派手好きで高慢な悪役令嬢に転生しましたが、バッドエンドは嫌なので地味に謙虚に生きていきたい。

木山楽斗

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23.信じられないこと

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「あ、あり得ない……そんな数値があるはずがない!」
「……」
「測定器の故障だ……そうに違いない……」

 キャロムは、必死にメルティナの結果を否定した。彼にとって、自分を越える天才は、きっと耐えがたいものなのだろう。
 その理由は、私にはわからない。だが、彼が激昂していることから、気に入らないということは間違いないだろう。

「誰か、違う測定を貸してくれ!」
「ど、どうぞ……」
「さあ、もう一度測るんだ。君の本当の魔力を教えてくれ」

 キャロムは、他の生徒から測定器をもらい、それをメルティナに渡した。
 渡されたメルティナは、仕方ないというような表情で、測定器に手をかける。彼女にはわかっているのだろう。何度測定しても、結果は変わらないということを。

「六千百七十六……そんな馬鹿な!」

 無情にも、測定器は先程とほぼ変わらない数値を示していた。多少の誤差はあるが、それはキャロムが望んでいた差ではない。

「あり得ない! 僕より……僕より君の方が優秀だというのか!」
「キャロムさん、落ち着いてください。別に、魔力が私の方が高いからといって、私があなたよりも優秀であるということにはなりません」
「……僕と勝負しろ。試合で決着をつけてやる!」
「キャロムさん……」

 キャロムは、メルティナを睨みつけていた。その眼光には、決意が見える。彼は、本気でメルティナを勝負しようとしているのだ。
 勝負というのは、魔法を使った勝負である。とあるルールに従って、魔法を行使して戦う。そういう試合をするのだ。
 学園において、試合は別に禁止されていない。お互いの同意があれば、それは可能なのである。

「キャロムさん、今は授業中です。試合をするにしても……」
「先生、僕と彼女は、天才と呼ばれる存在です。そんな二人の試合を見せることは、この場にいる生徒達にとって、かなり有益なものになると思います」
「それは……」

 授業中であるため、教師がキャロムを止めようとした。だが、彼の言葉に教師は言葉を詰まらせてしまう。
 恐らく、キャロムの言っていることに反論できなくなってしまったのだ。この二人の試合は、確かに貴重なものなのである。
 それを生徒達に見せることは、いいことだ。教師も、そう判断したのだろう。

「さあ、試合をしよう!」
「……わかりました」

 キャロムの言葉に、メルティナはゆっくりと頷いた。ゲームでは、彼女はここでもう少し躊躇っていた。だが、今の彼女は違う。結局の所、これが避けられないとわかっているから、すぐに頷いたのだろう。
 二人は、ゆっくりと体育館の人がいない方に歩いていく。本当に、二人は試合を始めるのだ。

「試合のルールについては、知っているかな?」
「ええ、知っています」
「そうか……それなら、すぐに始められそうだね」

 二人は向かい合って、お互いを睨みつける。既に、戦いの準備はできているようだ。
 魔法を使った試合には、ルールがある。複雑なルールはあるらしいが、把握しておかなければならないことは、そこまで多くはない。
 試合は、お互いに体に魔力の障壁を纏って行う。障壁というのは、肉体を守る壁だ。試合は、これを破ることで勝敗を決める。
 これは、安全のための措置だ。生身で魔法を受け止めると一たまりもない。それが許可されれば、魔法での戦いは殺し合いになってしまう。

「さあ、魔力の障壁を纏うんだ」
「ええ」

 二人は、お互いに魔力の障壁を纏った。それは、この試合での二人の命である。
 当然、魔力が高い方が障壁も厚い。見た目上に差はほとんどないが、この時点で二人の間には歴然の差があるかもしれない。
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