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83.心配する王子
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「ほう……まさか、俺がいない間にそんな面白いことになっているとは思っていなかったな」
用事を終えたブライト殿下は、にやにやしながらそのようなことを言ってきた。
なんというか、少し恥ずかしい。ただ、伝えないという選択肢はなかった。ブライト殿下は、私達の共通の友人であるからだ。
「まあ、無事に思いが通じて良かったといった所か……」
「まだ無事という訳ではありません。兄上に認められなければなりませんからね」
「ああ、そうだったか。しかし、その辺りはなんとかなるだろう。叔父上が認めているというなら、大抵のことはなんとかなるはずだ」
私とマグナード様は、微妙な状況だった。
お互いに気持ちは通じ合っているが、まだどうなるかはわからない。もちろん認めてもらうつもりではあるが、楽観的に考えることはできなかった。
しかし、ブライト殿下の言葉はとてもありがたい。彼がそう言ってくれるだけで、少しだけ肩の荷が軽くなったような気がする。
「……大体、お前もイルリア嬢のことを手放すつもりはないだろう。そんな風に寄り添っている時点で、俺はそのように思えるぞ?」
「え? いや、それは……」
そこでブライト殿下は、私達の距離感について指摘してきた。
現在私達は、並んでブライト殿下と対面している。その距離は、かなり近い。肩が触れ合うくらいの距離感である。
よく考えてみれば、それは思いが通じ合っているからこその距離感だ。自然とそうしていたため、私達自身は気付いていなかった。
「ああいや、別に距離を取れと言っている訳じゃない」
「いえ、ブライト殿下のご指摘はもっともです。いけませんね。まだ婚約が決まったという訳でもないのに……」
「別に俺はそれを批判するつもりはないが……というか、イルリア嬢の家の方は問題ないのか? 当然、そっちにも話は通していないのだろう?」
「え? ああ……言われてみれば、そうですね」
ブライト殿下は、とても冷静な指摘をしていた。
それを聞いて、私達はお互いが舞い上がっていたという事実を認識する。なんというか、浮かれ過ぎて色々なことを見逃しているのかもしれない。
「おいおい、大丈夫なのかよ? なんだか心配になってきたぞ?」
「えっと、すみません」
「……まあ、謝るようなことではないさ。そういう経験は俺にはないからな。お前のようになるのが普通なのかもしれない」
ブライト殿下は、嬉しそうに笑顔を浮かべていた。
それは私達の思いがとりあえず通じ合ったことを、喜んでくれているということだろう。
それは私達にとっても、ありがたいことだった。しかし、浮かれ過ぎてはいけない。これからもきちんと、気を引き締めていくべきだろう。
用事を終えたブライト殿下は、にやにやしながらそのようなことを言ってきた。
なんというか、少し恥ずかしい。ただ、伝えないという選択肢はなかった。ブライト殿下は、私達の共通の友人であるからだ。
「まあ、無事に思いが通じて良かったといった所か……」
「まだ無事という訳ではありません。兄上に認められなければなりませんからね」
「ああ、そうだったか。しかし、その辺りはなんとかなるだろう。叔父上が認めているというなら、大抵のことはなんとかなるはずだ」
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しかし、ブライト殿下の言葉はとてもありがたい。彼がそう言ってくれるだけで、少しだけ肩の荷が軽くなったような気がする。
「……大体、お前もイルリア嬢のことを手放すつもりはないだろう。そんな風に寄り添っている時点で、俺はそのように思えるぞ?」
「え? いや、それは……」
そこでブライト殿下は、私達の距離感について指摘してきた。
現在私達は、並んでブライト殿下と対面している。その距離は、かなり近い。肩が触れ合うくらいの距離感である。
よく考えてみれば、それは思いが通じ合っているからこその距離感だ。自然とそうしていたため、私達自身は気付いていなかった。
「ああいや、別に距離を取れと言っている訳じゃない」
「いえ、ブライト殿下のご指摘はもっともです。いけませんね。まだ婚約が決まったという訳でもないのに……」
「別に俺はそれを批判するつもりはないが……というか、イルリア嬢の家の方は問題ないのか? 当然、そっちにも話は通していないのだろう?」
「え? ああ……言われてみれば、そうですね」
ブライト殿下は、とても冷静な指摘をしていた。
それを聞いて、私達はお互いが舞い上がっていたという事実を認識する。なんというか、浮かれ過ぎて色々なことを見逃しているのかもしれない。
「おいおい、大丈夫なのかよ? なんだか心配になってきたぞ?」
「えっと、すみません」
「……まあ、謝るようなことではないさ。そういう経験は俺にはないからな。お前のようになるのが普通なのかもしれない」
ブライト殿下は、嬉しそうに笑顔を浮かべていた。
それは私達の思いがとりあえず通じ合ったことを、喜んでくれているということだろう。
それは私達にとっても、ありがたいことだった。しかし、浮かれ過ぎてはいけない。これからもきちんと、気を引き締めていくべきだろう。
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