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19.彼女の予想
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「ごめんなさい、続けてもらってもいいかしら?」
「あ、はい……」
話を止めてしまったので、私はメルティナに続きを促した。
アルフィアがかつてこの世界にいたというのはとても気になることだ。だが、今はまず彼女の話を聞くべきだろう。
「えっと……あなたには、少し言いにくいことなのですが、私はその記憶において、一人の男性と恋愛関係にありました。その……バルクド様と」
「え? バルクド様と……?」
「……はい」
メルティナは、少し躊躇いながらも、とんでもないことを言ってきた。バルクド様と恋愛関係にあった。それは、それなりに衝撃的なことである。
しかし、それはとても腑に落ちることだった。彼女が彼と会った時、とても妙な反応をした理由がわかったからだ。
「まあ……彼とは親同士が決めた婚約者だし、それ以前に、私はあなたと彼が恋愛関係にあったゲームをプレイしていた訳だし……そのことについては、別にそんなに気にしないでいいわ」
「そ、そうですか……」
「それよりも、話の続きを聞かせてもらえるかしら? まだあなたが求めている答えというのが、どういうものなのか、教えてもらっていないもの」
「ええ、もちろんです。そのために、ここまで話を進めてきましたから」
バルクド様との関係は驚くべきものだったが、それよりも私は彼女の身に起こっていたことが気になっていた。その話は後で考えるとして、今は彼女が求めている答えが何に関するものかを聞くことにしよう。
「アルフィア様は、私達が惹かれ合っていることに気づきました。それで、彼女は私をそれまでよりも攻め立てるようになりました。もっとも、それは別に悪いこととはいえません。そこに関しては、私に非がない訳ではないと思っています」
「……そうかしら? 思いを抱くことに、罪がないと私は思うけど……」
「いえ……それでも、彼女が私に怒りを向けるのは当然だと思います。ただ、彼女はあまりにもやり過ぎてしまった……私を罠に嵌めて、亡き者にしようと画策したのです」
「……過激よね」
メルティナの説明に、私はゆっくりと頷いた。その部分に関しては、私のゲームで知っている部分だったからだ。
アルフィアは、やり過ぎてしまった。例えそれがメルティナの言う通り正当な嫉妬だったとしても、一線を越えてしまえば、それは許されないことになるのだ。
「結果的に、彼女は国外追放を言い渡されました。それに関しては、彼女がしたことを考えれば、当然のことかもしれません。ただ、私は少し気になることがあったのです」
「気になること? 何かしら?」
「彼女は、いつも焦っていました。私を追い詰めている時、まるで自分が追い詰められているかのような態度だったのです」
「……そんな態度だったの?」
「ええ、彼女は何かを恐れていました。そのことから、私はとある結論を出したのです。もしかしたら、彼女は何者かに操られていたのではないかと……」
「……なんですって?」
メルティナの言葉に、私は驚いた。アルフィアが何者かに操られていたなんて、今まで思ってもいなかったことだからだ。
ゲームをプレイしていて、そんなことは微塵も思わなかった。彼女は、ただ悪辣な性格そう思っていたのだ。
しかし、今なら少しだけ彼女の主張が理解できる。それは、私が彼女の育った環境を追体験しているからかもしれない。
私は今、少しだけ思っているのだ。もしかしたら、彼女の派手で高慢な性格は、その心の弱さを誤魔化すための虚勢だったのではないかと。
「あ、はい……」
話を止めてしまったので、私はメルティナに続きを促した。
アルフィアがかつてこの世界にいたというのはとても気になることだ。だが、今はまず彼女の話を聞くべきだろう。
「えっと……あなたには、少し言いにくいことなのですが、私はその記憶において、一人の男性と恋愛関係にありました。その……バルクド様と」
「え? バルクド様と……?」
「……はい」
メルティナは、少し躊躇いながらも、とんでもないことを言ってきた。バルクド様と恋愛関係にあった。それは、それなりに衝撃的なことである。
しかし、それはとても腑に落ちることだった。彼女が彼と会った時、とても妙な反応をした理由がわかったからだ。
「まあ……彼とは親同士が決めた婚約者だし、それ以前に、私はあなたと彼が恋愛関係にあったゲームをプレイしていた訳だし……そのことについては、別にそんなに気にしないでいいわ」
「そ、そうですか……」
「それよりも、話の続きを聞かせてもらえるかしら? まだあなたが求めている答えというのが、どういうものなのか、教えてもらっていないもの」
「ええ、もちろんです。そのために、ここまで話を進めてきましたから」
バルクド様との関係は驚くべきものだったが、それよりも私は彼女の身に起こっていたことが気になっていた。その話は後で考えるとして、今は彼女が求めている答えが何に関するものかを聞くことにしよう。
「アルフィア様は、私達が惹かれ合っていることに気づきました。それで、彼女は私をそれまでよりも攻め立てるようになりました。もっとも、それは別に悪いこととはいえません。そこに関しては、私に非がない訳ではないと思っています」
「……そうかしら? 思いを抱くことに、罪がないと私は思うけど……」
「いえ……それでも、彼女が私に怒りを向けるのは当然だと思います。ただ、彼女はあまりにもやり過ぎてしまった……私を罠に嵌めて、亡き者にしようと画策したのです」
「……過激よね」
メルティナの説明に、私はゆっくりと頷いた。その部分に関しては、私のゲームで知っている部分だったからだ。
アルフィアは、やり過ぎてしまった。例えそれがメルティナの言う通り正当な嫉妬だったとしても、一線を越えてしまえば、それは許されないことになるのだ。
「結果的に、彼女は国外追放を言い渡されました。それに関しては、彼女がしたことを考えれば、当然のことかもしれません。ただ、私は少し気になることがあったのです」
「気になること? 何かしら?」
「彼女は、いつも焦っていました。私を追い詰めている時、まるで自分が追い詰められているかのような態度だったのです」
「……そんな態度だったの?」
「ええ、彼女は何かを恐れていました。そのことから、私はとある結論を出したのです。もしかしたら、彼女は何者かに操られていたのではないかと……」
「……なんですって?」
メルティナの言葉に、私は驚いた。アルフィアが何者かに操られていたなんて、今まで思ってもいなかったことだからだ。
ゲームをプレイしていて、そんなことは微塵も思わなかった。彼女は、ただ悪辣な性格そう思っていたのだ。
しかし、今なら少しだけ彼女の主張が理解できる。それは、私が彼女の育った環境を追体験しているからかもしれない。
私は今、少しだけ思っているのだ。もしかしたら、彼女の派手で高慢な性格は、その心の弱さを誤魔化すための虚勢だったのではないかと。
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