お飾りの聖女様は裏で私達が必死にフォローしていたなんて、まったく気付いていなかったのでしょうね？

１４．見過ごせない振る舞い

「さて、僕の母の話は、個人的なことです。ただ聖女ファルティア様のことに関しては、あなたも少なからず気になっていることでしょう。あなたのことですから、僕達のことを心配しているのではないかと思っていたのですが」
「それは……まあ、そうですね」
「やはり、そうでしたか」

　ナーゼルさんの言葉に、私はゆっくりと頷いた。
　確かに私は、ファルティア様が皆にひどいことをしていないか心配していた。
　実際の所、彼女はひどいことをしている訳だ。それはなんというか、悲しい事実である。

「でも、私にできることがあるという訳ではありませんからね。勝手に心配しているというだけです」
「いえ、そんなことはないと思いますよ」
「え？」
「あなたは、僕達の中でも最も優秀な魔法使いです。少なくとも、僕はそう認識しています。そんなあなたにはこの国を変える力があると、僕は思っています」
「そ、そうなのですか……」

　ナーゼルさんは、私のことをとても評価してくれていた。
　それは、ありがたい話だ。だが、評価が高すぎるともいえる。
　確かに私は王国の中でも優秀な魔法使いではあるが、聖女親衛隊の中で特筆して秀でているという訳でもない。

「まあ、それは置いておいて、聖女ファルティア様の今後についてお伝えしておきましょう」
「今後？」
「ええ、彼女の横暴は放っておかれている訳ではありません。二人の王子が、動き始めているのです。国王様も、流石に見過ごせないと考えているようですよ」
「国王様も？」

　ナーゼルさんの言葉に、私は少し驚いた。
　二人の王子が、ファルティア様を止めようとしていることは知っている。ただ、国王様が見過ごせないと考えているという事実は、少し信じられないことだ。

「てっきり、国王様はファルティア様を贔屓しているものだと思っていましたが……」
「ええ、僕もそう思っていましたが、どうやらそういう訳でもないようですね。国王様も、彼女のことは象徴として据えているだけということなのでしょう」
「そうですか。それならなんとかなるかもしれませんね……」

　私はずっと、国王様はファルティア様を依怙贔屓していると思っていた。横暴な彼女を、自由にさせていたからだ。
　ただそれはあくまで、象徴を失わないためだったということなのだろう。
　それをいいことに、ファルティア様はやり過ぎてしまった。その結果、国王様も流石に見過ごせなくなったということだろうか。
　何にせよ、それは私にとっては嬉しい知らせだ。ファルティア様の横暴が終わるのなら、とても安心できる。