘密である。それをクラウス様に伝えるのは、いくら何でもやめておいた方がいいだろう。
 ただ、真実を何も伝えないというのも無理な話だった。クビになった理由は本当にファルティア様の機嫌である訳だし、その辺りをぼかして話しても疑念が深まるだけだ。

「気難しいからといって、聖女の機嫌で一人の人生が変わるというのか……増してや、聖女ファルティアは王女だろう? 信じられない蛮行だな」
「いえ、私の方にも悪い面があったのかもしれませんし……」
「君が責任を負うようなことではないと思うが……」

 クラウス様は、明らかに不満そうにしていた。 
 領主の息子である彼にとって、ファルティア様の行動は同じ上に立つ者として、許せないのだろう。
 クラウス様や彼の父親であるエリプス伯爵は、そういう人達なのである。彼らのような貴族が領主であるというのは、とても恵まれているといえるだろう。

「そういう話を聞くと、怒りが込み上げてくる。王族や貴族が身勝手な真似をして、民を苦しめるなどもっての他だ」
「クラウス様やエリプス伯爵は、私達にもとても良くしてくださっていますね。それに関しては、本当にありがとうございます。いつも感謝しています」
「俺達は当然のことをしているだけだ」
「王家にもそのような志を持っている方はいらっしゃるのです。ファルティア様のことは、その方達がきっとなんとかしてくれますよ」
「そうなのか……王家も完全に腐っているという訳ではないということか」

 私の言葉に、クラウス様はゆっくりとため息をついた。
 安心しているのか、はたまた呆れているのかはわからないが、とにかく私の話を受け入れてくれたようである。
 とりあえず、事情がわかってもらえてよかった。それなら今度は、私が質問する番だ。
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