私は家のことにはもう関わりませんから、どうか可愛い妹の面倒を見てあげてください。

木山楽斗

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27.だからこそ

「……アルティア嬢、あなたの考えは理解できました」

 私が色々と考えていると、フレイル様が言葉を発した。
 私は、彼の方に視線を向ける。すると、真剣な顔をしているフレイル様が見えた。
 それに私は、息を呑む。彼の視線からは、先程のルーアス殿下のように力強いものであったからだ。

「アルティア嬢、あなたはやはり立派な人だ。僕はあなたの選択を立派に思います」
「フレイル様、ありがとうございます。でも、そんなに立派なものではありませんよ。私はただ、自分に力がないことを痛感したというだけですから」
「自らの弱さというものを受け入れるということは、簡単なことではありません。特に、僕達貴族の中では……」

 フレイル様は、私の弱さというものを肯定してくれた。
 ただ、私の選択というものは褒められるようなものではないと、思っている。全ては、私の力不足が原因なのだから。
 私がもっと強い人間であったならば、領地の民を守り幸せにできる人間であるならば、何も問題はなかった。だからこれは、恥じるべきことなのだ。

「だからこそ、僕は思います。あなたはオルファン侯爵家に戻るべき人間なのだと」
「……え?」

 そこでフレイル様は、私との距離を詰めてきた。
 彼は握っていた私の拳にそっと手を重ねる。それに私は、少し呆気に取られてしまった。彼の行動が、意外なものだったからだ。

「オルファン侯爵家としての誇りを持ち、領地の人々を思いやることができるあなた以上に、家を背負うのに相応しい人はいないでしょう。僕はそう思います」
「フレイル様……ですが、私には力がありません。戻りたい気持ちは、山々です。でも、私が戻ることは領地の人々の幸せには繋がらないのです」
「わかっています。あなた一人で背負うには、オルファン侯爵家は重過ぎるということは……だから、僕があなたを支えます」
「……なんですって?」

 フレイル様の口から飛び出してきた言葉に、私は思わず固まっていた。
 彼が私を支える。それはあり得ない話だ。彼はこのバルフェルト伯爵家の後継者なのだから。
 祖父であるバルフェルト伯爵が健在であるとはいえ、何れフレイル様はこの家を継ぐ。そんな彼が、私を支えるというのは無理な話といえる。

「フレイル様、それは……」
「難しいことだということは、わかっています。だけど、それでも僕はあなたを支えたいと思ってしまったのです」
「あ、あなたという人は……」
「どのような形になるかはわかりません。だけど、僕はあなたを支えたい。オルファン侯爵家に戻ったあなたが、良き統治者になる所を見てみたいのです。それはもう、理屈ではなく感情の問題として……」

 フレイル様は、私の目を真っ直ぐに見てきた。
 どうやら、本気でそう思っているらしい。それは驚くべきことだ。彼の考えは、貴族としては不適切であるともいえる。
 ただ、私にとっては嬉しいことであった。彼という人間から、そこまで言ってもらえることを私は誇らしく思う。

「ふふっ……面白いことになったものだな」
「……え?」

 私がそう思っていると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
 私もフレイル様も、そちらの方向を向く。するとそこには、出て行ったはずのルーアス殿下とバルフェルト伯爵がいた。
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