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私は、お父様の執務室に向かっていた。
「お姉様、お待ちください」
「え?」
そんな私に、後ろから声をかけてくる者がいた。
事件の当事者であり、私の妹でもあるイルーアだ。
彼女が、私を追いかけて来るとは思っていなかった。だが、考えてみれば、イルーアは特に何も話していない。何か言いたいことがあったとしても、おかしくはないだろう。
「何か話したいことでもあるの?」
「……お姉様に、謝っておこうと思ったのです」
「謝る?」
イルーアの言葉や態度に、私は少しだけ怒りを覚えた。
彼女は、とても軽率な行動をしている。それを自覚しているのだろうか。
今ここで私に謝って、それで全てが済む訳ではない。色々な人に迷惑をかけることを理解して、そのような表情をしているのだろうか。
「お姉様の婚約者を奪って、申し訳ありませんでした」
「……あなたは、自分の行動を理解しているの?」
「理解しているから、謝っているのです」
質問に対する返答を聞いて、私は理解した。この妹は、何も理解できていないのだと。
彼女の中には、ブレギム様と結ばれるという思考しかないのだろう。その嬉しそうな態度に、それが現れている。
「きちんと理解できているなら、こんなことはしないで欲しかったわ」
「お姉様には、わからないでしょうね」
「え?」
そこで、イルーアは表情を変えた。少し険しい表情になったのだ。
しかし、どうして私がそのような顔を見せられなければならないのだろうか。非はイルーアにあるのだから、せめて表面上だけは取り繕ってもらいたいものである。
「お姉様は、とても冷静で理性的な人間です。でも、人間はそれだけでは決していられません。必ず、感情というものを求めてしまうものなのです」
「何が言いたいの?」
「ブレギム様も、そういうお姉様だからこそ、結ばれたくないと思ったのではないでしょうか? あなたが感情を見せてくれないから、気味悪く思った。私には、そう思えてならないのです」
「……」
イルーアの言葉は、ある程度理解できない訳ではなかった。
だが、だからといって、婚約破棄してもいいとは決してならないだろう。
そんな風に感情に従って生きていれば、貴族として生きていけるはずはない。理想ばかり見て、現実を見ないのは非常に馬鹿らしいことではないだろうか。
「話はそれだけかしら? それなら、私は行かせてもらうわ。早く、お父様と今後のことを話さないといけないのよ」
「ええ……これで、終わりです」
「それなら、私はこれで失礼するわ」
それだけ言って、私はゆっくりと歩き始めた。
そんな私の背中に視線を向けて来るイルーアは、一体何を思っているのだろうか。
「お姉様、お待ちください」
「え?」
そんな私に、後ろから声をかけてくる者がいた。
事件の当事者であり、私の妹でもあるイルーアだ。
彼女が、私を追いかけて来るとは思っていなかった。だが、考えてみれば、イルーアは特に何も話していない。何か言いたいことがあったとしても、おかしくはないだろう。
「何か話したいことでもあるの?」
「……お姉様に、謝っておこうと思ったのです」
「謝る?」
イルーアの言葉や態度に、私は少しだけ怒りを覚えた。
彼女は、とても軽率な行動をしている。それを自覚しているのだろうか。
今ここで私に謝って、それで全てが済む訳ではない。色々な人に迷惑をかけることを理解して、そのような表情をしているのだろうか。
「お姉様の婚約者を奪って、申し訳ありませんでした」
「……あなたは、自分の行動を理解しているの?」
「理解しているから、謝っているのです」
質問に対する返答を聞いて、私は理解した。この妹は、何も理解できていないのだと。
彼女の中には、ブレギム様と結ばれるという思考しかないのだろう。その嬉しそうな態度に、それが現れている。
「きちんと理解できているなら、こんなことはしないで欲しかったわ」
「お姉様には、わからないでしょうね」
「え?」
そこで、イルーアは表情を変えた。少し険しい表情になったのだ。
しかし、どうして私がそのような顔を見せられなければならないのだろうか。非はイルーアにあるのだから、せめて表面上だけは取り繕ってもらいたいものである。
「お姉様は、とても冷静で理性的な人間です。でも、人間はそれだけでは決していられません。必ず、感情というものを求めてしまうものなのです」
「何が言いたいの?」
「ブレギム様も、そういうお姉様だからこそ、結ばれたくないと思ったのではないでしょうか? あなたが感情を見せてくれないから、気味悪く思った。私には、そう思えてならないのです」
「……」
イルーアの言葉は、ある程度理解できない訳ではなかった。
だが、だからといって、婚約破棄してもいいとは決してならないだろう。
そんな風に感情に従って生きていれば、貴族として生きていけるはずはない。理想ばかり見て、現実を見ないのは非常に馬鹿らしいことではないだろうか。
「話はそれだけかしら? それなら、私は行かせてもらうわ。早く、お父様と今後のことを話さないといけないのよ」
「ええ……これで、終わりです」
「それなら、私はこれで失礼するわ」
それだけ言って、私はゆっくりと歩き始めた。
そんな私の背中に視線を向けて来るイルーアは、一体何を思っているのだろうか。
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