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23.新たな計画
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「ファルティアが聖女を退くにあたって、僕達は新しい聖女を据えなければなりません。その聖女の役目を、アメリアさんにお願いしたいのです」
「私に、ですか……」
ブライト様は、私にお願いをしてきた。
それは、予想していなかった訳ではない。元聖女親衛隊である私に白羽の矢が立つ可能性は、充分にあったのだ。
しかし、私としては正直困ってしまう。もう王都に戻るつもりはなかったからだ。
「あなた程に優秀な魔法使いは、中々いません。できれば、王国のために力を貸していただきたいのですが……」
「……お言葉ですが」
「む……」
ブライト様の言葉に対して、それまでずっと黙っていたクラウス様が声をあげた。
彼は、ゆっくりと私の前に立つ。それはまるで、庇っているかのようだった。
「アメリアはこれまで、あなた達王族に振り回されてきました。そんな彼女に、まだ重荷を背負わせるつもりなのですか?」
「クラウス様……」
クラウス様は、ブライト様に対して堂々と言葉をかけていた。
相手はこの国の第二王子である。そんな彼に反抗するのは、かなり勇気がいることだと思うのだが。
「……なるほど、確かにあなたの言うことは一理ありますね。しかし、彼女のように才能がある方を腐らせておくのはいかがなものかと」
「アメリアには、エリプス伯爵家の領地において、魔法使いとしての能力を活かしてもらうつもりでした。それこそ、聖女のように」
「エリプス伯爵の計画ですか。それなら小耳に挟んだことがあります」
ブライト様は、そこで考えるような仕草を見せた。
その後、彼は笑みを浮かべる。それは、何かをひらめいたといった感じだ。
「それなら、エリプス伯爵のその計画を利用させていただきましょうか?」
「……なんですって?」
「聖女を各地に用意する。それは中々に有効な手段であると思います。それは、ファルティアが退く理由付けにも上手く使えそうだ。あなた達のその計画に、是非とも乗らしてもらいたい」
ブライト様は、とても飄々とした態度だった。
もしかして、彼の狙いは初めからこちらだったのだろうか。そう思ってしまうくらいに、ブライト様の発言は滑らかだった。
「……なるほど、こちらとしてはそれでも構いませんが」
「そうですか。アメリアさん、あなたも彼と気持ちは一緒ですか?」
「あ、はい。そうですね。私もできれば、故郷のために尽力したいと思っています」
「それなら、決まりですね。父上にはこちらから話しておきます。今後のことは、また追って連絡することになると思います」
ブライト様は、少し残念そうにしながらも笑顔を浮かべていた。
どうやら、なんとか丸く収まりそうだ。そのことに、私は安心するのだった。
「私に、ですか……」
ブライト様は、私にお願いをしてきた。
それは、予想していなかった訳ではない。元聖女親衛隊である私に白羽の矢が立つ可能性は、充分にあったのだ。
しかし、私としては正直困ってしまう。もう王都に戻るつもりはなかったからだ。
「あなた程に優秀な魔法使いは、中々いません。できれば、王国のために力を貸していただきたいのですが……」
「……お言葉ですが」
「む……」
ブライト様の言葉に対して、それまでずっと黙っていたクラウス様が声をあげた。
彼は、ゆっくりと私の前に立つ。それはまるで、庇っているかのようだった。
「アメリアはこれまで、あなた達王族に振り回されてきました。そんな彼女に、まだ重荷を背負わせるつもりなのですか?」
「クラウス様……」
クラウス様は、ブライト様に対して堂々と言葉をかけていた。
相手はこの国の第二王子である。そんな彼に反抗するのは、かなり勇気がいることだと思うのだが。
「……なるほど、確かにあなたの言うことは一理ありますね。しかし、彼女のように才能がある方を腐らせておくのはいかがなものかと」
「アメリアには、エリプス伯爵家の領地において、魔法使いとしての能力を活かしてもらうつもりでした。それこそ、聖女のように」
「エリプス伯爵の計画ですか。それなら小耳に挟んだことがあります」
ブライト様は、そこで考えるような仕草を見せた。
その後、彼は笑みを浮かべる。それは、何かをひらめいたといった感じだ。
「それなら、エリプス伯爵のその計画を利用させていただきましょうか?」
「……なんですって?」
「聖女を各地に用意する。それは中々に有効な手段であると思います。それは、ファルティアが退く理由付けにも上手く使えそうだ。あなた達のその計画に、是非とも乗らしてもらいたい」
ブライト様は、とても飄々とした態度だった。
もしかして、彼の狙いは初めからこちらだったのだろうか。そう思ってしまうくらいに、ブライト様の発言は滑らかだった。
「……なるほど、こちらとしてはそれでも構いませんが」
「そうですか。アメリアさん、あなたも彼と気持ちは一緒ですか?」
「あ、はい。そうですね。私もできれば、故郷のために尽力したいと思っています」
「それなら、決まりですね。父上にはこちらから話しておきます。今後のことは、また追って連絡することになると思います」
ブライト様は、少し残念そうにしながらも笑顔を浮かべていた。
どうやら、なんとか丸く収まりそうだ。そのことに、私は安心するのだった。
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